Top» トピックス» 掲載日:2023.2.22

1月月報

2023年2月6日報告

皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。
昨年12月から1月初めまでペシャワールとアフガニスタンの活動地に行って参りました。

村上会長以下、PMS支援室からは3名が赴きました。
ペシャワールでは中村先生が建設したPMS基地病院(現在はTMS)内に、中村先生の名前を付けた図書室がオープンしましたので式典に出席し、中村先生の活動の始まりであったペシャワールミッション病院のハンセン病棟も見ることが出来ました。
アフガニスタンの方は治安が改善してきましたので、そろそろ行けるのではないかと感じて入国しました。

中村先生がしばしば「ワーカーが多く参加していた頃とは様変わりしている」と話していましたが、その通りでPMSの活動地は用水路で干上がっていた畑が復旧してどこも青々として樹木も大きく育ち、バザールも膨れ人口も増え、至る所で子どもたちが騒いでいました。マルワリード用水路建設時期、排水がうまくいかず湿地化している畑が既存の水路流域にたくさんありましたが、そのような場所もすっかり耕作されていました。PMSの昨年の調査で、これまでに建設、改修した堰・用水路流域の安定灌漑地が約23,000ヘクタールになっていると報告がありました。

この現地訪問では、黙々と診療を継続しているダラエヌール診療所、広大なガンベリ農場、そして、次年度の灌漑施設の候補地3カ所をPMS技術アドバイザーの大和さんと一緒に視察しました。

治安情勢の悪化のため全てのワーカーが日本に帰国して以来、私は12年ぶりの現地訪問で、PMS支援室の2名は初めてのアフガニスタン訪問でした。行く所々で語りつくせないほど見聞きし、訪問の最後の方ではPMSのルーティンワークに入ることもできました。訪問の写真を載せていますが、今後も随時お伝えして参ります。

今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
PMS支援室一同

▼1月26日までのクナール河の水位グラフ。水位が例年より高く推移し、未だに堰上を越流している箇所もある
Kunar River HydroGraph(Flow=CUM/sec)


▼洪水期を経てシェイワ堰上流に堆積した土砂。PMSが重機による除去作業を開始した。 2023年1月14日


▼シェイワ堰。除去した土砂を、堰を接続する砂州の補強に使用。おなじみ再利用の光景。 2023年1月14日


▼1月23日に作業終了。堰の補修など緻密な作業はPMSが手助けするが、今回のような単純な土砂の除去は本来受益者(村人)が協力して自発的に行うべき作業。今後はそのようなシステムづくりが課題。PMSが取水口の改修工事をする前は、村人たちが総出で浚渫作業を行っていた。2023年1月23日


▼昨年末のミラーン堰。堰の最先端、440m地点の砂州3が一部流失。また土砂堆積により取水門への河道が狭められている。取水口前は池のような状態となり完全に静水化。鏡のようにきれいに山や柳を映している。2022年12月25日


▼昨年8月の洪水で、もともと右岸から伸びていた堆積物に連続して膨大な砂利堆積が発生。その先端部。 幸い現在十分量の取水が出来ているため、自然の力で成ったこの形状をしばらく静観することに。2023年1月1日


▼短径約25cm、長径は40cmはあろうかという漬物石代の巨石がごろごろしている。水の威力が窺い知れる。2023年1月1日


▼ミラーン用水路内の水位。約25~30cm。 2023年1月15日


▼1月22日、現地で降雪があったとの朗報。ケシュマンドもようやく冬らしい装い。2023年1月26日


▼雪模様のダラエヌール渓谷。2023年1月28日


▼バラコット用水路事業
険しい崖を切り拓き、4.3kmの交通路がもうすぐ開通。写真は取水点より1.1km地点。2023年1月17日


▼コット郡はPMSの拠点ジャララバードから車で2~3時間。2021年の政変以降に治安が安定し、郡をまたいでの活動が可能となった。
スピンガル山脈の雪解け水からなる小河川コット川に沿って、ラガールジューイ村を含め3つの集落が形成されている。本計画の灌漑地はこれらの村人が利用する予定。長年の干ばつと戦乱によって、この地域の人々は非常に貧しく、十分な畑も食べ物も職も不足している。
水量が増える夏季に川から取水し、途中で湧水を拾いながら導水する設計。湧水エリアでは年間を通しての取水が見込まれる。2022年10月中旬に用水路末端より掘削が開始され、2023年2月中には取水点に到達予定。その後、用水路建設に向けた二次掘削が始まる。


▼取水点まで1Kmを切った先に見えてくる湧水エリア。この湧水の恵みを利用する用水路計画であるが、工事段階では非常に難所である。
水分を多量に含んだ地面に苦戦し、何日も川から運んで来た砂利で土を置換する作業が続けられている。2023年1月23日


▼湧水エリアを越えて、取水点までもう少し。はるか深い崖下にあったコット川が、眼下にせまってきた。
低水位期である冬場は全体的に涸れているが、いくつかの水筋は残っている。2023年1月30日


▼日本が寒波に襲われた1月下旬。アフガニスタン東部の地域も急激な雪に見舞われた。この日は重機ドライバーを除き、手作業の職人達は休みとなった。2023年1月22日


▼この冬、12年ぶりにペシャワール会からの視察訪問が実現した。村上会長、技術支援チームの大和技師、PMS支援室のメンバーらが(当時の掘削先端、取水部より1.6Km地点まで)片道約3kmの交通路を歩き、工事状況を確認。2022年12月24日


▼現地からの写真でお馴染みの風景ではあるが、実際に現地に行くとそのスケールはケタ違いだ。取水部より3~4km区間。重機による交通路の整備後、手作業の石積みによって崖の土留めが進んでいる。今後、取水部側から末端側へ折り返す形で交通路の二次掘削が行われ、正確なレベル出しがされる。そこに用水路を引いていくという流れ。2022年12月24日


▼対岸(コット川右岸側)のラガールジューイ村より。正面に見える崖中腹を横切るのが掘削中の交通路。ここを用水路が横断する事になる。
遠くから見て、改めて工事の規模に圧倒される。2022年12月27日


▼村にある小麦挽き小屋。コット川からの取水によるジューイ(伝統的な小水路)が水車を動かし、小麦を挽く。バラコット用水路の計画段階ではPMSが村人から聞き取りを行い、このような水車の利用状況は取水量計算上大いに参考になった。2022年12月27日


▼堰建設予定地付近で取水方法についての協議。いつもは月に1~2回、遠く離れた日本とアフガンでオンラインでの会議を行っているが、顔を突き合わせての話し合いだと密度が全く違う。急勾配の河川で、鉄砲水や岩石を水路に引き込まない為に十分な検討が必要。2022年12月27日


▼工事に携わっているPMS職員達とともに現場で記念撮影。2022年12月24日


▼工事現場近くの宿舎兼現場事務所にて。右からファヒーム技師、ディダール技師、PMS支援室の籾井。中村医師逝去後に会議の為インドで集まった時以来、3年ぶりのスリーショット。2022年12月24日


▼日本からの視察団の情報を聞きつけ、村の長老たちが挨拶に訪れた。PMSの仕事に感謝を述べつつ、ペシャワール会のメンバーを前に、ドクター サーブ ナカムラへの想いを込めた詩を詠む一幕。2022年12月24日


▼PMSガンベリ農場では、収穫したサツマイモを職員や作業員たちが焼き芋にして食した。焼き芋は以前中村医師が職員たちへ勧めていた食べ方で、彼らも気に入ったようだった。皆自宅の畑に植えたいと、競ってツルをもらう約束をした。2022年11月16日


▼ガンベリ農場のサツマイモ畑は、日本と気候の異なる現地で最適な栽培時期を探るため5月、7月、9月、10月と時期をずらして植えられた。ここは9月にツルを植えた畑で、低温障害を起こしている。2022年12月28日


▼時季外れのサツマイモ畑には稲わらやビニールを被せるなどして、寒さ対策も試みられている。2022年12月28日


▼サツマイモ畑の野ネズミ対策として放たれているガンベリ農場の猫。2022年12月25日


▼小麦畑。アフガニスタンではばらまき栽培が一般的だが、ガンベリ農場ではいくつかの栽培方法が試験的に行われており、成長や収量を観察している。
上:2023年1月26日
下:2022年12月25日


▼ガンベリ農場、冬の収穫物あれこれ。この他にもタマネギや大根、カブ、ほうれんそう、ニンニクなど多種の冬野菜が栽培されている。


▼農場内にある黒砂糖(サトウキビ)の精製工房。コロナウイルス蔓延などの影響で停止していたが、今年は日本からの現地訪問を機に、約3年ぶりに一時再開された。2023年12月28日


▼出来立てアツアツの黒砂糖を試食するPMS職員たち。ガンベリでの黒砂糖の生産は久しぶりで、喜びひとしお。PMS支援室も作業に参加した。2023年12月28日


▼ナツメヤシ園で農業責任者アジュマルジャンから説明を受けるPMS支援室。ナツメヤシは成長すると脇芽が出てくるため、株分けを行い、本数を増やすとのこと。2023年12月28日


▼ガンベリ記念公園で昼食をとるペシャワール会メンバーとPMS職員たち。ドクターサーブ ナカムラ記念塔の前で、ゆったりと穏やかな時を過ごした。2023年12月28日