前の報告へ | 報告トップへ | 次の報告へ

揚水水車2号機を設置完了
~カンレイ村耕地40ヘクタールを回復
カシコート既存水路への結合完成、送水開始~

40日も留守の間に、連続堰や護岸工事はほぼ完成、カシコート主幹水路も植樹を残して完了に近づいています。揚水水車は、水路床面から5m 20㎝の高さまで汲み上げ、灌漑網が張り巡らされていました。

カンレイ村は、わがPMSにとっては有能な部隊の根拠地です。元ワーカー鈴木の厳しい指導下で育成されたグループは、今や欠かせぬ水門・サイフォンなどの構造物建設で重きをなしてきました。
しかし、かれらの耕地は用水路より5mも高い場所にあり、恩恵をなかなか受けられなかったのです。彼らの日当の殆どが食費に消え、それでも足りなかったのです。約100家族の食糧自給はかくて成りました。安心して今後もPMSで働けるということです。一同大いに士気が上がり、嬉しいことでした。

また、技術的にも地元勢の手で独自の工夫が可能なことが実証できたと考えています。

連続堰は99%完成しました。残る1%は、ひと夏を経て水位を観察、第②河道の形を整えて流量を調整することです。そのために必要な膨大な巨礫を現在蓄積しているところです。

ガンベリ開拓も着々と進められ、今年は職員の食糧自給を目指します。追ってその様子をお知らせします。

今年は異常気象です。昨年夏の大洪水の後、異常な渇水に見舞われ、農地の乾燥化が急速に進みました。河川の水量が少ないだけでなく、降雨がほとんどありません。たとい高山に雪が積もっても、暖冬ですぐに解けてしまいます。

3月まで見ないと断定できませんが、今年は進行する旱魃の、大きなピークが襲来する可能性が高いと予測されます。昨夏の大洪水の後始末がまだ終わってはいませんが、PMSとしては、せめてナンガラハル州北部三郡(シェイワ、カマ、ベスード)の守りを固め、安定灌漑を保障すべく、力を尽くします。
-- PMSの水利事業で灌漑される地域 --

政情も大統領選挙をめぐって奇々怪々、安全に特に気を遣いながら、拙速を慎みたいと考えております。



平成26年2月5日 記

改良を加えた揚水水車2号機。水車の直径5.5m、まだ小さな改良は残っているが、麦刈りまで現在のものを稼働。4月に各バケットを小さくして数を増し、揚水効率を高める。揚水量は現在一日1200トン
2014年2月5日

用水路底から高さ5.2mまで汲み上げる。まるで観覧車。汲み上げた水は水槽に注がれ、小サイフォンをくぐらせて高い畑地に流れる
2014年2月5日

造成された送水路。水車で汲み上げた水は、できるだけ高い位置から潤す。小さいとはいえども40町歩の村を養う。さすがに稲作は無理だが、小麦と野菜、豆類、果物なら十分だ
2014年2月5日

拡がる小麦畑。これまでポンプで揚水していたが、高い石油は高嶺の花、耕作を諦めかけていた。水車が小さな寒村にとっては救世主となった
2014年2月5日

カシコート主幹水路の終点にある沈砂池(調節池)。灌漑が本格的に始まった。排水路側は砂を吐き出すため、送水路側より約80㎝低い
2014年2月5日

低い位置にある排水路は土砂を多く含み、約3㎞先でクナール河へ戻される。一連の工事によって下手を脅かしていた洪水の恐怖は去った。ここは旧主要河道に相当し、自然にできた旧河床を下る。開墾が進めば、灌漑用水の排水路としても使える
2014年2月5日

送水門から沈砂池を出る送水路。あとは門番小屋の建設、植樹らの小さな仕事を残すのみ
2014年2月5日

既存水路へは、二つのサイフォンをくぐる。第一サイフォンは上流の村からの排水路、第二サイフォンは鉄砲水の流路をくぐる
2014年2月5日

第二サイフォンは幅20mの鉄砲水の流路をくぐる。かつて、気まぐれな鉄砲水が水路を破壊し、送水路を絶えず維持するのは困難になっていた
2014年2月5日

既存水路との連結部。取水可能量毎秒5トンに対し、既存水路の容量は毎秒約1.2トンが限界。PMSでは、水稲栽培の実現を目指して、既存水路の拡張を計画している
2014年2月5日

カシコート=マルワリード連続堰のマルワリード側。もろい砂礫の層が完全に巨礫の石張りに置換され、もはや堰の大きな崩壊は考え難くなった
2014年2月5日

マルワリード堰内の河道②は最も流量が多く、激しい流れを成すが、今は大きな手をつけない。とりあえず砂利で臨時の堰き上げを行い、ひと夏の状態を観察してから幅と高さを決定、石張りの緩斜面を造成する。予期せぬ高水位を避けるためだが、交通路が確保された現在、造作はないと見ている
2014年2月5日

かつて中州を成していた場所を通過する第③河道、第④河道の架橋。最終的な測量を行った後に床板を撤去する
2014年2月5日

カシコート取水門から上流1㎞地点の水制。昨夏の猛烈な洪水に鑑み、計5基の水制で激流をかわす。河川工事はまだ終わっていない
2014年2月5日


PMSの水利事業で灌漑される地域

1.各堰・主幹水路の灌漑面積と郡全体の耕地面積が一致しないのは、水系が重なること、湿害発生を避けるために取水量を制限していることによります。
郡全体の計が実態に近いものです。

2.行政の記録が余りに誇大な数字で、掲げたのはPMSの推計です。この根拠は、①衛星地図による面積の割り出し、②マルワリード灌漑面積と流量の実測に基づいて、取水量から生活可能な人口を推測したものです。

3.人口動態の正確な把握は、アフガニスタンでは至難の業です。これは、①数に無頓着な気風、②各郡全てパキスタンの北西部自治区と連続しており、国境が事実上なく、人口移動が自在に起きているからです。移動は、季節によるもの、政治的混乱によるものもありますが、最大の理由は地域で生活ができずに逃れてゆく者が多いということです。実際、安定灌漑が実現すると、人口の爆発的な増加が観察されています。従って、従来「アフガン難民」と呼ばれてきた集団は、相当数が経済難民、または干ばつによる環境難民と呼ぶのが妥当との結論です。

4.灌漑事業前後の人口変化は既に報告した通りで、以前の取水量から灌漑面積を推測し、養える人口を割り出すのが、不十分ではあっても、最も正確な数に近いのではないかと思われます。いずれもマルワリード用水路の実測値に基づいています。掲げたのは、2012年4月現在の推計で、カシコート堰については予定ではありますが、実現した場合は確実と思われる数字です。

前の報告へ | 報告トップへ | 次の報告へ