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1年5ヶ月をかけた
ベスード護岸・ベスード第一取水口、竣工式
~カシコート護岸基礎工事、大詰め/ガンベリ沙漠近況~

今週はいろんなことがあり、一か月たったような気がしています。

4月7日、遂にベスード護岸(カマ取水口対岸3.5㎞)およびベスード第一取水口が竣工しました。州代表とベスード各村自治会、PMS全職員が会し、盛大に祝われました。後藤会長名で、事務局からのメッセージも読み上げられました。治安を考慮して、二つの大きな仕事の完成祝賀が同時に行われましたが、最近戦乱と腐敗の噂ばかりの中、さわやかな印象を与え、一同満足して解散しました。何れもJICA共同事業の一環として進められましたが、これにかけたPMSの努力は並大抵のものではありませんでした。

ベスード郡に建設された二つの取水口(カブール河沿いのベスード第一堰、クナール河沿いのタプー堰)は、全ベスード郡の約8割に安定灌漑を保障すると同時に、洪水被害と湿地化を一掃しました。PMSの推計では、農地約2500ヘクタールが安定し、10万人の農民たちの自給を保障したことになります。

これによって緑の大地計画は、完成に向けて確実な歩を進めました。更に、カシコート計画が成りますと、アフガン東部屈指の穀倉地帯、カマ・ベスード・クズクナール(旧シェイワ)三郡全て、計16,000ヘクタールの農地、65万人以上の農民の自活を保障することが、夢でなくなりました。しかも、カマ郡では半分以上、クズクナール郡では80%以上の農地が荒れ、ベスード郡の30%程度の地域では、不安定な灌漑の上に湿地化が進む中の仕事でした。さしずめ、福岡県の筑後平野の復活に相当すると考えて相違ありません。

当日、治安上の配慮で式典を2日前に決定、しかも休みと重なったため、ペシャワール会やJICA関係の方々が出席できませんでしたが、紙面を借りて、改めて御礼を申し上げます。

カシコートは、迫る洪水期に追い立てられるように、式典の間も休みなく、工事が続けられています。これまで手掛けた河川工事の中で、最も難しい場所だと思いました。でも今更、泣き言はありません。現場一同、一丸となって力を尽くしています。掘削機、ローダー、ダンプカーの単純な構成の機械力が主体ですが、小生の指揮下で一糸乱れず、確実に動いています。不服を述べる者なく、基礎工事は終局に向かっています。

一方、ガンベリ沙漠では、給水塔(防砂林保全計画)に次いで、シギ村落群への洪水路横断サイフォン建設が始まっています。更にマルワリード用水路保全に向けて、自警のパトロール、定期見回り団の組織化、村落間のもめごとの仲裁など、次々と手が打たれています。この情勢の中で頼る者がない流域農民の結束を、中立を堅持しながら、固めつつあります。つまり、PMSそのものが地域勢力として土着化することです。支援側から見れば別の意見があるかも知れませんが、現下の情勢では他に選択肢がないという判断です。おそらく、用水路建設より河川工事が難しく、河川工事より見えぬ保全態勢を作る方が、更に忍耐と努力が要るでしょう。先が長いということです。最近のガンベリ沙漠開拓、マルワリード用水路事情を別便でお届けします。

みなさん、お元気で。

   

平成24年4月12日 記

河川工事用地図2012年4月10日更新

毎度おなじみの河の様子。下流側から両岸作業地を見る。右岸ジャリババ側は終了。左岸カシコート側は増水に追い上げられるように工事が行われている。濁流は日に日に水位を上げる。埋めつぶした左岸カシコート側の旧主要河道の表面を水が洗い始めている。こんなものを相手にしていたのだ。
2012年4月12日

残存して川幅を狭めていた旧堤防は完全に撤去され、新堤防を約600mにわたって築く。新堤防の護岸線は、洪水破壊線を守るにとどめ、天端のある上段は幅20m以上、表法は二段にして厚く巨礫で覆い、下段は水制で保護する。(上の河川工事用地図参照)旧堤防撤去部(約200m)は、直接低水敷から、上流側の洪水破壊部(約400m)は幅広い高水敷から、水制を護岸壁に密着させる。高さは、2010年の大洪水レベルより0.5m。とりあえずの妥協。秋に本格的に仕上げる。
2012年4月12日

旧堤防位置を上流から見る。要は川幅を広げ、異常高水位に対して十分な逃げ道を与えることだ。壊れた橋の左岸側は、第7・第8水制間に位置するように開放すれば、相当水位を下げる。旧堤防は急傾斜で設置され、著しく川幅を狭めていた。
2012年4月12日

洪水破壊の湾曲部の堤防造成。第3水制付近。速やかな工事のカギは、輸送能率、交通確保、重機の配置、目測で分る位置の明示だ。重機運転手の技量を読んで、適材適所。しかし余り急ぎ過ぎてもろいものを作ってはならない。やはり、設計者が現場で確認しながら進めないと、とんでもないことになる。
2012年4月12日

ベスード第一堰、ベスード護岸の竣工式。実際には植樹の世話、小さな補修、水量調節の指導など残っているが、一応住民と行政に正式布告となる。政治家も何かと批判にさらされやすい時局柄、やはり無条件に喜べるものが欲しいのだ。最近、行政側が非常に好意的になっている。
2012年4月7日

この日は、急激に気温が上がり、カブール河は洪水に近いレベルの水であふれた。もし堰と水門がなかったら―――― 低湿地帯は確実に水没していたろう。この季節でこんな水量が溢れるのは初めて。住民代表一同、「幸運」と胸をなでおろした。これで渇水と洪水、両方の悩みから解放された。
2012年4月7日

職員一同、久しぶりに勢ぞろい。日本のみなさん、どうも有難うございました。
2012年4月7日

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