Top» トピックス» 掲載日:2022.4.28

4月月報(2022.4.20)

2022年4月20日報告
皆様、お元気でお過ごしでしょうか。

アフガニスタンは4月2日から断食月に入り、PMSでは勤務時間を短縮して(8時~13時)事業を進めております。
昨年8月の政変から8カ月が過ぎました。
厳しい干ばつで食糧危機に晒され、コロナウイルス感染の問題をも抱えるなか、アフガニスタンの資産が凍結されたままです。現地の銀行からの活動資金取出しの制限も続いています。PMSでは何とか活動費を工面しながら、医療、農業、用水路建設が進められています。
今年は1月にやっと各地で雨が降りました。降雪も見られましたが、現地から届く画像ではケシュマンド山脈では2月に厚い積雪が一回あった位で、すぐに山肌が見えるほどに薄くなっています。干ばつは更に厳しくなることが予想されている中で、PMSの活動地、シェイワ、ベスード、カマ郡では例年通り小麦が実り今月末には麦刈りが予定され、その後の田植えの準備も進んでいます。中村先生が生前「PMSの活動地のみに希望が感じられる。活動地を一歩出ると酷い干ばつだ」と話しておられた通りだと痛感しています。

昨秋から今年2月までのクナール河の低水期に行う、各堰の修復工事も増水期前にようやく終わりました。資金が充分に使えないため数ヵ所の工事が同時に進められなかったので心配をしていましたが、エンジニアたちが細かに日程と現場の調整を行ない重機類の使用がスムーズに行われました。

PMSの活動状況は以下の通りです。写真での報告と合わせてご覧ください。

食糧配給
PMSは1月末から2月にかけて、ナンガラハル州の6つの郡で食糧配給をしました。これも資金繰りの厳しさがありましたので、ナンガラハル州の保健局と協議のうえ栄養失調児と妊産婦のいる家族を対象に各郡300家族と決め実行されました。
ジア先生を筆頭に12名の配給チームを組み各郡の保健局の職員と協働し配給をしました。ジャララバード市内から食糧を満載したトラックに同行して行く道中にジア先生一行が目にする農地は干上がり荒れ果てており、PMSの活動地のように麦や野菜、果樹で青々としているところは殆ど見ることは出来なかったと述べています。治安が良くなり十数年ぶりに郡を越えて職員たちが移動できたことや、経済封鎖のなかでの食糧配給は画期的なことでしたが、このような食糧危機のなか300家族に絞らなければならなかったことがつらかったと報告がありました。

●バルカシコート堰(2020年12月~2022年9月)
2月28日に堰が完成しました。小さな菓子を配りバルカシコートの村人と堰の完成を祝いました。ディダール技師は「日本の技術支援チームがいつも支えてくれました。この厳しい状況のなか日本からの支援に感謝します」、ファヒーム技師は「中村先生はアフガニスタンの基礎を作って下さった。武器では国は造れない、水は畑に収穫物をもたらし人が暮らせるようになり国ができていく」と熱いメッセージを送ってくれました。
増水期を迎えた現在は用水路の建設、護岸工事、植樹作業を行っています。堰・用水路建設で通年の安定灌漑が可能となり、バルカシコート村は人口が増えています。

PMSでは初めての取り組みとして、バルカシコート堰周辺の谷に蛇籠と石積みによる堤を設置する作業を進めています。時々発生する鉄砲水を緩流化させる目的で、蛇籠と石積みの堤を一つの谷に9カ所置き、植樹と組合わせて造ります。

●マルワリード用水路改修計画(2019年~2023年)
今秋から、コンクリート製土砂吐き兼可動堰建設、固定堰の改修、取水門の間口増設、それに伴う用水路拡幅(取水口から50m地点まで)に着工予定です。

●維持管理
ミラーン堰
 取水口への河道内の砂利・土砂堆積の除去、堰体の巨礫補給が行われました。
カマ堰
 堰が接続する砂州辺縁の洗掘部に巨礫投入、堰体の巨礫欠損部の補修など。
マルワリードⅡ堰
 堰接続部の砂州の補強、堰の下流縁に巨礫の投入が行われました。

アシャール(奉仕作業)
カマⅡ堰流域の代表からジア先生に、アシャールをするので現場に来てほしいとの連絡がありました。3月12日、流域住民が集まり用水路の掃除が一斉に行われました。印象的だったのは、大勢の青年たちがその作業を行っていたことです。
「私の後継者は用水路です」と、中村先生はしばしば言われていました。昨年から数カ所の用水路で流域住民による用水路の清掃作業が自主的に行われるようになってきました。用水路が地元の人々に「自分たちの大切な財産」として大切に使われていくのは中村先生の念願でありました。

●農業 PMSの自給自足を目指して
今年は玉ネギ、トマト、グリンピースや他の豆類などPMSの給食で使われる野菜の栽培にも力を入れています。また、干ばつ被災地への配給を考えて主食になり得る作物として、サツマイモとジャガイモが植えられました。サツマイモは、PMSの試験農場をダラエヌールに置いていた時栽培をしてたいへん良い結果が出ていましたが、種イモの越冬が難しく栽培は長く途絶えていました。2018年に中村先生がガンベリ農場で再度試験栽培をして以来小規模に作っていましたが、ネズミの被害で収穫は殆どできず種イモ30個ほどが土の中に確保してありました。問題のネズミ対策としては日本の農家の方に相談して、猫を農場で飼う事になりました。以前農地に置いていた殺鼠剤を見た中村先生から薬より猫を飼うことを勧められたことがあったとアジュマル責任者の話し。 
4月末の小麦の刈り取りを前にバッタが大量に発生しガンベリ農場を襲っています。州政府の農業局へ報告すると直ぐに対処が行われました。ガンベリだけではなく沙漠地や高地でバッタの被害が出ており政府が処置しているとの事です。また、大量ではありませんが、小麦畑にツマジロクサヨトウも発生しています。
養蜂:菜種や桃などの花のあるダラエヌール渓谷からユーカリやミカンの花の咲き始めたガンベリ農場へ巣箱を移しました。アフガニスタン政府が養蜂を奨励していたためか、今年はガンベリ農場周辺へ多くの巣箱が置かれているとの報告がありました。

●医療―ダラエヌール診療所
3月診療数 - 4,372名(2月 3,247名)
  医療については、最新の会報151号にハフィーズ医師が詳細に報告をしていますので省略致します。

●その他
・PMS支援室では、技術支援チームから授業を受けるため5月に合宿を予定。また新職員を迎えましたので、山田堰や大石堰、石出し水制、サイフォン等の視察学習、サツマイモの栽培、養蜂についての学習を予定しています。

以上です。
PMS支援室一同

▼バルカシコート堰完成!! 2022年2月28日にバルカシコート堰が完成。2020年12月より着工したバルカシコート堰は経済制裁により、工事中断などの困難があったが、増水期前に無事終了した。中村先生逝去後、初の堰建設であったため、現場の職員達にとっては喜びもひとしお。完成直後に地域住民と歓声を!2022年2月28日    


▼完成セレモニーで挨拶をするディダール技師。ファヒーム技師もペシャワール会事務局にビデオレターを寄せ、「武器では国は造れない、水のあるところに人々が集まり国が築ける。」と力強く話していた。2022年2月28日


▼完成したバルカシコート堰。以前はPMSが既存の取水口の一時的な改修工事を繰り返し、かろうじて取水がなされていた。しかし、今回PMS取水方式を取り入れたことで、一年を通し安定した取水が可能となった。2022年2月28日


▼堰の工事は終了したが、今後、工期終了(2022年9月)までに主幹用水路、護岸工事、沈砂池の造成、植樹が行われる。2022年4月6日


▼全長300mの主幹水路造成。傾斜を測り、ソイルセメントライニング工を施す。作業員たちが手際よく工事を進めて行く。2022年3月29日


▼バルカシコート堰周辺では時々谷から鉄砲水が用水路や田畑に流れ下る。現在PMSは対策として、試験的に砂防堰堤を設置中。一つの流路に数カ所設置し、段階的に鉄砲水の勢いを緩和させる。一気に流れ下るのではなく緩流化させることで、防災の役目を果たすと共に地下水位の上昇が期待できる。 2022年4月5日


▼2月16日より、ミラーン堰での浚渫・補修作業が始まった。写真は作業開始前。堰手前には大量の土砂堆積が見られる。2022年2月16日


▼土砂吐き2、砂州2の前には、漬物石ほどの大きさにもなる玉石が大量に堆積していた。2022年2月16日


▼浚渫作業開始。土砂を重機で除去していく。取り除いた砂利は砂州の補強に使われた。2022年2月16日


▼およそ2週間後の28日。堰手前に堆積した土砂はおおむね除去が完了した。
2022年2月28日


▼堰上流の土砂除去完了後は、土砂吐き1、2の下流側の補修作業に移った。写真は土砂吐き2の下流側に巨礫を投げ入れ護床工の補修中。2022年3月1日


▼砂州下流端の補強も並行して行われた。2022年3月2日


▼取水門に隣接する土砂吐き1の下流側。こちらも巨礫を敷き詰め、護床工を強化し、ミラーン堰の今冬の補修工事は完了した。2022年3月6日


▼現地技師から届いたカマ堰補修計画の和訳。


▼カマⅠ堰が接続する砂州の上流左岸側の補修。ミルクセメントで固めた面と自然地面との間がえぐれていたので、巨礫を投入した。2022年3月6日


▼同砂州の右岸。砂州の内側にまで食い込んで浸食された箇所に巨礫を敷き詰めて補強していく。2022年3月8日


▼同地下流部。巨礫を敷き詰めたのち(左上写真の青線箇所)、柳の植樹を施した。ホースなど使わずバケツで丁寧に水やりすることで活着率が上がる。中村医師の方法を今も踏襲している。


▼同砂州の右岸下流側に設置した石出し水制の補修。まず砂利を投入し、その上から巨礫で覆い保護した。


▼時を同じくしてカマⅡ用水路では、流域住民がアシャール(奉仕活動)による自発的な浚渫作業を行った。ジア医師やPMS技師たちも開始前の集会に招かれた。写真中央、住民に向かい挨拶しているのはジア医師。2022年3月12日


▼浚渫に精を出すカマⅡ用水路流域住民たち。2022年3月12日


▼カマⅡ堰の表面をミルクセメントで覆っていた箇所が洪水流で一部欠損していた。損壊の被害を確認するディダール技師。2022年3月6日


▼カマⅡ堰の補修作業。巨礫を投入し、堰表面の損壊部を補修した。2022年3月24日


▼ガンベリ農場では柑橘類の収穫が終わり、剪定作業が行われた。数万本に及ぶ柑橘の剪定は、冬季で最も注力した仕事だ。2022年1月12日


▼旧居住区予定地(ガンベリ農場S区)のオレンジ園。ここは以前計画されていた居住区建設の基礎が残っており、水やりに影響が出ていた。ブルドーザーで礎石を取り除き、潅水の効率化を図る。2022年1月19日


▼グリーンピース畑。野菜はその他豆類、トマト、キャベツ、タマネギ、イチゴ、ジャガイモなどが栽培されている。2022年3月5日


▼初めての試みとして、小規模だが栽培を始めたイチゴ。虫よけのために、ネギと組み合わせて植えている。2022年4月6日


▼グリーンピースの収穫。2022年4月10日


▼サツマイモ。中村医師が2018年に栽培を試みたもので、PMSの職員が種芋を維持していた。荒地で育つため、PMSでは干ばつ下の主食となるように期待を込めて栽培を継続する。目下の課題は野ネズミ対策。2022年2月26日


▼ダラエヌール渓谷の菜種畑を訪れたアジュマルジャン。昨年ガンベリ農場でも養蜂のために菜種を植えており、今年は採蜜を試みる予定。 2022年2月23日


▼花盛りのガンベリ公園。2022年4月5日