トピックス2020.12.29(1)
2020年12月29日
皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。
今年は、2月のインドでのPMS職員と新PMS総院長村上優、PMS支援室の協議に始まり、2月末からのカーブル、ジャララバードでコロナウイルスによるロックダウン、3月PMS職員コロナウイルスに感染、4月にロックダウン中のマルワリード用水路F区の陥没と改修工事、同用水路E区の洪水通過橋の拡幅工事とジャリババ渓谷の鉄砲水流路の整備、8月のウオレス谷からの鉄砲水によるN区の浚渫、それを受けてマルワリード用水路全線の浚渫作業、ゴレーク・シギ地域の調査、マルワリードⅡ堰完工、農業、医療活動等々、一年を通して大小様々な作業が行われました。
現在の活動状況についてご報告を致します。
バルカシコート堰着工
12月に州政府の認可を受け、マルワリード・カシコート連続堰から約2km上流の左岸に建設を開始。
中村医師が以前報告をしているように、ここはコンクリートの突堤とスライド式の取水門があり、突堤の先端が洗堀され、年々取水が困難になっている所です。
今事業は職員が用意した設計図をもとに日本側の技術協力の皆様と協議をしながら進めております。
PMS職員たちは、初めて自分たちだけで着工するので用心深く進めていきたいと、やや緊張気味です。バルカシコートの詳細は次の号でお知らせを致します。
マルワリードⅠ用水路改修 (工期:2019年11月~2023年10月)
ガンベリ沙漠までの用水路全線のクリーニング作業が進められていましたが、予定通り終了しました。今回は用水路内の同作業を急いだため、沈砂池/貯水池は簡素なかき出しをしました。また、I,K地区等のサイフォン部に土砂は少なくうまく機能していることも伝えられました。
クリーニング作業の後に、麦蒔き時期や灌漑の状況を見ながら、取水門を閉め用水路床面のソイルセメントのライニングを開始、12月に取水門から5km地点までを終了し、年明けに再開される予定です。
3、マルワリードⅡ堰 (工期:2016年10月~2020年12月)
植樹と水やりを残し完工しました。
用水路全長:7.9km (ベラ延長路を含む)
沈砂池、調整池:4ヵ所
灌漑面積:815ヘクタール
分水路:カチャラⅠ、Ⅱ、Ⅲ、コーティ、タラーン、ベラ
排水路:4排水路 (マルワリードⅡ堰流域地図参照)
護岸:8.9km
この建設に着工した頃は、パキスタンからアフガン難民の帰還が急速に行われPMSの活動地は帰還した人たちで溢れました。これを受け中村医師は、4年計画でこの堰から全村へ通水する工事を急遽変更し、早期送水を目指し帰還した難民の帰農を促すことにしました。早期送水=農地復旧のため、送水が出来る所までを建設して残りの膨大な作業は後で行うとの方針で取り組み、2017年1月28日に沈砂池1までの試験送水をしてカチャラ村へ送水を始めました。その後も建設の進行に合わせて2017年12月にコーティ村へ、2018年7月までに残りのタラーン、ベラ村への送水を可能にしました。荒れ果てた農地は村人たちによって、あっという間にトウモロコシや麦畑に変化して行きました。
新型コロナウイはルスによるロックダウン等の影響を受け、工期は2020年9月まででしたが延長手続きをして、この12月に植樹の水やりを残し完工しました。
4、PMS取水方式の普及
上記のマルワリードⅡ堰の工事の期間に、山田堰を参考にして確立した、洪水・渇水に耐え年中取水ができる工法「PMS取水方式」の普及への取り組みが始まりました。
2017年にFAOとの関連事業として、ミラーン堰の横に訓練所を建設。2018年1月から教室での講習とPMSの作業現場での実地研修が行われ、中村医師も自ら教鞭をとり「現場で働く人材を育成する場所」としてこの訓練に力を入れました。中村医師亡きあと、講義や技術指導を担当するPMSのエンジニアたちが現場作業に忙しいため、一時休止となっていますがPMSは時期をみて再開する事を望んでいます。
また、この間に「山田堰の生きた模型」が、カマ第Ⅰ、第Ⅱ堰に完成しました。ここは交通量が多く見晴らしの良い所に位置しており普及の一端を担っています。
「PMS取水方式のガイドライン」の作成も着実に進行しています。
5、農業 PMSガンベリ農場
米やみかんの収穫、冬野菜の苗植え、収穫が行われています。詳細は写真をご覧ください。
特に、今年は初めて剪定を試みた柑橘類と、剪定しなかったものとの違いを観察できる事を皆楽しみにしています。来年から、農場のFブロック以降の沙漠地の開墾を進める予定です。
6、医療 ダラエヌール診療所
12月に入り、ダラエヌール地域やシェイワ村、カマ郡で新型コロナウイルス感染者が出ており、ダラエヌール診療所でも全職員の塗抹検査が行われました。結果ワクチン接種担当者、助産師、門衛、看護助手の計6名が感染していることが分かり、自宅隔離されましたが有難い事に今回は重症化する職員はおらず全員仕事に戻っています。
12月末時点で外来患者の感染数は23名で、全員自宅で隔離し観察しているとの事です。ダラエヌール診療所は、ナンガラハル州政府の要請で閉鎖せず診療を続行しています。
12月8日にナンガラハル州で中村哲先生の1周忌の式典が執り行われました。ドロンタダム周辺からジャララバード市内までの国道と州知事公邸前の通りに中村先生の写真が何枚も掲げられました。治安の問題があったため静かに準備が進められ、PMSのガンベリ農場内の記念公園においての式典との話しもあったようですが、万全を期して知事公邸で行われました。
今年は中村先生の不在の中で、日本の多くの支援者の皆様に励まされながら本日まで参りました。また、取水堰・用水路建設についてはどうしても慎重にならざるを得ず、技術的な面では日本側の技術協力者の方々とPMS職員、支援室とのオンライン協議を重ねて来ました。おかげさまで一歩ずつ踏み出しております。
皆様に厚く御礼申し上げますとともに、来年もご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
PMS支援室一同
▼マルワリード用水路取水門から5km地点までの図。今年予定していた5km地点までの用水路床面のソイルセメントライニング(水路床覆工)は予定通り終了した。5km地点以降は来年以降順次行っていく予定。また、水路全線の浚渫作業も大池を除き終了した。











