2008年秋 現地報告(2008年11月21日受取)


1. 水路関係

 用水路は19.2kmを完成。O分水門を全面改修、11月20日、ついに第一弾のガンベーリー沙漠の部分灌水を開始。シギ村上手、約500ヘクタールが恩恵を受ける。(「シギ」とは砂の意で、シギ村は沙漠の末端に当たる) 現在、同分水路の長さ1.6km、これまでで最大規模の分水路。さらに延長を続けている。

 第2期工事は残る1km(Q地区)を年内完成の見通し。なお、再測量とルート大幅修正で、用水路全長は20.5kmに短縮。連続して第三期工事に入る。
 第三期工事は測量を繰り返してルートを既に決定、2.8kmでガンベーリー沙漠を横断、分水路を張り巡らせて約2000町歩が灌漑される予定。来春4月完了を目指す。詳細は別途報告。

 7月以来悩まされてきた土石流の始末(浚渫作業など)を全域で完了。抜本的な対策が行われた。ダラエヌール最大の土石流路(通称R1)は、多大の努力を払って自然流路を回復、M区域、N区域では土石流の緩流化を図って水路に取り込む方法で良好な結果が得られた。また、岩盤沿いの貯水池を大幅に増やして大量貯水を行えるようにQ区域の設計を大幅に変更、災害に備えている。
 取水口は異常低水位にもかかわらず、良好に機能しているが、将来を想定して11月15日から最後の改修を開始した。11月末までに完了する。

2. 農業関係

 現在のダラエヌール試験農場を、予定通り11月15日付で正式に停止。関係農家に引き継がれた。農業班が導入した道具らは関係者に譲渡。
農業事業は来春以降、新たに開墾されるガンベーリー沙漠地帯で実質的に引き継がれる。

3. マドラサ建設

 基礎部分と床うちを9月までに完了。現在、壁面や窓、階段らの建設が速やかに進んでいる。12月に天井を置き、09年1月から内装の段階に入る。各関係方面に「2009年3月21日に開校」と伝えた。

4. 自立定着村

 約350ヘクタールを確保。境界の壁(周囲約4km以上)建設を間もなく終える。
 ラグマン州から移住してきたパシャイ族と長らく抗争があったが、平和裏に共存できる態勢となった。隣接するシギ村(パシュトゥン)とは協力関係を築いている。
ガンベーリー沙漠の砂防林造成。08年7月からガズ(松に似た乾燥に強い高木)の苗木を育て、現在約5万本が成長している。今冬に移植予定。最終的にユーカリと混植、幅50~100m、長さ2.5kmにわたって、総計15万本を植える準備が着々と進められている。

5. 医療関係

 PMS病院(ペシャワール)については、外来が細々と続いていると聞くが、報告が当方に届かないので実体をつかみにくい。また、報告と会計の遠隔操作だけで実質診療が長く続くとは、到底思えない。

 小さな「らい診療施設」開設は、現在でも法的には可能。そのため、13名の医療職員をジャララバード側に移動させ、準備している。ただこの混乱と共に、現在の多忙さの中では運営不可能。ペシャワール側の思惑もあり、時期を待たざるを得ない。

6. その他

 日本からの直接送金態勢は、ほぼ整った。
今冬、飢餓による暴動、大混乱が起きないことを祈る。欧米軍の横暴は目に余るものあり。強盗も横行する中で、PMSは安全上、かつてのアフガン戦争直後と同様、潜在的な防衛力を蓄えているが、安易な応戦はしない。
 邦人の安全については、ICRC(国際赤十字)と国連機の活用が鍵である。しかし、事業遂行に忙殺されて、進捗が遅れている。
 ベスード地域(約1万数千家族)養う取水口も、再び危機状態に陥ったが、農民と一体になって改修が重ねられている。
 ジャララバード事務所の改善は、ジア医師(副院長)、ヌール・ザマーン(水路責任者)ら旧現場責任者をトップにすえ、水路現場も人事を異動。その成果は目を見張るものあり。事務所の維持費は半減した。
 指揮系統と会計の簡略化を図るため、1年分の資材を年内に一括購入。全予算の半分以上を占めていた重機・ダンプのレンタル料(用水路)は、12月を以て終了すべく、効率よい作業が進められている。 第二スタッフハウスは閉鎖した。以上。

★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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