水路現場写真(2009年5月8日受取)


ガンベリ岩盤地帯と沙漠横断路・超物量作戦と人海戦術

 5月4日の集中豪雨に次いで、5月5日に長い土地獲得抗争に終止符が打たれる頃、岩盤工事は最後の決戦が始まったばかりだった。5月3日、全職員に「この数週間が吾々の将来を左右する。疲労は分かっているが、今は手を抜かず、3週間で全岩盤工事を終了する」と宣言、挑戦に乗り出していた。本来なら4月末の完成を期していたが、長雨に加えて、P区域の後始末が足を引っ張り、遅れに遅れていたのだ。

 酷暑の夏、ガンベリの作業が更に困難になる。ほどなくペシャワールの混乱がジャララバードに及ぶ可能性もある。中途半端な延期が財政負担と心身の疲労を返って増す。今をおいて水路工事にピリオドを打つ可能性は少ない、という切羽詰まった決定であった。
ただちに、空前の規模で仕事が始まった。ペシャワール会始まって以来の大きな動きである。


Q2貯水池の土手造成に群がる重機やダンプ、作業員。5月5日。


 最難関は、これまでも触れたQ2貯水池の建設である。同池は長辺350m、短辺250m、最深13mの巨大なもので、マルワリード用水路の中で最大のものとなる。土手造成の土石量が推定18万立米、半端な工事は疲れを増すばかりだ。殆どの重機とダンプを集結させた。
 全体が幅広い谷を成していて、谷の奥にある岩混じりの赤土を採取、土手の素材に使う。この積み込み、運搬、舗装用ローラーによる締め固めという単純工程だが、並みの量ではない。区分を3か所に分け、重機とダンプのコンビを3組に分け、競うように作業が進んでいる。


Q2貯水池末端の水門基礎うち。以前は数カ月かかった仕事が
数週間で済む。作業員自身が熟練工に近くなっているのだ。5月6日


これと同時に沙漠横断路が進められ、橋や水門などのコンクリート構造物、居住区の家屋建設が進んでいる。
ローダー6台、掘削機6台、ダンプカー22台、削岩機2台、ローラー4台、散水車4台、トラクター20台。全体で作業員660名、現場はまさに働きアリの集団だ。


ガンベリ沙漠横断路。 先端の河床造成は2.5kmを突破、PMSの試験農場に達した。 蛇篭工事は1.6kmまで完成。石材の採取、トラクターへの積み込み、 蛇篭組みまで一貫して45名のチームが行う。最近では1日45個以上を組む。(5月7日)


苦情を述べる者はだれも居ない。時折喧嘩があれば、仕事に関するもので、「石が足りない」、「速くセメントを持ってこい」、「ダンプが遅い」等々、作業に勇んでのことである。
ガンベリ岩盤工事は、四つの谷を通過する。何れも谷を堰って貯水池とし、約1kmにわたって階段状に水が池から池へと流れていく設計である。夫々Q1,Q2,Q3,Q4と名づけ、とりわけ大きいのがQ2池である。こんな大きな池が果たして必要なのかという疑問が一部にあったが、5月4日の鉄砲水でみんな納得した。造成中のQ2池に四方八方から豪雨が流れ下ったのである。まさか、と目を疑ったのは、あれだけの雨水が浅い水たまり程しかならず、池の工事に痛痒も与えなかったことである。
確信を得た職員と作業員は、さらに熱が入る。 どうやら3週間後の開通は間違いなさそうである。


「集中豪雨をのみこんだ」Q2貯水池。5月5日


ガンベリ岩盤工事は残るQ2貯水池を完成する頃には、水路の水が一挙に沙漠横断路を通過、水路末端24.3km地点に達することになっている。PMSにとって記念すべき瞬間が3週間後に迫っているのだ。

★Dr.T.Nakamura★
中村 哲
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