定めなきもの
PMSワーカー M.S.
荷物満載のサイケデリックなトラック!
5月末にスタッフハウスを引っ越しました。古い宿舎は病院まで車で5分ぐらいの近くでしたが、今の宿舎は車で15分ぐらいとだいぶ遠くなりました。

遠くなったとはいえ、ドライバーに送迎してもらっているのでなんら問題はありません。むしろ通勤時間を楽しむというメリットができました。
宿舎を出て暫くは高級住宅街を通ります。
日本では考えられないような大邸宅群です。どんな人が住んでいるかは外からは全く窺えません。1階は高い塀でガードされ、2階もベランダの周りには大概ちょっとした塀や幕を張り巡らし、ガラス窓も外の光を反射し中の様子が見えることはありません。しかしカラフルで一戸一戸建築デザインが異なるので観賞していてまだ飽きはきません。
涸れ河の橋を渡った途端、風景はガラリと一変します。
高級住宅はぴたりとなくなり、緑豊かな畑が両側に広がります。点在する家も土・煉瓦つくりの一般的なものです。行き交う人の姿はチラホラですが、道が立派なので大型のトラックが頻繁に行き来しています。

荷物満載のトラックpart.U
サイケデリックなペイントを施した車体に、荷を満載にしたトラックがゆっくり走って行きます。時には満載以上、上に、後ろに車体を伸ばし、その上に乗せられる以上の荷を積み上げてゆっくり進んでいくのです。最大積載量などという限界を遥かに超えたその姿には畏敬の念さえ覚えます。
最大積載量などという定めはないのでしょう、ね。きっと。

そして広い道路を右折すると、庶民の住宅、商店街とおぼしき道に入ります。人、馬車、ロバ車、バイク、自転車、小型バスなどの往来がどんどん増えていきます。ペシャワール空港の側の三叉路は交通の要所のようです。通勤、通学、商売人で道はひしめき合っています。

小型バスの中には人がぎっしり。そして屋根の上にも人が座れるようになっています。後ろには屋根に登るための梯子も掛けられています。人が乗車中でもバスは発車し、青年、少年たちは走り始めたバスに飛びつき、あっという間に屋根に駆け上ります。次ぎの者は梯子を掴み、バスは中も上も後ろもぎっしりと人を乗せて走っています。
定数というのは、ないのでしょうね。きっと。

荷物満載トラックpart.3
自転車も負けてはいません。荷台に棒を渡して左右バランスよく荷をぎっしりぶら下げ、積み上げ、舗装もされていない道を悠然と走っていきます。お父さんは、二・三歳の小さな子供を前に、少し大きな子は後ろに一人二人と乗せ、頑張るという風もなくペダルを漕いでいます。子供たちも必死でしがみついているという風でもありません。

スタッフハウスの引越しの時には、病院のスタッフに大変お世話になりました。こちらの家具は大変重く、何も入っていないちょっとした棚でさえ動かすのは大変で、私には持ち上げることなどとてもできません。どうしてこれらの家具を運ぶのだろう気が遠くなる思いでしたが、彼等の協力でほぼ1日で荷物の移動は終わり感謝、感謝です。

レッカーで移動中…
その時、彼等が見せてくれたパワーには感動を覚えました。あのパワーは、趣味や余暇で鍛えたのではなく、子供の頃から生活、時には命をかけて鍛えてきた蓄積だったのでしょうね。

日本の生活のように自由に外を出歩いたり、ぶらっと買い物にでかけたりということは、ままなりません。その分この通勤時間に町が、路行く人々が、動物が、季節が見せてくれる風景、表情はとても貴重で楽しい時間です。
日本への移動には(パキスタン・インターナショナル・エアライン)を利用することが多いのですが、飛行機に定数は勿論あります。この10時間はただ時の過ぎるのを待つだけの時間ですが、時には定刻に到着するPIAには感謝しなければ。