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護岸工事、必死の努力
カンレイ村揚水水車、設置試験を成功裏に終える
全域で爆発的な水稲栽培

洪水はいったん引き、現在決壊個所の補修が続けられています。

壊れたのは、
1.ベスード護岸1700m地点(約200m)
2.ベスード護岸始点(140m)
3.カシコート護岸のうち水門より約1000m地点(約300m)です。

これまでの経験から、洪水が波状的に襲う場合が稀でありません。
最高水位は6月11~12日で、2010年8月の大洪水を上回りました。インド北部では1000名が死亡、7万人以上が孤立していると言われ、パキスタンではスワト、ペシャワール近郊のチャールサダで浸水が伝えられています。私たちの作業地では、ほぼ平年並みに復しましたが、異常高気温です。急激な上昇気流が起きて集中豪雨が多発すれば、雪解け水と重なって手がつけられません。

もともと、同洪水レベルを想定して建設されていたので、PMSの取水口は全て、大禍ありませんでしたが、それ以上のものは当然起き得ます。壊れた部分の洗掘、崩落が続いており、今週から機械力を増して全力で作業が進められています。
カマ第一取水口では水門上部まで45㎝に迫り、来週からかさ上げ工事が始められます。

住民は一時退避していましたが、小生が戻ると安心したのか、皆戻ってきています。

洪水騒ぎで陰に隠れてしまいましたが、シギ分水路は開通、カンレイ村で揚水水車設置試験が成功裏に終わりました。これらも大きな出来事でした。先にも述べたように、今年の最も顕著な傾向は、何といっても爆発的な水稲栽培の拡がりです。どこに行っても水田ばかりです。おそらく、これまで渇水と洪水に悩んできた状態が解消し、安心して作付け出来るようになったことが、大きかったのではないかと推測しています。

安定灌漑とは、必要な時に、必要水量が利用できる状態です。これまで、特にコメやコムギの作付けは、まるで博打のようだったのです。洪水が来れば田畑がダメになり、冬季に雨が少ないと小麦の収穫ができませんでした。取水設備の充実は縁の下の力持ちで、人目を惹きませんが、私たちの仕事が徐々に実を上げてきたと思っています。

ともあれ、戻ってから休みなく緊急工事です。第二波が来ないことを祈りながら、毎日河と睨めっこしています。

室内気温40度、暑くて多少疲れ気味ですが、断食月が始まるまで一週間余り、何とか切り抜けようと思います。
皆さんもお元気で。

平成25年6月28日 記

水は自ら道を見出す。カマ側から望むベスード護岸1700m地点。
ベスード側に蛇行する河道が幅を広げ、カマ側河道群、中心河道群と、洪水をうまく等分して流れている。ベスード側は広がったが、しめきり提を襲う中心河道は水量を減らし、望ましい変化。決壊部は徒に補修せず、洪水時の状態を固定、低水位期にタプー堰の改修に力を入れ、とりあえずは民心をなだめるに止める。
2013年6月27日

カマ側から見る対岸ベスード護岸始点140mの崩壊。
こちらはカマ第一取水堰に影響が出るので、補修が必要。樹が流され、下部で激しい洗掘が起きている。根固めの捨石は残っているが、根固めの背面、堤体下部の材料が弱かったため、根固めの捨石裏側に激しい流れが発生、洗掘で表法を崩落させた。だが、これによって対岸のカマ第一取水堰の異常高水位を軽減したとも思われる。
2013年6月27日

護岸堤崩落で流失したのは表法側の幅10メートル以上、深さ3m以上の急流を作って、フラスコ状に堤体下部を洗掘していた。洗掘が進めば、住民が不安に感ずるだけでなく、主流が右岸ベスード側に移り、カマ取水堰側に用水が乗らなくなる。これは譲れない。
2013年6月27日

不連続提(かすみ提)方式を採用し、川幅の拡大を止める代わりに、急流を河の中心へ押しやって流水断面積を確保する。
2013年6月27日

不連続提の造成。この一週間、ダラエヌール(約20km遠方)から輸送する巨礫は、大型ダンプカーで300台分を投入、やっと形が見えてきた。
2013年6月27日

賽の河原のような巨礫投入。まだまだ努力は続く。
2013年6月27日

2010年7月30日の大洪水時のカマ第二取水堰。
今回はこの水量を上回る洪水だった。
2010年7月30日

現在の状態。対岸ベスードは川幅を極力広くとり、溢水を起さぬが賢明。
このため、1700m地点の崩壊は歓迎すべき。むしろ護岸線を後退させて川幅を拡大、急流を河の中心寄りに作り、次の洪水に備える。
2013年6月27日

カマII取水門の内側は何事もなかったかのように、一定の必要水量を送り続けている。
2013年6月27日

カマII取水門背面。今回で大洪水にも十分耐え得ることが実証され、カマ郡は更に豊かな農業生産を保障した。
2013年6月27日

大洪水時のカマ第一取水口。
ベスード側への溢水は、8月に第二波が襲い、被害を広げた。同年10月の護岸工事に伴い、取水口付近を1メートル以上かさ上げした。
2010年7月29日

現在のカマ第一取水堰と主幹水路の様子
2013年6月27日

カシコート取水門から上流約1㎞地点の根固めの洗掘(施工前)。洗掘部に幅60m、長さ70mほどの小さな島があり、この崩落部に連続していた。増水期に間に合わず、ひと夏を経てから施工する予定だったが、まさか島が全部消えたうえ、堤防に接する根固めまで流し去るとは思わなかった。
2013年6月22日

水制は応急措置としても優れた方法で、河床材料が弱い場所でも十分な効果を発揮する。
2013年6月25日

揚水水車の試験設置風景。カンレイ村(マルワリードE地区)は、用水路より田畑が高く、水をディーゼルポンプで上げていた。しかし、石油のコストが高く、貧しい農民に恩恵が行かなかった。話が出てから3年、やっと実現しようとしている。
2013年6月25日

設計は朝倉の水車に基づいている。ただし、材木が豊富に入手できない現地では、鉄製で作らせる。

第1作はPMS事務所で、職員の機械工・ザイヌッラーがジア先生の指導下で作ったもの。重量は材木の比重0.7、鉄の比重を9.5で計算して堀川の水車と同重量にし、バケットの体積、水切り、設置角度を模倣した。

試験は大成功で、稲刈り後の10月、鉄筋コンクリートで設置場所を作り、完成する。(現在、稲作で水を止められない)。
2013年6月25日

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