2008年度の農業事業報告
及び2009年度の計画

ペシャワール会現地代表・PMS(ペシャワール会医療サービス)総院長
中村哲
ペシャワール会報100号より
(2009年7月15日)

O分水路(シギ分水路)の末端近くの砂地で初めての収穫となったスイカ畑に集まった
ダラエヌール診療所職員たち


農業関係

 2008年8月26日の伊藤和也君の事件で、日本人ワーカーの退去は早まったが、共に働いた農民たちが作業を継続している。間もなく大がかりな開拓事業が始まると、それまでの成果を大々的に生かすことができよう。食糧生産の向上を本格化、水路事業と事実上一体化されようとしている(6年間の農業事業については、この秋高橋修氏の編集による詳細な「報告集」が石風社より刊行される)。



自立定着村 居住区。各戸区画壁建設中
2009年6月
自立定着村の建設

水路建設事業は小さな民間団体にとっては、大きな仕事であったが、2009年7月を以って完了する。
 しかし、これで終わるわけではない。15万人が生活する用水路の保全は、世代から世代へ、長い年月がかかる。マルワリード用水路建設の主役は近隣農民であり、改修の実を心得ている。幸いと言うべきか、不幸にと言うべきか、水路の恩恵に浴さなかった人々は、まる6年間現場監督や作業員を務めてきた。彼らをガンベリ沙漠開拓に充(あ)てて自活させ、かつ水路保全の役を担ってもらうという構想である。出来あがる直前のマルワリード用水路には、彼らの強い愛着がある。これまでと同様、その送る水で、文字通り生活の糧を得るなら、喜んで役に就くだろう。

 これは2007年度からの構想で、2008年12月、水路開通の見通しが立つや、直ちに居住地の建設が開始された。現在118家族、約1200名分の住居を建設中である。募集は水路が開通してから行い、早ければ一部の土地にトウモロコシの作付けが開始される。
なお、開拓地は250ヘクタールを確保、ダラエヌール試験農場の実戦版と考えて差し支えない。現在、漠々たる荒野であるが、これが緑の田園に変わるのを疑う職員はいない。


2009年度の計画

 事業は基本的にこれまでの連続で、目新しいものはない。年度報告に述べた。医療面ではハンセン病診療の場の確保が懸案で、水路事業は自立定着村の確立が大きな目標である。

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