アフガンいのちの基金No.92
「女性のためのワークショップ始まる」
2002年03月24日(日)

待ちに待ったワークショップが始まりました。その報告です(中村 哲)

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カーブルの報告です。

 ワークショップが開始されて1週間ほどたちます。トレーナー、訓練生共に、熱心に作業を進めています。 訓練生は、寡婦・あるいは父親を持たない者、経済状況の厳しさ、をポイントに、12歳〜35歳の16人が選考されました。夫が病気、失業中、という女性も含まれています。採用された16人の訓練生のうち、4人はナウローズ(アフガニスタンの新年)後に再開される 学校に通うことになったので、ワークショップを離れることになりました。しかし、既に新たな訓練生が決まり、作業を始めています。 トレーナーは裁縫技術、読み書き能力、人柄等をポイントに選考し、20代から40代の8人が採用されました。 1ヶ月の試用期間を経て、正式採用される予定です。

  朝の8時、PMSの迎えの車でトレーナーと訓練生がワークショップに集まります。ワークショップは、PMS・カーブルオフィスとして使っている建物の1階に手を加えて利用しています。 訓練生の中には、裁縫が全く初めてという女性もいて、今は皆、手縫いで裁縫の基礎をひたすら練習しています。トレーナーは、空いた時間に、8台のミシンを使って子供服やテーブルクロスなどを作っています。8台のうち2台は、刺繍のできるミシンを購入しました。 ワークショップは1時半までですが、最後の30分は、訓練生を対象に、読み書き講座にあてられます。 訓練生の中には読み書きは全くダメ、という女性もいて、これから テイラーとしてしっかりした仕事をしていくには、読み書きが必要、 という判断からです。トレーナーの一人が指導をし、初日はアラビア文字のイロハから始めていました。
 訓練生の最年少、12歳のシャヒカは、昨年10月の空爆で父親を亡くしました。家族は彼女を含め5人で、母親、7歳の弟、4歳と5歳の妹がいます。 母親は洗濯の仕事をしていますが、1日約15ルピーの収入で、とてもやっていけない状況とのことです。母親は彼女には非常に期待しているようで、早くここで技術を身につけ、家族が食べていけるようにがんばれ、と常に言い聞かせています。自分が家族を養わねばならないことは明らかですが、まもなく再開される学校の話になると、シャヒカは顔を伏せて、言葉少なになってしまいました。しかし、「学校には行きたいが、このワークショップで働けるのは嬉しい。ここで訓練して、いつかテイラーになりたい」と話していました。

  トレーナーの40代の女性は、9年前、夫を内戦で亡くしました。現在は、10代の5人の子どもを彼女が養っています。このワークショップに来る前は、裁縫の内職をしていました。遠縁の親戚がたまに援助をしてくれていましたが、毎日のナンを買うので精一杯の生活だったようです。 20代のトレーナーの女性の夫は、3年前にイランに出稼ぎに行ったまま 音信不通となりました。今までは、彼女がやはり内職でキルトの布団などを作り、子どもを養ってきました。 子どもは10歳の男の子を頭に6人いますが、「子どもたちに働かせるわけにはいかない、長男は学校に通わせるつもりなので、私が稼ぐしかない」 という状況です。 子どもの1人は昨年の空爆で手を失い、目にも異常が残り、とても困っているが、 ここで働いて何とかやっていく、と語っていました。

 13歳の訓練生は、父を3年前、病気で亡くしました。 その後は、15歳の長男が靴磨きをして家族を支えていました。 家族はその他、母親と3人の妹がいます。兄は今も靴磨きをしているが、近々学校へ通う予定なので、収入が減り、彼女も働かなければいけなくなりました。

 スーパーバイザーのDr.サリハは 「今のところ、ワークショップは順調にいっている。慌てる必要はない、まだ販路は確保していないが、今はとにかく技術を身に付けることと、ここでの仕事に慣れることが大切」と言っていました。

注:ワークショップ (緑の大地計画参照)
現地広報担当 大月啓介
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女性のためのワークショップ (カブール)

 カブールは女性や子供の乞食があふれている。その多くは、1)内戦と空爆で夫や男手を失った家庭、2)旱魃による地方からの避難民で自活手段のない者で、多くは内心屈辱的であろう。
 国際的に非難が集中した「ブルカ」を脱ぐ女性はほとんどいない。彼女らにとっては、「女性の人権」や「自由とデモクラシー」よりも、その日の胃袋を満たす方が、はるかに緊急なのである。物乞いをするブルカの女性たちの傍らでは、欧米・日本のNGO、国連機関の豪勢な事務所が立ち並び、ま新しい車が往来し、銃座に砲口を備えた国際治安支援部隊の装甲車がパトロールしている。白人の兵士たちが警戒とも恐怖ともつかぬ、異様に鋭い目つきで群集を眺めている。何かが狂っている。緊急支援を掲げる団体でさえ、なぜ動きがつかないのか疑問である。
 PMSでは、主にこれら寡婦たちを対象に、手に職を与えて自活の道を開かせる試みを直ちに行う。


実施期間 2002年3月初旬から2年間。成功の兆しあれば、さらに拡大。
訓練期間 各被訓練者3ヶ月
方法 市内にワークショップの場所を設け、1)ミシンを使って日常生活に必要な衣類、布団、カーテンなどの生産、2)手織りカーペット生産、3)庶民の使うベッドの生産、4)手作り石鹸の生産、などを行わせ、日当を給付する。
 これらはカブールの主婦たちが日常的に行っているので、多少の技術指導を行えば容易である。卸販売ルートはPMSが準備確保して、品質を選び、利潤があれば生産者に還元する。これは直ちに実行できる。貸与されたミシンなどの道具は、訓練後に供与して自活を図らせる。衣類やカーペット、布団などの生産は容易である。
初期投資
維持費用
訓練所1ヶ所につき、投資を含めて年間350万円
約200名前後の女性たちが手に職をつけることができる。


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