Top» トピックス» 掲載日:2023.2.20

アフガニスタン灌漑事業視察旅行記
(明日編)

2023年1月31日報告
PMS支援室 技術アドヴァイザー 大和則夫

中村先生は、できるだけ早くアフガニスタン国内に多くの技術者を育てて、彼らの手によるPMS方式の灌漑技術を定着させることを目標としていた。それまでに日本から援助する期間を20年程度と想定し、その一環として誰が実施しても同じ精度の灌漑施設が建設できるように「PMS方式灌漑事業ガイドライン」の作成に着手していた。先生はこころざし半ばで銃弾に倒れ、ガイドラインの完成を見ることはできなかったが、JICAや技術支援チーム及びPMS支援室の努力で、昨年日本語版・英語版・パシュトゥ語版・ダリ語版の4種類のガイドラインを完成させることができた。今後は、このガイドラインをベースにして、より多くの人達の技術向上を目指した事業を推進していくことになる。

今現在、JICA、FAO、PMSが共同でPMS方式灌漑事業を立ち上げ、PMS指導の下で、FAOや関係機関の技術者を教育育成することが協議されている。今回の視察旅行はこの事業候補地の選定も目的の一つであり、ガイドラインに従って斜め堰、取水門、土砂吐き、幹線用水路、沈砂池等を建設する適地を見て回った。数か所の候補地の中から既存取水施設では十分に水が行き渡らず、緊急性の高いゴシュタおよびヌールガルを適地として選定した。ただヌールガルは川幅を狭めて川の中に新規耕作地を確保することになっていて大いに問題である。
1. 河川を不必要に狭めてはならない、
2. やむを得ない場合は堤防高さを人々が住んでいる土地の高さより低くする、
3. 堤防は霞堤方式にすべき、
この原則は中村先生の基本的な考え方であり、是非とも踏襲してほしいと思っている。

さらに考えるべき点であるが、日本は明治時代初期にデレーケをはじめとしたオランダの技術者に、初めて系統だった河川技術や法体系を学び、その後の河川灌漑行政のスタートとなった。アフガニスタンでは、まだこのスタートラインに立てていないように思う。また、灌漑事業を進めるにあたっては、河川の状況等を把握する必要があり、下記の基礎的な資料の蓄積は必須である。(オランダ人技術者の指導でもあった)
●雨量観測所をジャララバード事務所、ダラエヌール診療所、バラコット飯場に設置し毎日9:00までの日雨量を記録する
●クナール川の基準地点をカマ橋とし、毎年の横断測量、年月1回の流量観測と洪水時の流量観測を行いH-Q曲線を作成し、毎日及び洪水時の水位・流量を記録する。
●定期的に標高の整合をとった河川の500mピッチの横断測量を行い、経年的な横断図を作成する。
●取水路での流量観測を行い、H-Q曲線を作成し、水位の読み取りから毎日の取水量を記録する。

2023.1.31 大和則夫