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アフガン山岳部にクリニックを建設

中村哲
2003年5月28日(水)琉球新報掲載
▲沖縄ピースクリニック (別名=ダラエピーチ診療所) の外観

第1回沖縄平和賞を受賞した非政府組織「ペシャワール会」(事務局・福岡市)が、アフガニスタンで建設を進めている診療所「オキナワ・ピース・クリニック」がほぼ完成し、6月にも診療を開始する予定だ。気候や治安の関係から、開所式は9月か10月になりそうだ。

ペシャワール会広報担当理事の福元満治さんによると、タリバン政権崩壊後のアフガニスタンは、治安の悪化や物価の高騰で、不安定な状態が続いている。平和賞授賞式に出席した現地代表の中村哲医師は、干ばつで枯れた国土で農業が再生できるよう、かんがい用水路の完成に日々奮闘している。

新診療所は、アフガニスタンの山岳地域、クナール州ダラエ・ピーチ渓谷のシンザイ村で建設が進められている。
1992年から診療を続けている旧診療所は、民家を改装した建物で診療所として十分でなかったが、1日200-250人の外来患者が訪れていた。マラリアや腸チフスなど熱帯性の病気の治療のため、山岳部の谷あいからロバに乗って1日から2日かけて診療に訪れる住民もいる。これまで地域に医療機関がなかったため、重要な役割を果たしているという。

建設が進められている新診療所は、部屋が広くなり、効率的な診療ができるほか、衛生面も向上すると期待されている。
福元さんによると、アフガニスタン国内は米軍によるアルカイダ掃討作戦などで治安は以前より悪化しているという。アフガン復興支援金も生かされず、首都カブールの物価も高騰。福元さんは「タリバン政権以前に戻っている」と政情の不安定さを表現した。

4年前から続く干ばつの影響も深刻だ。パキスタンのアフガン難民170万人が帰国したが、干ばつで村が荒廃しているため7、8割が再びパキスタンへ戻っているという。中村医師は、ダラエ・ヌール渓谷で農業用水確保のため16キロにわたるかんがい用水路の工事に当たっているという。水を確保し、農業の再生につなげたい考えだ。