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トピックス2020.9.7

現地活動の報告―8月8日(PMS & PMS支援室 記)

7月31日から8月1日にかけての夜半、ナンガラハル州に隣接するラグマン州の山岳部に局所的な豪雨があり、マルワリード用水路N・M区の谷に鉄砲水が流れ下り、谷の住民16名が死亡。
263の家屋、羊、山羊、鶏等の家畜の他、稲田やトウモロコシ栽培中の田畑が流失した。
また、子どもが見当たらずサイフォン内に埋まったのではと考えられ、作業員を増員して浚渫作業が進められたが、3日目に下流側で遺体が発見された。
PMSでは8月2日から調査を開始。 巨石、土砂で完全に埋まった用水路N区全長約1.8kmの内1.5kmの用水路、30mと40mの2つのサイフォンの修復工事を早期に始める。
稲やモロコシに水が必要な時期であるため、10日(月)からの送水開始を目標に工事を進めている。休日の木・金曜を返上しての修復工事は、家屋、田畑流失で失意の中にいる村人たちを励ましたようです。

7日、マルワリード用水路のK池から以降の合計12の貯水池を確認した所、大量の粘土や土砂が堆積していた。PMSは流域住民を動員して定例浚渫を勧めていた時期があったが、マルワリード用水路流域はまだ住民のまとまりがなく水組合の立ち上げが容易ではなく、昨年は村の有力者が勝手に用水路に設置した水車13基を撤去した経緯がある。
今回のN・M区の修復工事を機に、マルワリード用水路全線の定例浚渫に繋げて行く予定。
ガンベリ公園に建設中の中村先生の記念塔は、外装工事をしています。

●PMS現在の事業
1. マルワリードⅡ(カチャラ堰) - 工期: 2016年10月~2020年12月31日
・護岸工事 ― 8.9kmまで終了し、河の増水を見て石出し水制等を補強
・排水路4の架橋に着工(中村医師の計画では: 排水路1、2、4に約20の架橋を予定)
・ベラ用水路延長―計画通り進行

2. マルワリードⅠ改修計画 - 工期: 2019年10月~2023年9月
(1) 取水門間口を2門増築し、取水門に続く用水路50mの拡幅
(2) コンクリート土砂吐き=可動堰建設
(3) 固定堰の拡幅
(4)用水路床面ライニング工事
(5) 堤のかさ上げ
等が予定されている。
※(1)と(2)は、昨年12月に着工寸前で停止しており、(4)と共に今冬着工を予定

3. ゴレーク・シギ事業
・オンライン協議(PMS-日本側技術協力者)...8月内予定
・日本側のみオンライン協議...8月8日

4. バルカシコート事業
・調査中
5. 農業
・冬野菜の種まき... キャベツ、カリフラワー、ニンジン、モロコシの作付け中
・徳永さん来局時... 農業担当のEng.Ajmar(アジマル技師)と柑橘類の剪定後の経過についてオンラインで通信開始。今後、続行していく

6. 医療
・診療数7月: 3,550名
・マラリア診療数
7月: 520 名、6月: 492名、5月: 291名
・ワクチン接種: ダラエヌール診療所でポリオ患者1名を診断後、州政府からワクチン担当の職員が派遣されPMS診療区のワクチン接種を充実

7. ミラーン訓練所
・現在は訓練所の事務所を、現場事務所(灌漑事務所)として使用
・7月からディダール技師による講習を不定期に開始。対象はPMS の新エンジニア2名、ファヒーム技師、ポーパル技師等
将来、ファヒーム技師からトータルステーションでの測量法を新技師たちに繋いで行く

●コロナウイルス
アフガン全土: 8月8日現在、アフガン政府発表 37,015名、死亡1,307名
PMS職員罹患者: 合計25名/現在1名が自宅療養中

●犠牲祭(イーデクルバーン)祝日: 7月23日(木)~26日(日)
コロナ禍での道路封鎖が解除された以降、人々の往来は、5月断食あけのイード祝日より緩やかにはなってきましたが、前回同様に職員たちは家族のみで祝ったとの事。
以下、ジア先生からの報告です。
・ガニ大統領とタリバングループはイードの3日間は停戦協定を結び、34全州が平和に祝日を過ごした。殆どの市民は停戦が更に1日延び、更に1カ月、半年、、1年となり紛争がなくなることを願っている。イード期間中に、1件ローガル州で平和を好まない外国人グループが爆破事件を起こした。
・8月2日早朝にJD市内の刑務所襲撃・銃撃戦で12名死亡、50人逃亡。2日目殆ど再収容された。PMSの事業への影響はなかった。
以上です。
PMS 支援室一同


▼被害のあった地区の衛星写真(推定2018年撮影)。この渓谷の土地が切り売りされており、もともと洪水路だった所にまで住居が建てられていた。PMSは洪水後住民と話し、洪水路には家を建てないことを説明した。

▼マルワリード用水路N区。巨石や土砂で完全に埋まっているが、用水路両側の成長した柳で用水路の位置がわかる。

▼N区サイフォン-3より上流側の用水路。水路壁右岸(渓谷側)はもともと洪水を取り込み、渓谷下流側(写真右側)の村の被害を減らすよう比較的低く造られていた。2020年8月3日

▼N区サイフォン-3出口から用水路下流側。直径1mほどの大きな巨礫が入り込み、サイフォンを塞いでいる。それほど大きな土石流が流れてきたということだ。2020年8月3日

▼N池周辺。蛇籠も埋まり、柳でかろうじて用水路の位置がわかる。2020年8月3日

▼N池以降の用水路。水路横の交通路天端とほぼ同じ高さまで土砂が溜まっている。2020年8月3日

▼8月4日より浚渫工事開始。用水路壁の蛇籠は高さ約2m。村人もガンベリ農場も田植えを終えたばかりで水を要するため、復旧が急がれる。2020年8月6日

▼N区サイフォン-3入口上流側。見渡す限り土砂に埋まっている。驚くべきことに、柳の根が隅々まで張り巡らされた蛇籠は、この規模の土石流でもびくともしていない。2020年8月5日

▼N区サイフォン-3出口の浚渫。機械の入らないサイフォン内部は人力で土砂を掻き出すしかない。ポンプで水を吸い上げながら、作業員が奮闘中。2020年8月5日

▼マルワリードⅡ流域地図。マルワリードⅡ事業は引き続き、新ベラ延長用水路と排水路4の造成、植樹、護岸の補強工事が行われている。

▼新ベラ延長用水路(全長2,300m)造成風景。ソイルセメントで水路床面のライニングを行い、水路壁はレンガで造成する。ライニング工事は全線で完了し、水路両壁の工事は1380m地点まで終了している。2020年8月6日

▼排水路4(全長3,500m)造成風景。現在、2500m地点まで工事が完了している。2020年8月6日

▼調節池Ⅳからのベラ延長用水路沿い水やり風景。気温が40度を超え、水やりをしてもすぐに干上がってしまう為、作業員の人数を増やし、護岸線や水路沿いで水やりが行われている。2020年8月6日

▼養蜂事業、ダラエヌールで避暑中の蜜蜂たちの現在。2020年7月22日

▼6月にガンベリ農場で収穫を終えた麦藁は、蓄えられ、家畜の餌としても利用される。2020年7月24日

▼藁はトウモロコシやアルファルファなどと混ぜ、牛たちに与えられる。余った藁はバザールで販売される。2020年7月24日