受信日:2011年1月15日


事務局のみなさん

 通水試験は2日遅らせて、明後日です。送水直前の写真を送ります。その目で見れば、カマ第一・第二取水口の工夫が分かると思います。水が流れてからでは分からぬ部分が重要です。試験通水で欠陥個所を見つけて補修・観察、その後に幹線を旧水路に開放し、途切れない流れとなります。2003年から8年間、聞きしに勝る暴れ川、クナール河相手の激闘の総決算です。

 上部構造(水門・幹線水路のふとん籠上段・柳枝工・高地への分水路・用水路の架橋など)は、後で焦らずにできます。試験通水が終われば、機械力の大部分を対岸ベスード郡の護岸工事に集中できます。一方、ガンベリ沙漠の開拓は、適切な給排水路(分水路を含む)の造成に追われており、案外時間がかかります。こちらの方は本水路よりも長く、最終的に総計数十キロメートルが必要です。

 当方が直接対峙せねばならないのが、外国軍の下で甘い汁を吸ってきた地域の中小軍閥たちです。むき出しの威嚇は激減しましたが、今度は中央政権内の一部とつるんで意地悪をしてきます。日本人は概ね人が良いので、脅せば思い通りになると思われている節があります。怪しげな情報源をたどってゆくと、意外な事が明らかになることもあります。武力衝突だけは避けますが、時には毅然とした態度で臨まざるを得ません。対立の構図は、日本で考えられるよりも遥かに複雑怪奇、相当な外交的努力と根気が要ります。しかし、河川を相手にするよりは楽ですので、目下川周りの工事に集中しております。

平成23年1月14日




クナール河の三分割。左岸から張り出すカマ第一堰は、先端が「の」の字を描いて
らせん状に落ち、増水期には中洲上流側全体に流れが越えてゆく。冬の越流長は260m、
夏は350mを超える。更に、中洲を二分割する川幅を拡大、増水すれば水の逃げ道となり、
異常堰上がりを起こさない。対岸側は昨夏の洪水で川幅が拡大していて、
対岸への影響は殆んど考えられない。江戸時代、筑後川では舟運が盛んで、
「舟通し」が置かれたというが、舟が堰を往来したとは考えられないので、
おそらく当時の堰の原形を再現したものだと思える。2011年1月13日



第二取水門の背面。上部施工は水の上で出来る。こちらは堰工事と同時に
水門の開放準備が完了。2011年1月13日



調節門。いつでも準備完了。上部は「水上工事」で出来る。排水門の機能が
通水試験の最大のポイント。2011年1月13日


★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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