しばらく連絡が途絶えていましたが、その後の経過を報告します。
ガンベリ沙漠横断路(S区域)は6月27日現在、先端工事は3kmに達し、2.5km地点までを完成しました。しかし、ここ数日、熱風が激しく、時に50℃に達します。崖沿いの難関Q区域は、一応水が流れることを確認して漏水対策に入りました。
50℃の気温は、小生が体験した中で最高記録でして、さすがに暑く、しかも乾燥しているのでメザシかスルメになるような気がします。実はこれを恐れて、夏前の完成をめざしていましたが、最悪の時期の工事となりました。
しかし、劇的な変化は水辺の気温低下で、5~7℃ほど低いのです。これには驚きました。確か、かつて沙漠だったスランプールもそうでした。それが緑の陰と縦横に走る小川が通ると、住みやすい気候に変わるのでしょう。
砂嵐はものすごいもので、吹きつけてくる砂が痛く感じます。こんな時は作業を早めに切り上げさせています。

2.5kmに達した沙漠横断路。
間もなく最終地点の土石流の枯れ川に達する。6月25日。

砂嵐の中の作業。さすがに作業を中止した。ガンベリ沙漠。
6月29日。
漏水対策と言ってもピンとこない方もありましょうから、多少説明します。用水路や河川は必ず「漏水」があります。浸透水とも言います。大ざっぱにいえば、地下水の元になるもので、用水路沿いの地下水位があがって井戸が浅くなるのはこのためです。土質にもよりますが、普通、取水口に取込んだ水の約3分の1が「浸透損失」として計算されます。
普通見えませんが、水路が崖沿いの高い位置にある時、地下に達する前に、堤から浸みだしてくることがよくあります。堤防の構造がしっかりしておれば大したことではなく、「湧水(泉)」として住民に喜ばれることも珍しくありません。
しかし、構造が不適切な場合、決壊を起こして大変なことになります。特に、Q区域のように高さ十数メートルの堤防で谷を堰き止め、大きな堤を作る場合です。Q地区の場合、池の底が砂礫ですので、かなり派手に漏水が見られます。
その対策の詳細は割愛しますが、要するに水抜きを堤防の根方に作り、排水路の小川を作ります。地下水流が地表に現れたと考えればやさしいかと思います。ただし、この工事はかなり大がかりなもので、1kmにわたって砂利で透水層を厚く敷き、土手末端に蛇篭を置き、法止めと排水路の造成を兼ねます。
現在、これが目下の大工事で、あと3週間かかります。最後まで「水と戦う」仕事となりました。

Q2貯水池の漏水対策。最下段を砂利のステップとし、
土留めと同時に、透水線を下方におとす役目を果たす。
最終的に各段は一枚の緩やかな斜面となる。左に見える崖下は、
滲出した水で湿地帯のようになって、漏れ水が流れている。
ここがガンベリで最も気温が低い。6月28日。
★Dr.T.Nakamura★
中村 哲
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