アフガンのお茶あれこれ
PMS農業指導員 高橋 修
* 初出誌 京都府国際センターメールマガジン第6号「アフガンのお茶あれこれ(2003年9月28日配信分)」を加筆訂正
2004年2月17日
お茶で一服中の現地スタッフ
アフガニスタンと言っても、私が知っているのはアフガンの東部ダラエヌール渓谷のみである。ここで消費されているお茶は、緑茶の一種である玉緑茶であって紅茶は飲まれていない。

飲茶の方法は、ひとつまみの茶の葉を沸騰したやかんの湯の中に入れて更に数分間煮沸し、これをあらかじめ砂糖を入れたコップに注ぎスプーンでかき混ぜ、少し冷ましてから飲む。他のアジア諸国のようなミルクティーは飲まれていない。驚くのは砂糖が無茶苦茶に多くて甘過ぎることである。通常コップ1杯に砂糖を大匙2〜3杯入れている。時々砂糖を4杯くらい入れた茶を、1回の食事に2〜3杯飲む人がいる。これでよく病気にならないものだと心配になる。

飲茶の目的は、日本と同様に食事時の水分摂取と来客の接待であるが、茶からビタミンを、また砂糖によってカロリーを摂取する意味合いもあると聞いた。来客には砂糖が多い方がもてなしであると考えているように感じる。訪問した家毎にお茶が振る舞われるが、あまりの甘さに閉口し、コップに砂糖を入れてくれる直前に、人差し指と親指で“少し、少し”という仕草をして減らして貰うことが多かった。

アフガンの農家は、食事の後とか来客時にお茶を飲みながら世間話に興ずる。娯楽がほとんど無いこの国では、世間話が最大の楽しみで人間関係を温める場ともなっている。お茶は世間話の場の潤滑油として欠くことができない存在である。

ジャララバード市内の茶商で1家族当たりの茶消費量を聞いたところ、年間12キロ程度とのことである。ローカルスタッフに聞いた結果もほぼ同量であった。しかし70年前の資料(尾崎三雄氏)によると、国民1人当たりの年間消費量は約100グラムとあり、1家族10人として1キログラムにしかならない。昔は消費量が少なかったのか、あるいは消費量に地域差があるのかよく分からない。

ジャララバードでの茶の販売価格は、1キロ当たり130〜160パキスタンルピーで、日本円に換算すると220〜270円くらいになる。年間3千円前後の茶代は、アフガン農家の経済状態からするとかなり大きい支出である。因みにアフガンの国民1人当たりGNPは約180ドルである。

アフガニスタンの雨量は日本の1割程度で、しかもアルカリ性土壌であるためお茶は栽培されていない。全てインドネシア、ベトナム、中国等からの輸入に頼っている。70年前には日本からも相当量が輸入されていたと報告されている。

パキスタン・ミンゴーラの研究所から無償で譲って貰った茶苗
私たちペシャワール会では、昨年から現地でお茶の試作を始めた。少雨量、アルカリ土壌など技術的にいろいろ難しい問題はあるが、ケシに代わる換金作物にしたい、農家の現金支出を少なくしたい、お茶を飲みながら人間関係を温め、農村に平和を取り戻す一助にしたいとの思いからである。