ジャララバードにも突然冬がやってきました。
11月20日、初雪が降りました。ダラエヌールから見上げるケシュマンド山脈が真っ白な雪をいただいています。普段なら人々は、白雪を見て小躍りします。しかし、とどまる所を知らぬ河川の水位の低下、地下水位の下降が、人々の間に絶望的な雰囲気を拡大しています。
私たちの作業現場(クズクナール地方)は、今や数少ない残されたオアシス地帯となるに至りました。水路工事を始めた頃さえ、こんなに周囲がひどくなるとは、夢にも思っていなかったのです。ジャララバードの南、スピンガル山脈の山麓は、かつてPMSが多数の井戸を作った場所で、以前は穀倉地帯として栄えていました。
2000年に始めたPMS飲料水源事業、約1,500の井戸のうち、今半分以上が涸れ、農地に至っては、壊滅状態です。多くの人口がペシャワールやカーブルに流れてゆきました。耕作できなくなった農民たちが、職を得るためです。
しかし、職にありつけぬ人々が多く、ジャララバード市内は失業者、乞食であふれてきました。この冬をどうやって生き延びるか、人々は必死なのです。他方で外国軍の空爆は連日続いており、毎日たくさんの人たちが命を落としています。こんなに日常化すると、ニュース性がなくなって報道されないだけです。ごく一部を除いて、アフガン全土、パキスタン北西辺境州全体が、無政府状態になっています。何かの終末を感じさせます。
時々日本のニュースが届きますが、遠い遠い異次元の世界のように思えます。余りにかけ離れていて、「伝えようがない」という、諦めにも似た気分がします。
こちらはこちらの日常がありますが、およそ実事業というものは、多数の職員の生活に責任を持ち、目の前に達成された成果を出すことにあります。援助ごっこではありません。人々の死活問題で、決して言葉や理念、感情で左右できない現実的なものです。この点は、口を酸っぱくして、くりかえし述べても良かろうかと思います。
この中にあって、アフガン人職員百数十名、作業員400~500名、おそらく最後の大規模事業となるであろう用水路完成に、必死です。最近、小生の多忙のため、報告が途切れがちでしたが、8月中旬から11月中旬まで3ヶ月間のまとめを送ります。暗い話ばかりではありませんので、肝心の目的である現地事業に思いを馳せ、励みにしていただければ幸いです。
なお、写真も後ほど送付しますのでご参考ください。
★Dr.T.Nakamura★ 中村 哲
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