受信日:2010年10月8日


事務局のみなさん、

 お疲れさまです。週間報告です。
理解に役立つ地図も添付します。

 今週の大きな動きは、何といってもカマ郡の工事です。取水口I・堰の改修、取水口II新設・堰改修・主幹水路(1㎞)新設、調節門新設、対岸の低水位護岸(約2㎞)は、来春三月の「全面完成」を期して、本格的な工事が始まりました。10月4日、クナール河の水が更に低下、工事時期の到来と判断、全精力を傾け始めました。

 投入される重機は、掘削機6、ローダー1、舗装用ローラー2、ダンプカー30台です。来春2月末には河の水位が上がり始めるので、工事は不可能となります。この4~5カ月で全てが決します。カマ長老会(シューラ)の並々ならぬ異例の決定(冬小麦の栽培を1シーズン分駄目にして協力)は、先にお知らせしたとおりです。堤防の方は、ガンベリ沙漠岩盤周り貯水池の経験から、技術的には楽観的に思えますが、赤土や石材の採取場所が離れていて、輸送が成否の要となります。短期決戦ですから、場合によっては更にダンプカー、積み込み用の重機を動員します。

 公的筋との協力協議は進行中ですが、やはり自然は人を待ってくれません。これまた異例の好意的な対応にもかかわらず、やはり新しい試みというのは時間と忍耐が要ります。かくて予期せぬ大洪水以来、異例ずくめのスタートでしたが、ここはやむを得なかったと思います。人々の生命と生活を優先すべきです。
 他方政情は奇々怪々、どんな動きが出てもおかしくない状態です。今冬の仕事が将来を決します。毎年、同じセリフを繰り返してきたので、「またか」と思われましょうが、ご理解のほどをお願い申し上げます。

日本の方々には、募金活動の上でまたまた大変な負担をかけることになりましたが、ご協力を宜しくお願いします。カマ郡30万農民の悲願と誠意に応え、力を合わせて、難局を切り抜けたいと思います。



マルワリード用水路取水堰。水位が下がり、斜め堰をかけた対岸中洲の全貌が見えるようになった。対岸の低水位護岸だけが残され、背面がきれいさっぱり流失している。床のように敷いた蛇篭列は強靭、そのまま残っている。2010年10月5日



対岸と言うべきか、島と言うべきか、護岸工事した分だけ残るとは思わなかった。背面に幅約60mの傍流が発生している。傍流の中心の水深が、10月5日現在で約95㎝、今のところ取水に影響がない。更に水が下がる11月下旬から低位置で例の「蛇篭床」を幅広く敷き詰め、無理のない堰上げを行う予定。2010年10月5日撮影。



カマ取水口対岸(ベスード郡)の堤防工事。年末まで2カ月で低位置の部分を終え、2011年1月から夏の洪水高に合わせ、工事を仕上げる。堤防の構造は、ガンベリ沙漠岩盤周りの貯水池に似ているが、表法は激しい流速に耐えるべく、
巨礫で床(根固め工)と斜面造成を行う。 2010年10月7日



対岸から見た護岸工事の様子。思ったより進行は速い。2010年10月7日



カマ第二取水堰。10月になって対岸中洲の様子が見え始めた。大洪水によく持ちこたえ、対岸中洲の「蛇篭床」の根固め工も健在。今年は更に堰の幅を増し、手前の水門を撤去、新設する。堰の幅は現在十数メートル、巨石を低く敷きつめて
20~30mとする。2010年10月7日



第二取水堰の中洲対岸の様子。幅20m、長さ28mで蛇篭工による低水位護岸を行ったが、背面の礫石層とよくなじみ、殆んど破壊されていない。マルワリード用水路の取水堰対岸の場合、背面の礫石層に砂が多く、砂利の粒径が小さかった。
2010年10月7日



 ガンベリ沙漠第一試験農場の末端排水路。農場は長径1,300m、短径700mの短冊形で、排水路の整備が大変である(ガンベリ沙漠地図参照)。写真は排水路の行き着く最後の橋の工事。工事に着手して10ヶ月以上。みな、文字通り「一区切り」で、ホッとしたところ。これでシェイワ、シギに隣接する乾燥地に安心して送水が
できる。2010年10月7日


下画像が、今回の報告メール冒頭の“添付”されていた地図です。


Summary of Main Drainage Canal & Gamberi Desert
(2010年9月30日現在)
拡大画像はこちら>>>




★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


← 前の報告へ ○報告トップへ○ 次の報告へ →

Topページへ 連絡先 入会案内