Top» トピックス» 掲載日:2021.4.10

トピックス2021.2.28

バルカシコート堰工事白熱!

皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。
現地は1月に入り気温が20度を越える日があるようになりました。雨はなかなか降らないとの事です。中村先生ご不在の中、PMSの職員たちだけで建設するバルカシコート堰の工事が始まって2カ月が経ちました。現場で働くエンジニアをはじめ、掘削機の運転手、鉄筋組班、コンクリート打設班や植樹班、皆緊張しながらの工事進行です。そんな中、ジア先生の提案で2月8日現場にて報奨が配られました。現場が一気に活気づいたと報告が来ました。
現在の活動状況についてご報告を致します。写真がたくさんありますので合わせてご覧ください。

1. バルカシコート堰
・工期:2020年12月~2022年9月
・灌漑面積:230ヘクタール
12月末に着工した本工事は、2月末まで取水門、砂利溜め、コンクリート製の土砂吐き兼可動堰の建設と、堰や護岸用の巨礫の蓄積に追われていました。クナール河の水位が上がってくる前に堰の石積みを終えなければなりませんが、計画している斜め堰を完成させるには時間が足りないので、まずは取水が出来るよう仮の堰(堰幅10m、堰長200m)を対岸の砂州に接続するところまでを目標にしています。
今秋にその続きの石積みをして堰を完成させてゆく予定です。

遮水壁を造った後に始められた取水門の建設では、基礎工事に注視しました。中村先生が言われるように、現地では後で見えなくなる基礎工事には力を注がない傾向にあるからです。毎日現地から送られてくる工事の写真を日本側の技術協力者の皆様にお見せしご指導を頂きながら、また私たちPMS支援室でも先に造ったカマ堰、マルワリードⅡ堰、ミラーン堰等の同建設時期の写真を参考にしながら疑問を投げかけ現地と密に連絡を取り合い、今日に至っております。

2. 灌漑施設の改修工事
●ミラーン堰
取水門への流れの河道①内に砂利の堆積があり、クナール河本川への流れ河道③-Aの流量が増加し、取水困難になりました。
土砂吐き①-1,2に堰板を装着し、更に河道②の洪水吐を上記の場所から取り除いた堆積砂利で塞ぐ処置で、水位が40㎝になり取水が可能になりました。
ここではいずれ、中村先生が計画していたように、上流側の河道③に筑後川の床島堰(江戸時代)をモデルに石堰を築造する必要がありそうです。

●カマ堰 砂州の一部改修工事
夏の増水期を経て砂州1右岸側の、護岸を施した砂州辺縁に沿って深掘れが発生。巨礫を投入し2月末に作業を終了しました。

●マルワリードⅡ堰
堰に設けられた洪水吐の深堀れのため取水困難となりました。掘削機のアームでの計測では深さ3mに及び、巨礫を投入して25日時点で取水量を確保。堰の他の部分の損壊や石の配列の乱れ等は見られていません。数年間の観察、改修を繰り返し安定した堰になる事を期待しています。

3. 農業 PMSガンベリ農場
農場のFブロック以降の沙漠地の開墾が始まりました。砂と土の入替や測量をしながら平地にならす作業が80ジェリブ(16ha.)にわたり進行しています。
この開墾地に植え付ける柑橘の苗を、安価で質が良いとの事で早い時期に大量に買付けるという作業手順が非効率的な所もありましたが、植え付けの時期に何とか間に合わせようと担当者達が休日返上で頑張り、約3000本の苗の植え付けが終了しました。
みかんの収穫、サトウキビの収穫が行われています。詳細は写真をご覧ください。

4. 医療 ダラエヌール診療所
現在、ダラエヌール周辺に新型コロナウイルスの感染者は見られず、診療所の職員にも感染及び疑いのある者はおらず皆元気です。今年は、外来患者の待合室や診察室等の改善や、新型コロナウイルスの事もありますので、職員たちの防護用備品等も充実させてゆく予定です。

2000年に干ばつが顕在化しPMSが井戸事業を開始した時、中村先生と共に働いていたエンジニアが最近、ジャララバード事務所を訪問しました。
彼は現在クナール河の上流、ヌーリスタン州の政府の職に就いており、「PMSにヌーリスタンで用水路を造って欲しい」と強調したそうです。ジア医師は、今は無理だが7年後位には行けるかも知れない、と答え、こちらからも「ヌーリスタンのエンジニアを6カ月か1年間PMSに預けたら現場での実地研修が可能」と伝えてもらいました。
各州から自発的に技術者がPMSへ送られ、実際的な訓練が行われることを中村医師は期待しておられたので、今回のことがいい兆しになるよう願いました。現在、JICAの計画で進められている「PMS灌漑方式ガイドライン」の完成が、今も進行する干ばつに被災しているアフガニスタン各地の関係者を励まし希望を持たらす書になること期待しています。
PMS支援室一同

▼バルカシコート堰工事白熱!!
事業地はマルワリード=カシコート連続堰のやや上流に位置する(2枚目参照)。工期は2020年12月~2022年9月、この事業により230haの安定した灌漑が可能になる。
(写真撮影日2021年1月13日)

▼同事業地の位置関係を示す。

▼工事前のバルカシコート取水口の様子。同地点取水部は突堤式の堰上げにより、先端の洗堀と河床低下を起こし、安定した取水が困難となっていた。また水門幅が狭く、低水位の際は取水できず、その度に臨時的な改修工事を行っていたが、今回ついにPMS取水方式での工事が行われる。2020年10月15日

▼12月26日より着工したバルカシコート事業の作業風景。取水門の基礎工事が行われており、この日は普段事務の仕事をしているサーブルジャン(ジャン:愛称)や会計担当のハニフラさんも現場に赴き作業を行った。2021年1月3日

▼取水門基礎工事風景。掘削機でセメントと玉石を混ぜ、厚さ50㎝の強靭な基礎とする。2021年1月3日

▼取水門、鉄筋組みの様子。2021年1月6日

▼バルカシコート事業流域の長老達が客人(メフマーン)としてPMS職員を歓待し、PMS職員一同の安全を約束した。2021年1月6日

▼取水門床面、コンクリート打設作業風景。コンクリート打設は一気に終える必要があるため、ミキサー車を3台並べ、作業員を増員し、フル回転で行う。2021年1月13日

▼取水門の床面コンクリート打設作業は完了し、土砂溜と土砂吐の鉄筋組みが開始されている。2021年1月16日

▼土砂溜、土砂吐の床面コンクリート打設作業が終了。土砂吐は鉄筋組みまで完了した。2021年2月2日

▼取水門対岸にある堰を掛ける砂州の強化を巨礫で行っている。砂州の保護により、堰体の破綻を防ぐとともに、河道を安定させる。2021年2月9日

▼ミラーン堰。低水位期になり取水口部での土砂堆積が原因で、一時的に取水困難となった。翌週土砂を取り除き、水位は回復した。2021年1月27日

▼堆積土砂の掘削風景。水量の確保のため、掘削した砂利で洪水吐きを一時的に閉じる。2021年2月3日

▼ガンベリ農場の未開墾地の様子。今年は約20haを開墾し、レモンの移植が行われる予定。果実のような植物は荒地に自生する植物で、見た目はスイカに似ているが食べられない。2021年1月25日

▼開墾には、昨年8月にマルワリード用水路M・N地区を襲った鉄砲水で用水路に堆積した肥沃な土を用いた。2021年1月20日

▼開墾が完了した同地。6,600本のレモンが植えられる予定。右からジア先生、会計担当ハニフラさん、地域調整員パチャグルさん、アジュマルジャン。2021年1月27日

▼オレンジの出荷風景。2021年1月19日

▼出荷されたオレンジ。2021年1月19日

▼さとうきびの収穫風景。2021年1月21日

▼PMSでは例年黒砂糖の生産も行われているが、今年収穫したさとうきびはバザールのジュース屋に出荷された。2021年1月21日

▼2月3日、この日天気は曇りで気温は14℃前後。ジャララバードではもう長く雨は降っていないとのこと。この日サーブルジャンはレンガの買い付けの見積もりを取りにバザールへ出かけていた。2021年2月3日

▼綺麗に積み上げるのが好きなアフガン人。2021年2月3日
「売れても売れなくてもそんなことはどうでもいい、きれいに積むことが向こうの人々は非常に好きなんです。」(中村哲)

▼山積みのデーツ(ナツメヤシ)と黒砂糖。2021年2月3日

▼マルワリード用水路流域、活気溢れるシェイワバザールの様子。2021年2月7日

▼シェイワバザール。2021年2月7日

▼ガンベリ公園、ドクターサーブナカムラ記念塔の前で。ベラさんは植樹を担当していた元作業員だったが、中村先生に働きぶりを評価され、現在は農業班の職員として働いている。
中村先生曰く、「植樹活動の立役者。ベラ(聾)というあだ名の人気者。曲がったことが大嫌い。正直一途で妥協しない。彼のジェスチャーによる意思伝達は飾り気なく、どんな言葉よりも明快。」2021年2月7日