受信日:2010年10月15日


事務局のみなさん、
カマは工事が本格化してきました。

 昨日(10月14日)古参の鈴木学くんが到着。マルワリード取水口(2003~05年)、シェイワの取水口建設(2007~08年)以来。小生も留守居役を得て、一時帰国できます。正直述べて、この時期現場を離れるのは指揮者としては失格、工期の遅延を意味します。しかし、台所事情を考えるとそうも行かず、講演日程を終えると直ちに現地へ戻ります。
 大洪水被害の復旧作業はまだまだ続いており、一部はとりあえず姑息的な処置にとどめ、1年後の秋に本格改修をせざるを得ません。時間がないのです。河川の工事期間は10月~2月までで、とても25kmの用水路全体を見ながら複数個所をできるものではありません。
とりあえず全力を注がないとならないのは、カマ郡の第二取水口、堰、主幹用水路1㎞の完成、同時進行で対岸の護岸工事を進めています。開始して1週間、ほぼ作業態勢を整え、フル稼働で進められています。それでも、一昨年から仮工事を行い、水位を観察したり、交通路を敷設してきましたから、思ったよりも順調に行きそうです。その背景には、カマ郡長老会の支持が圧倒的な威力を発揮しているようです。
 ガンベリ沙漠の農場では、稲刈りが終わり、次は小麦の準備です。そのため、水を完全に途切らす訳にゆかず、浚渫作業が合間をぬって少しずつ行われています。陽射しはまだ厳しいものの、夜は快適です。
みなさんもお元気で。



D沈砂池の浚渫作業。ジャリババ渓谷からの鉄砲水がくりかえし流れ込み、
膨大な砂が蓄積していた。確かに「沈砂池」で、これだけの砂が水路内に
入っていたら どうなったかと考えるとぞっとする。だが、浚渫は容易ではない。
排水門を全開し、急流を作って、そこに流し込む。手前の排水路は幅1m、
流速が毎秒4m以上、手作業で泥を近傍に落とせば、凄い勢いで土砂を流し去る。これほど役立つとは思わなかった。10月13日



マルワリード用水路取水堰の対岸中洲に発生した傍流。河の水位低下と共に
全貌を現してきた。だが、これによる取水口の水位低下はあまり見られず、
返って望ましい変化かも知れない。河川敷の河道の変化は思ったより複雑だ。
クナール河が4分割されて流れる結果となり、取水部の水位観察を続けている。
12月まで待ち、必要であれば一気に処置する。10月14日



カマ第二取水口。10月4日に開始。旧水門を埋めつぶし、
堰上げ直後の低位置に基礎工事を開始した。直角に近い堰はよく残っており、
対岸の根固めも流水圧によく耐えた。水門ができると直ちに
本工事を始める予定。10月13日



残存した対岸中洲の根固め工。
2010年3月、増水と競いながら工事を進めたが、苦肉の策で蛇篭を井形に
組み、中に砂嚢や砂利を詰め込んで作ったもの。特に砂地の多い場所では
よくなじみ、洗掘は起きなかった。筑後川流域で見られた低水位護岸(木工沈床)を模倣したもの。10月11日撮影。



同水門部。水門は河の流方向に直角に置き、完成してから下流側から堰あげる。旧水門は10月16日に撤去し、まもなく全体が見えるようになる。
用水路で最も強靭さが要る場所。基礎工事が用水路の命運を決する。
大事なものは見えないところにある。10月14日撮影。



カマ第一取水堰。ほぼ破壊されずに残ったが、対岸中洲が洪水に洗われ、
全体が「の」の字型のらせん状となった。これによって同堰の長さは300mを
超え、浅く幅広い流れができている。水理学的には望ましい変化で、
大洪水でも河道が変化しなかった。対岸は堤防の交通路敷設工事が進行中。
10月13日



護岸工事のための交通路敷設(ベスード側)。
日本であれば、浸透水を避けるため矢板を打ち込むが、透水性の少ない赤土を
砂利と置換してゆく。基本的にはガンベリ沙漠岩盤周りの堤防と同じ。
ただ表法(河側)の激しい流水圧をかわすために巨石で掩蔽される。
低水位の護岸工事は、春の増水期までに何とか間に合わせねばならない。
ここでは人の決める時計時間が通用しない。10月14日撮影。



8月の洪水で水が溢れ、倒壊した家屋。礫石の径から推測すると、相当な急流。
襲われた集落の住民が帰り始めている。傍らにテントを立て、自力で家を
修復する。アフガン住民は天災に寛容で、黙々と家を建て、耕地を回復する。
堤防によって水路が復活するので工事に協力的だ。10月13日



第一農場の稲刈り風景。畦道に植えてあるのは大豆。
日本電波ニュースの谷津さんが、これを撮りたくてわざわざやってきた。
10月10日



いちめんの黄金いろ。いちめんの黄金いろ。いちめんの黄金いろ。 いちめんの黄金いろ。いちめんの黄金いろ。いちめんの黄金いろ。




★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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