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カシコート取水門を開放
~カブールから調査団
既存水路との連結を検討~
本日5月9日を以て、カシコート取水門を開放しました。折しも麦刈りの季節で、田植えを一カ月以内に控える時期です。完成はまだ先ですが、洪水と渇水に喘いできた村々に、大きな希望を与えました。
水は滔々と調節池に下り、旧河道に排水され、3.5㎞を蛇行してクナール河に戻りました。予定通りです。
次の課題は、既存水路との連結です。送水ルートが具体的な検討の段階となりました。特にクズカシコート上流の既存水路が小さいので、現在のところ、とりあえず排水路を転用して下流側にある既存水路へ流し、上流側は手作業で拡張、村落間の話し合いを待つ方針でいます。でも、それだけで、1000ヘクタール以上の耕地がよみがえります。
アフガン政府・経済省からも調査団が送られて、喜びを共にしました。NGO担当局の人々です。尋けば、PMSを巡って、カブール側でいろんな噂がたてられ、実見に来たと言います。誇大な報告だとの見方もあったそうです。
彼らはまる二日間、PMSの建設してきた取水堰(カマ、ベスード)、診療所、モスク、マドラサ、マルワリード用水路、ガンベリ農場を全て見て回り、大喜びで戻っていきました。百聞は一見に如かず、「今まで見てきたNGOの仕事としては、最大で最良」との評は、多少お世辞でも、嬉しいものです。一口に「カブール政府」と言ってもいろんな人が居ます。中には心ない役人もいて、賄賂を拒んだために随分と讒言も多かったのです。しかし、讒言は書類や文書上だけの架空の操作ですから、実際に結果を見れば、分かることです。
最近PMSは、先のことを考え、行政内に正しい情報が届くよう心掛けています。ジア先生が持ち前の正義感で奔走し、昨年から州政府と協力し、カブール政府の灌漑局、そして経済省と、理解者を得てきました。こちらは、ただ実を見せれば済むことですが、これまでは実際にカブールから来る政府関係者が余りに少なかったのです。これは現地にとって、無用な敵対を払拭し、大きな出来事でした。
今夏は主幹水路の上部施工と植樹を行い、秋の渇水期まで河の観察を続けます。とりあえずは、目的を達成いたしました。酷暑で作業員・職員が弱らぬよう、少しペースを落とし、秋10月に備えたいと思います。
どうも有難うございました。

カブールからの派遣団も加わり、作業員と共に、通水成功を祝う。取水門付近。
2013年5月9日

経済省のNGO局長は、若いが好人物。現場を見て驚き、素直に喜ぶ。
2013年5月9日

開放直後の取水門背面。
カマやベスード堰のように既存水路との連結部が整備されていないので、大量には送れないが、1年半に及ぶ労苦の結実を見るのは、楽しいものだ。片田舎にしては大きな事件だ。皆うっとりと眺め入る。
2013年5月9日

カシコート取水門上流部の護岸。
昨年12月施工時の最低水位から約1メートルの増水。河道拡大が奏功して安定した水位を保つ。
2013年5月7日

連続堰の現在。
増水期に入って水位、流速共に増し、主要河道の流れが分かる。河道③と④が低い位置で両側からこぼれる堰の水を受け止めて、水位を安定させている。
2013年5月7日

取水口から約500m地点。
旧高水位河道を通り、右岸がそのまま堤防となる。植生は自然の林で、洪水に強い。用水路壁の蛇籠二段目は、秋までにヤナギの植樹(柳枝工)と共に、時間をかけて施工される。
2013年5月7日

送水前の調節池。
排水門が送水門より50㎝低くとってあり、流入する土砂を排出する。おなじみのPMS様式。
2013年5月7日

送水門床面からの水位、約15㎝の状態。
既存水路との連結ができていないので、排水門だけを開けている。
2013年5月7日

排水路へ注ぐ水。
排水路はかつて主要河道だったので、十分な量を流す容量がある。3.5㎞先でクナール河に戻る。
2013年5月7日

送水門背面の造成。
既存水路との連結は、送水門から二つに分けて、上下流別々に行う予定。(次ページ地図参照)これは、村落間の抗争を避ける意味もある。入り組んだ土地所有が水系と一体で複雑、分けないとややこしくなるためだ。
2013年5月8日

クズカシコート灌漑 既存水路との連結ルート

上手を潤す第一送水路(既存)は、崖沿い約3㎞を這うが(前頁参照・黄色部)、バルカシコートの所有地を通るため、拡張工事が難しい。それでも安定水量を十分送ることができる。
これまで、バルカシコート側の捨て水に頼り、不安定であった。
2013年5月8日

第二送水路(既存)は、崖地沿い第一送水路より3.5メートル低いが、排水路の水を潤沢に送れる。
この下流は更に落差があり、広大な面積を復活できる。村民はRCCパイプを連結して苦労して少ない水を得ていたところ、2010年8月の大洪水で破損し、大半が難民化していた。
とりあえずは排水路の水を注ぎ、冬の工期にサイフォンで通す。既にRCCパイプを撤去して、小規模な取水堰工事を始めている。一時送水が三日後に開始される。
2013年5月9日

バルカシコートの悩みは、渇水よりも洪水であった。
最大の流入点がカシコート橋脚の上流側で、2010年8月、被害はクズカシコートにまで及んだ。その後、主流の蛇行侵入に脅えていたが、2012年2~4月、PMSの河道変更工事で不安は去った(※バル=「上」、クズ=「下」という意味)。
2013年5月8日

もう一つの大きな洪水流入点は、バルカシコート・サルバンド村の北端、カシコート取水口から1.5㎞上流の地点にある。
これも、Green Mound 350メートルの造成で、大禍を免れる。長い主幹水路だけでなく、長大な連続堰、3.5㎞の護岸、洪水対策と、「カシコート」が最大の挑戦となったが、何とか制した。
2013年5月9日

思えば長い、長~い、長~~~~い「カシコート」でした。
まだまだ終わっては居ませんが、難工事に見通しをつけ、多くの敵対を清算しました。オチは、小生が煙草好きの局長に「賄賂です」と与えたピース1本。Peace の箱を見せて、皆で大笑いしました。日本の皆さん、ありがとうございました。
2013年5月9日