Top» 活動レポート» 掲載日:2023.11.1

8・9月月報

バラコット事業 貯水池造成に集中
新規用水路建設地の調査
マルワリード用水路改修工事の準備開始


皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。
9月中旬からジャララバードに滞在しております。7月の滞在と違い陽ざしはやわらぎ、朝晩はやや冷えるようになってきました。アフガニスタンは政府の通達により9月23日から冬の勤務時間に変更され、1時間短縮され昼食とお祈りの時間を含め7時間労働となりました。

10月7日に発生しその後も余震が断続的に続いているヘラート州の地震では、多くの方々に心配をして頂いております。アフガニスタン政府は全州に地震被災支援委員会を設立し、各州に支援物資受付所が置かれました。私たちも何かせずにはおれなくなりジャララバード市内のバザールの一角にテントをはり支援物資を募っていたところに僅かながら寄付をしてきました。テントの奥の方には衣服が詰込まれた大小のプラスティック袋が山のように積み上げられており、被災地に想いを馳せている人々が多くいることを感じました。国際的な支援も始められています。日本政府からは大使館の岡田大使が被災地を訪問し支援が直接届けられたことが報道され、PMSの職員たちは特別に嬉しそうに話していました。

また彼らの話しによると、ヘラート州は地震を体験したことが無く家屋が揺れに弱い造りであったため、今回の地震では更地になったかのように完全に崩壊してしまったとのこと。
ペシャワール会から被災地への支援として10万ドルがジャララバードに届きました。ジア医師を中心に支援策を練っているところですが、これから迎える冬を考えると、一刻も早く寒さをしのげ温かい食べ物が振舞われることを願うばかりです。

バラコット事業―工期を6ヶ月延長
8月の月報で報告をしていた、用水路や用水路壁部への亀裂発生や、7月25日の集中豪雨時の落石による被害、交通路の修復等は順調に進められました。用水路床面の亀裂部では基礎工事からやり直し、更に床面に施すソイルセメントライニング工の材料を赤土に変更し改修工事は終了しています。その後の亀裂は見られておりません。

7月の豪雨でコット川に鉄砲水が流れ下った時に護岸堤が流失した部分の修復工事がやっと始められています。やっとと書きましたが、PMSではバラコット用水路以外にもクナール河沿いにPMSが建設した10カ所の取水設備の維持管理(補修)、来年の灌漑事業地の調査で多忙を極めているのです。加えてFAO(国連食糧農業機関)による「PMS灌漑方式」の普及計画を目的に、取水困難に陥っているヌールガル用水路の改修工事がJICAで決定され、PMSは技術伝達の役割でFAOと協働するため、それに向けてのオンライン会議や予算書作成等々のやり取りに追われていたのです。

バラコットの計画は小規模な用水路建設との位置づけで工期を1年と設定していました。しかし、7月の集中豪雨による被害や予想もしていなかった用水路床面の亀裂の発生などが重なり、職員たちは焦りを感じていたのでしょう。7月に、彼らから現場作業を1時間増やしたいとの希望がありました。
その後住民から、「用水路の最終地に建設される貯水池から農地まで距離があるため、池からの分水路を建設して欲しい」との要望がありました。それを受け、工期を6ヶ月延ばし完工を来年3月として州政府への手続きが行われました。10月から始まるマルワリード改修計画では、取水門の増設、コンクリート製の土砂吐き兼可動堰の建設等が控えていたので、PMSが落ち着いて工事に取り掛かれるので内心ほっと致しました。現在工事に向け資機材の準備が着々と進められています。

ガンベリ農園
9月末には稲刈りが始まっていました。PMSのガンベリ農園だけではなくベスード、シェイワ郡でも一面に稲やトウモロコシ、サトウキビが実り現在も周辺の農地で刈取りが行われています。
ガンベリ農園の一角で試験栽培されているさつまいもは、ほど良い大きさの実がつきました。アジュマル責任者がツルを配った人たちに成果を尋ねているところですので、結果を楽しみに待ちたいと思います。また、中村先生がとても楽しみにしておられたデーツ(ナツメヤシ)も昨年から鈴なり状に実り、今年は乾燥と加工に成功しバザールで出回るのと同じように出来上がっています。

昨年12月から活動地へ赴き今回は4回目の滞在となり、その都度変化を感じているのでその一つを記したいと思います。12月と4月には、車両が行き交う道路の真ん中に座り込んで物乞いをしている女性の多さに驚きました。ブルカを着用して子供を抱いていたり、幼児が、1~2人一緒に座ったり寝そべっている場所もあります。PMSの事務所から大通りに出るまで500mほどありますが、その間に10人程の女性が間隔をとって座っているのです。車両の交通量が多いのですが怒鳴る人も、お金を恵む人も見かけたことがありません。きくと「物乞いビジネス」で一定の時間になると迎えの車(胴元)がきて彼女たちを引き揚げさせるそうです。7月にはその数がぐっと減り、今回では事務所からの路上では一人も見かけず、マルワリード用水路に向かう国道にも3人ほどしか見かけていません。政府職員が当該女性たち一人ひとりの家庭調査を行い、未亡人や夫が病気で働けない等で本当に貧しいと判明した家庭には最低限の生活費を毎月支給し、道路に座り込むことを禁止したのだそうです。

来月初旬に帰国を予定しています。
皆さまにお会いできる日を楽しみにしております。お元気でお過ごしください。
PMS支援室一同 2023年10月19日


▼9月21日までのクナール河の水位グラフ(赤線)。昨年8月末には大洪水が襲来し、異常に増水していた(水色線)。この時期、隣国パキスタンの水害が日本の報道でも大きく取り上げられていたのは記憶に新しい。今年は例年に近い形で8月後半には水位が下がり始めているが、例年よりかなり多い水量を保ちながら推移している。冬の低水位期に向けての動きを、引き続き注視していく必要がある。
KUNAR RIVER HYDROGRAPH (Flow = CUM/sec)


▼今夏の増水期はPMSが手掛けてきた取水設備においては昨年のように大きな被害はなかったが、7月の洪水で一部損壊のあったミラーンの水制の補修に続き、マルワリードⅡ、カシコートで重機を投入し護岸・水制の復旧が行われた。写真はカシコート(取水口より下流側)で、近くの山から運んだ巨礫を積み重ねて強固な護岸線を造成している。2023年8月21日


▼カシマバード堰。8月上旬に行なった、流路確保の為の掘削と取水門前の土砂除去によって取水が可能となっている。しかしカーブル河は相変わらずの低水位と見られ(恐らく上流ダムの水位調整による) 、今後の水位観察を続けていきたい。2023年9月17日


▼工期が6ヵ月延長されたバラコット事業。工事自体は着々と進んでおり、クラックが入って造り直した箇所も含め、用水路4.3kmの全体像が形になっている。2023年9月25日


▼バラコット用水路。崖法尻には赤土を充填し、大雨時にそこに溜まった水は、水抜き孔を通って用水路内に流れ込む仕組み。水抜き孔が詰まらないよう、石積みで保護している。用水路下の土壌に含まれているかもしれない頁岩(けつがん)が、浸透水によって軟化→地盤沈下を起こさないようにする為の措置。2023年9月21日


▼現在の主な作業は貯水池造成。用水路末端(4.3km地点)から水を送られる小貯水池。灌漑用水はここから送水される。2023年9月25日


▼造成中の大貯水池。コット河の増水や雨水を貯水する。こちらも灌漑利用が期待される。2023年9月26日


▼ガンベリ農場、収穫の秋。レモンの収穫をする人々。PMSで収穫される作物は競売にかけられ、購入者が自分たちで収穫をする。親族を集めてやってくることが多いため、収穫時は子どもや女性の姿も多く見られる。2023年8月21日


▼レモン袋詰め風景。現地では一般的な単位で、1袋は1マン=7kg。2023年8月21日


▼2年目の実りを迎えたデーツ(ナツメヤシ)園。オスとメスの木があり、メスの木にのみ実をつける。2023年7月15日


▼収穫したあと実を外し、乾燥デーツを作る。2023年9月3日


▼デーツ乾燥させる前に茹でる。初めて実をつけた昨年はこの工程を経ず、乾燥の過程で実が悪くなってしまったそうだ。2023年9月3日


▼完成したデーツはPMS職員たちに振る舞われている。現地滞在中のPMS支援室員らも食べた。2023年9月27日


▼6月中旬に植えたサツマイモの成長具合を確認する様子。今年は30ヵ所にツルを配り、ガンベリ農場では400m2で栽培を行っている。2023年9月27日
▼PMS職員によるサツマイモチップス。PMS職員たちにも好評のよう。