ペシャワール会 現地報告No.100
「 カブールの復興進まず」

現地連絡員 川口拓真
2002年06月26日(水)

マラリアシーズン到来

六月一日より、アフガニスタン東部三診療所とカブールプロジェクトのフィルードワークに、二週間同行した。スタッフ交替は無事終了。本格的な夏季が近づき、マラリアシーズンが到来している。五月に滞在していたスタッフの報告によると、ダラエヌールとダラエピーチ各診療所では、例年並みにマラリア患者が増えていく模様。

ダラエピーチ診療所の検査技師の報告によると、「検査を受けマラリア患者と診断された数は、五月が170名。昨年は150名。検査を受けず症状だけで診断され投薬を受けた患者は、その数を超える。」

私が滞在した二日間だけで、二名の子供と一人の女性が日没後の診療所に、マラリアと疑われる症状で運び込まれた。

難民帰郷による農村の人口増加。昨年を上回る収穫と、次期に向けての水田の増加。さまざまな要因が重なると、過去ダラエヌールでの「マラリアの恐怖」が、一、二年後危惧されるのではないかと感じた。

私の心象風景の一つである「八女の棚田」に似た景色が、ダラエピーチ渓谷一帯に広がっている。そんなことを思い出しながら、収穫で忙しい人々の脇を駆け抜け一路ヌーリスタンへと向かった。


新診療所
ダラエピーチとヌーリスタンワマ新診療所の建設現場は、現場責任者スタッフとの連絡不足により一時工事中断、設計変更などがあり数日間作業が進んでいなかった模様。ペシャワールから派遣されたエンジニアによって、工事再開と変更が進められている。

ダラエヌールの新しい診療所の建設工事は基礎工事が終わり、壁や柱を建てる作業に取り掛かろうとしている。ダラエピーチも基礎工事完了間近。ヌーリスタンワマは新診療所のすぐ側に川が流れており、堤防側壁の工事に時間が掛かっているようで、基礎工事と共に継続中。


カブール
六月五日、カブールに到着した。ロヤ・ジルガ開催前の首都は、国際治安支援部隊(ISAF)とアフガニスタン警察の警戒が非常に厳しかった。市内は特に混乱はなく、臨時診療所とワークショップ等のプロジェクトは、これまでどおりに仕事が行われていた。

カブールに向かう道中、パキスタン側から来る難民帰還の渋滞の列と重なった。ロヤ・ジルガ開催を前に、多くの難民がカブールに帰還していた。市内は日増しに人々が集まっているようだった。

「ロヤ・ジルガが終わり、新しい政府が樹立すると、より多くの難民が帰還するだろう。」とアフガン人スタッフの一人が言っていた。

しかし、市内は依然として廃墟が目立つ。家賃高騰の影響から、住む家のない人々が大勢いる状態だ。ロヤ・ジルガ会場前の道路を、ドイツのNGOが補修を急いでいたぐらいで、カブール市内での目立った復興活動は進んでいないと思われる。一月の目黒さんの報告で、「廃墟の街の印象」とあった。それから五ヶ月たった現在でも、依然として、「廃墟の街」と私も同じような印象を受けている。

また、援助団体集中による物価上昇の影響から、食料や生活条件など物質的にはなはだしく欠乏している人々が大勢いる。高級レストランや国際援助団体のオフィスの前で、貧しい人々が物乞いをする。UNや何とかNGOなどの派手なロゴを付けた車が、市内で列を作って移動する様子は、復興博覧祭のパレードでも見ているかのように感じた。

政治の安定は不可欠だが、激しい貧富の差に苦しむ貧しい人々の安定が優先されるべきだ。
緊急ロヤ・ジルガにおいて、彼らの安定が約束される緊急な議論がなされたのだろうか。



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