受信日:2010年02月19日



事務局のみなさん、

今月は、3つの大きなお祝いがありました。
1)マドラサとモスクの完工式、
2)マルワリード用水路完工式、
3)カマ取水堰の開通式です。


出席された方、出席できなくとも協力と声援を惜しまなかった方々に感謝申し上げます。しかし、「完成」とは言い切れず、まだ数ヶ月は手が抜けません。大きな残余工事が残っています。
マドラサ;学校の寮建設
マルワリード用水路;Q区域(ガンベリ沙漠岩盤周り)の浸透水処理工事
           排水路の整備
           開墾地(PMS試験農場)の分水路整備
カマ取水堰(No.1, No.2);堰の強化と「余水吐き」設置による取水量の安定・護岸

 このうち、大規模な機械力が要るのは、カマ取水堰と浸透水処理ですが、これも先が見えており、この1ヶ月でほぼ終了します。また、ジャララバードは思ったより安定しており、事業完遂に支障はないものと思われます。大方の人々は長い長い戦乱と旱魃で疲れきっていて、厭戦気分が広がっています。このような事情もあって、作業員600名、水路・農業関係職員100名、意気軒昂です。やはり、破壊・殺傷ざたよりも建設的な仕事に明るい気持ちを見出しているようです。

 事業完遂の要は、今後ジャララバード事務所の機能強化、特に会計と渉外事務の改善です。これは、4月帰国時に詳しくお話します。ここ数年間は混乱を経て何らかの形で安定化に向かうと分析していますが、嵐の期間を無事に過ごし、いずれ開花するよう、十分なお膳立てが必要かと思います。
 以下、中断していた週報です。

 久しぶりの2連休でしたが、増水前の工事が気がかりです。
週報を再開します。つづきは明日送ります。
今年は積雪が遅れたので雪が溶けやすく、春先に大きな洪水を想定しています。河の工事(カマ取水口改修)は急ピッチで行われています。



湿地帯排水路の整備と浚渫路の建設。2009年3月からの努力で、沼地は90%以上が耕作地として回復した。同地の全体が平皿状で、周辺から耕作が始まっている。背後に見える麦畑は、10~20年ぶりの作付けだという。1年前、ここが沼地の底だったとは思えない。作業員の主力は周辺農民なので、仕事に力が入る。住民は稲作を計画しているらしい。干上がった土は日本の田んぼの土に似ている。
(2月11日)



 浚渫路の架橋。約3m水位を下げ、耕作地を回復したものの、かなり深い泥土層である。FG区域の湿地帯処理の経験を生かし、橋脚を含む水面下泥土部分2.5m以上を砂利で置き換え、その上に屈伸性のある蛇篭を乗せて橋脚とする。この蛇篭橋脚の上に、厚さ30㎝の鉄筋コンクリート板を置く。つまりは大きな「どぶ板」だ。ある程度の沈下を予測した苦肉の策だが、案外いける。(2月11日)



100年近く溜った地中の水は、なお抜け続けている。土質と傾斜によって地中水流の速さは異なる(ダルシーの法則)。流入を遮断しても、粘土質中の流速は毎秒数ミリm。1日で数十mなので何年かかかることになる。これでは間尺に合わない。小さな溝を設けると地中水流の傾斜が増し、排水を促進する。手掘りの単純なドレーン設置が、やはり早道だ。雨上りだが確実に水が干上がっている。耕地化は確実で、灌漑はマルワリード用水路の分水路が注がれるという嬉しい話。(2月11日)
(つづく)


★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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