Top» トピックス» 掲載日:2023.2.20

アフガニスタン灌漑事業視察旅行記
(今日編)

2023年1月25日報告
PMS支援室 技術アドヴァイザー 大和則夫

アフガニスタンの山川の自然の印象はあまりにも強烈だった。年間雨量200~300mm、山に緑はなく山々は黄土色の山肌を呈し、生き物を拒絶するかのようである。大河のカーブル川・クナール川の川幅は広いところで2,000mほどもあり、堤防らしきものは無く、川の中には生活の営みは見られず自然河川そのものである。この大河を目の前にして、ここからの取水を考えた中村先生の決意、熱意、実行力に改めて敬意を表したい。
その中村先生の意思を継いで、頑張っている現地PMSスタッフの活動を紹介する。

1. バルカシコート取水施設の完成
ここでの取水施設は、中村先生亡き後の3年前から着工され昨年10月に完成した、PMS単独の初めての事業である。堰、取水門、土砂吐き、沈砂池、用水路、洪水通過橋等の施設を見て回ったが、中村先生のPMS方式を確実に継承されていることが良く判った。安定的な取水ができるようになったことで地元の人達も大喜びしていて、長老たちからのもてなしや日の丸を振るこどもたちの大歓迎を受けた。

2. バラコットの取水導水施設の建設
現在建設が進められているバラコットの用水路に関し、日本にいる時は崖錐を通す用水路の建設の難しさ、斜面の滑りや崩壊の危険性を感じていたが、聞くと見るとは大違いで、現場の斜面はナチュラルコンクリートと呼ばれる固い地盤がかなりの部分を占め、崩れる危険性は低いことが分かった。地盤の含水比が高い日本では考えられないことである。さらに盛土施工を無くして全区間切土に変更していたのは、安全性を考えるとPMSは妥当な判断をしたと評価できる。

▼崖錐堆積物(上部の地山から落ちてきた土石の堆積物)


も一つの用水路の課題は、取水量が少ない期間が長いため、漏水問題や蒸発散問題である。これに対しては日本での事例を紹介して、水路床に粘土に似たベントナイト混合土を用いたり、水路を仕切って流水の表面積を少なくする案を協議している。 その後取水地点を見たが、河川勾配が約1/30くらいで、1mを超す巨石がごろごろしていて、おまけに洪水時に取水しなければならないのである。ここでの取水方法をどうするか、今後の協議課題である。

3. カシマバード取水地点の堆積対策
カーブル川の流れの変化によって、カシマバード取水門上流に土砂堆積が進んで取水しにくくなった問題である。ここでの解決策として、三つに分かれた川の流れのうち中央の流れの上流に流水を左岸側に導く低めの堰を作ることと、左岸に堆積している土石を掘削して中央の流れに放り込むこと、さらには取水門の前に土砂吐きを設置することをPMS技術者と協議し合意が得られた。

2023.1.25 大和則夫