技術の限界は自然の力で補う
灌漑用水路建設・植樹担当 藤澤文武
ペシャワール会報95号より
(2008年04月01日発行)
水遊びをする子供たち/H2水門辺りにて
さて、ここでひとつ自分に疑問が浮かび上がりました。それはずばり、

「植樹班とは何か?」

これはもう言ってしまえば、木を植える班です(そのまんまですね)。当の名目としては、植樹をすることで灌漑用水路の護岸、水路の決壊などを保護すること(土手の法止め等)が名目であり、簡単に訳せば木を植えることで水路を末永く守ってもらうことだと認知しております。簡単に説明してしまいましたが、「水路を末永く守ってもらう」、ここが重要なポイントです。そこで少し例を挙げてみます。

用水路にはさまざまな樹木が植えられていますが、その中でもPMSでもっともポピュラーでもっとも多く植えられているのが柳です。柳は主に水路沿いの蛇籠の上部に挿し木で植えます。蛇籠は中に大量の平たい石が敷き詰められていて、それを囲み強固にするのが役目です。しかし蛇籠で使われるワイヤーは金属製であり、いずれは酸化して役目を終えます。そしてその時こそ、柳の出番であります。柳の根は細かく伸びて石と石の隙間を行き、いずれその根が蛇籠の石全体に行き渡れば、それが蛇籠のワイヤー代わりとなります。そして籠が果てた後も、その役目は引き継がれて、こうして水路を末永く守ってもらう。これが植樹班のポイントのひとつでもあります。以上を踏まえて考えると、自分はある言葉に行き着きます。

それは、

「何事も自然でできることは自然で対応する」。

これは中村先生の言葉・方針であります。木には農薬や殺虫剤の類は一切使いません。天敵(自然)にまかせるのです。ですのでこの言葉で植樹班の全てが当てはまるような気がします。用水路を自然な形にする。これが植樹班の役割だと私は思います。