アフガンいのちの基金No.66
「マラリア診療報告」

PMS看護部長 藤田千代子
2001年12月15日(土)

12月13日は、アフガニスタンからカブールクリニックや食糧配給作業を終えた者、ダラエヌール、ダラエピーチ、ワマクリニック、そしてニングラハル州へ派遣していたマラリア診療チームのスタッフ達が無事に帰ってきました。以下はカブールから帰って来たドクターの報告です。

 カブール診療所の半タリバン政府管轄(スタッフは政府職員。タリバーンが財政困難のためPMSが給料と薬品を支給して診療活動を続行していた)だった2つのクリニック(チェルストン、ラフマンミナ)のタリバンの医師1名が北部同盟の医師に交代させられただけで、他のスタッフはそのまま活動を続けている。最近では5つの各クリニックの外来数が増加していて、どのクリニックも1日100名以上の診療をしている。カブールではロシア、フランス、イタリア、インド、トルコ、カナダがそれぞれ大規模に医療活動を準備中もしくは開始している。他の機関の援助物資がカブールへ輸送され始めておりジャララバード、カブール間の危険は遠のき護衛が付かなくても無事通過しており、カブールではWFP(世界食糧計画)やNGOの食糧配給も始まっている。

 ジャララバードでPMSのマラリア診療チームと行動を共にし13日にペシャワールへ帰って来た日本人の方の話では、PMSのマラリア診療2グループはシェイワ地区で1日に約120人、150人診療をしていた、マラリアの患者は少なかった。

 サルシャヒキャンプについて。避難民の5割はカブールとバグラムからの避難民であり、彼らは新政権が安定し、寒さが和らぐまではキャンプに留まるつもりであると話している、PMS以外の食料配給は行われていない。テントは何処かの国から100張りほど寄付があったが、全く不足しており手作りのテントで生活している避難民が多い。医療状況は数人の医者が診療に来ているが、約21,000人の避難民に対しては足りない(キャンプの責任者の話)。また、このキャンプの横を多くの支援物資の輸送車が通り過ぎて行き、まるでここのキャンプの事は忘れられているような感じがした。

 ジャララバードには100人以上の外国人報道関係者がいた、報道関係者以外の外国人は見かけなかった。カブールヘの輸送は可能、ジャララバードから支援物資がカブールヘ輸送されるのを見た。サルシャヒキャンプ以外の地区は表面的には落ち着いているように見えたが、旱魃がひどく作物の取れていない地域が危険な感じを受けた。

 イード(断食明けの大祭)後の22日アフガニスタンに暫定政権が樹立されるまで食糧配給計画と水源確保活動はじっと様子を観察している所です。アフガニスタン内のクリニックは通常と変わらずこれまで診療をを続けていて、イード休暇が終わり次第診療チームは各クリニックへ向かいます。明日16日(日)からイード休暇が始まります。

 今日は日本の師走を思わせるような忙しさでしたがスタッフ達は皆嬉しそうで、就業後お互いに抱擁し合いながらイードの祝いとしばらくの別れの挨拶を交わしていました。「イードムバーラック」―イードおめでとう― と口頭でしか言えず握手も出来ないこんな時は、私も男性だったらよかったな、と感じる一瞬です。


カマ地区及びシェイワ地区におけるマラリア調査プログラム報告
PMS (ペシャワール会医療サービス)


患者総数 2,565人
マラリア患者数 142人

(マラリア患者数の内訳)
塗沫標本の顕微鏡検査でマラリア原虫陽性 熱帯熱(悪性)マラリア:P.F 16症例
三日熱マラリア:P.V 6症例
臨床所見でマラリアと診断された症例    120症例


(他の一般疾病)
1. 栄養不良 (5歳以下の幼児の60〜70%)
2. 呼吸器疾患
3. 胃腸疾患(下痢 + 寄生虫症 + 消化器官疾患)
4. その他
作成:アミン医師

(訳者注)
P.F =Plasmodium falciparum 熱帯熱マラリア原虫。重症な合併症を起こしやすく死亡率が高い
P.V =Plasmodium vivax 三日熱マラリア原虫。



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
No.65を読む  ○報告一覧へ○  No.67を読む
ホームへ 連絡先 入会案内