Top» トピックス» 掲載日:2023.1.30

12月月報

2022年12月26日報告

バラコット用水路建設着工
さつまいもの収穫


皆さま、お変わりなくお過ごしでしょうか。
8月の大洪水後、PMSが建設した護岸の補修工事がカシコート、ベスード、マルワリードⅡと段階的に行われました。河の水位が更に下がるのを待って各堰の点検、補修工事が開始される予定です。

8月の降雨後PMSの活動地周辺ではしばらく雨が降らず、11月に入ってから小雨が数日間降ったのみです。ケシュマンド山脈の降雪も驚くほど少なく、さらなる干ばつが心配されています。
PMSの活動は以下の通り進められています。

灌漑事業
1. 2020年に着工したバルカシコート堰・用水路が完成。10月初旬にシェイワ郡から関係局長等が出席し、村人と共に完工祝いが行われた。 堰近傍の山間に造られた砂防堤周辺への植樹と水やりは継続。

2. 10月からコット郡で、新規事業のバラコット堰・用水路建設着工。
スピンガル山脈を水源とする湧水と水位が不安定な河川水から取水し、荒地に送水する計画。堰や取水門建設予定地への交通路がないため、現在用水路建設予定地の末端から上流へ向けて地山の切土作業中。現場からは巨礫が出現し切土法面の崩落の防止や路肩の保護に使われている。切土ではナチュラルコンクリートが出現し掘削機にノミを装着して砕く場所もある。
現場では、先頭の切土作業、その後を追うように更に切土し交通路の幅を広げる作業、その後から整地していくグループが連動して進んでいる。先頭の作業が1,700m地点に到達。

3. マルワリードⅠ改修計画
H,I区の用水路床面のソイルセメントライニングが開始された。麦蒔きの時期であり、送水を停止する期間を農民やガンベリ農園と調整し、且つ少ない重機を洪水後の改修工事にも使えるよう効率的にスケジュールを組み進めている。
堰・取水門改修工事は工期を延長し、来年秋から開始の予定。

維持管理
洪水でミラーン取水口への河道内に堆積した砂利の除去作業を終了。今夏の洪水により堰の一部となっている砂州上にも砂利堆積が見られ、砂州3の左岸がやや流失している。

農業 ―ガンベリ農場
なつめを収穫し乾燥中。キャベツ、人参、大根など冬野菜の栽培中。
レモンや玉ねぎが出荷された。
サツマイモは11月に収穫された。9月に植付けをしたものは気温が下がる朝夕にはプラスティックでカバーしている。

医療 ―ダラエヌール診療所
8月の洪水後、水溶性下痢患者が急増していたが減少傾向にある。またコレラの発生に備え点滴などの備えをしていたが、幸いクリニック周辺ではコレラ患者は見られなかった。相変わらず受診希望者は多く遠方からも来院している。

4. 2023年度事業として
JICA、FAOとの共同事業の候補地を選定。この事業は、中村医師(PMS)が確立した「PMS取水方式」の普及事業として、FAOをはじめ企業や各地域の技術者や住民に技術を伝達することに力が注がれる。この方式の有効性はPMSの活動地ですでに実証済みなので、干ばつで干上がってしまった農地を復旧できるという確信から、バルカシコートやコット地区での建設と同様に地域住民を挙げて取り組むことが期待される。

パキスタンの洪水被災者への支援は、洪水発生直後から旧北西辺境州の被災地への支援に駆けずりまわっていた旧PMS病院代表のイクラムラ氏(PMS病院時代の事務長)を通して継続されています。

中村先生が亡くなって3年が経ちました。アフガニスタンのPMS職員たちは「ドクターサーブは目には見えないけれど、いつも私たちと共におられます」と口を揃えて言います。それは私たちも同じで、現地で何かあると知らぬ間に先生に問いかけたり、経過や結果を伝えたりしています。
この3年間お力添えを頂きましたこと、心から感謝申し上げます。

2022年12月26日
支援室一同

▼12月8日までのクナール河の水位グラフ。8月末の大洪水後は水位の下降が見られる。今のところ昨年、一昨年よりは高い水位を保っている。
Kunar River HydroGraph(Flow=CUM/sec)


▼洪水後のシェイワ堰。若干の石積みの乱れと堰上流の土砂堆積が見られ、今後除去予定。砂州との接合部も少し洗掘されており、観察を要する。2022年11月5日


▼シェイワ用水路内の水位。約60cm。2022年11月5日


▼シギ堰。堰上流に土砂の堆積が見られる。ここから取り除いた土砂を、マルワリード用水路床ライニング工事の資材として再利用している。2022年11月5日


▼シギ用水路内の水位。約30cm。2022年11月5日


▼ミラーン堰、取水門前の土砂の除去。その土砂を護岸や砂州の補強に用いる作業を継続していたが、マルワリード用水路床ライニング工事の開始により、12月初旬現在は一時停止している。2022年11月5日


▼ミラーン堰の土砂吐き2を護岸側から。コンクリート構造物と自然地面の接続部はえぐられやすく、洪水後は毎回のように補修を要する。2022年11月5日


▼ミラーン堰。土砂吐き1を護岸側から。土砂の除去作業継続に伴い、徐々に水位の回復が見られる。2022年11月5日


▼ミラーン用水路内の水位。約25cm。2022年11月5日


▼カシマバード堰上流。堆積土砂の掘削により水位を回復。2022年11月5日


▼【左上の青矢印】カシマバード堰。石積みを完全に越流するにはいたっていない。取水門側には巨礫で水量調整ができる部分可動堰/土砂吐きが設けられていたが、現在は巨礫が詰められ極力水を用水路へ送れるようにしている。2022年11月5日
【右下の黄矢印】造成当初の土砂吐き。2011年12月


▼カシマバード用水路内の水位。約25cm。2022年11月5日


▼ダラエヌール、ブディアライ村の干上がった農地。作物の育たない農地で、芝のような雑草が幅を利かせている。2022年11月26日


▼同じくダラエヌール、上流のシュキアライ村。数日前に少し雨が降り地面が湿ったことに一縷の望みを託して、住民たちが麦蒔きを始めた。2022年11月26日


▼ケシュマンドは、12月目前とは思えない積雪の薄さ。子供たちは無邪気に家の手伝いに精を出す。2022年11月26日


バルカシコート事業完工!!
2020年12月に開始した本事業は2022年9月に完工し、10月5日完工式が開かれた。取水門でお祝いの飴が配られる等、会は終始和やかで楽しい雰囲気のなか行われた。2022年10月5日


▼完工式には政府の役人、村人、PMS職員が参列し、テントには工事の経過や中村医師の写真が飾られている。2022年10月5日


▼テープカットの後、無事に工事が終えられたことを神に感謝し祈りを捧げる。2022年10月5日


バラコット用水路事業、始動
PMSにとっては初めての導水方法を用いる新事業が始まった。スピンガル山脈を水源とするコット川からの取水と、川沿い崖地の湧水を利用した、約4.3kmの用水路計画。1年後の完成を目指し現地の村人や関係局役人に歓迎される中、非常に険しい崖に用水路を横断させる工事が、動きだした。


▼村人や関係局役人が集まり、バラコット事業の起工式が盛大に行われた。2022年10月16日


▼標高の高い取水部から水路はゆるやかな勾配で下り、約4.3km先で崖地の目標灌漑予定地に達する。崖上には渇ききった台地が広がっている。


▼【左上】コット川から下流の村まで引かれた既存の水路。これと同じ原理で、本計画では水量が増える夏季に川から取水する予定。
【右下】湧水の水量を調査。年間を通して取水が見込まれる川沿い崖地の湧水。川と湧水からの取水によって1本の用水路が引かれる。2022年5月30日


▼日本の技術支援チームからのアドバイスで、工事に先駆け地盤の支持力検査を行なった。堆積土からなる急勾配の崖地に水路を建設するため、安全面には最大限の注意が必要。2022年9月20日


▼用水路末端から用水路始点まで仮設道路の掘削をし、その後始点から正確な傾斜を取りながら用水路の建設が行われる。2022年12月4日


▼掘削した斜面が崩れないよう石で土留めを行う作業員たち。2022年11月27日