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連続堰の主要工事を完了
~年度内にカシコート既存水路との連結部を完成
東部の治安最低~

23日までにカシコート=マルワリード連続堰の難所は、全て制覇しました。小さな残余工事はありますが、年度内にカシコート地域の既存水路と連結され、送水が正式に開始されます。

振り返れば、最も多忙な年でした。2010年を上回る大洪水、その後始末、そして連続堰の仕上げ、ほとんど毎日を川辺で暮らしました。特にこの3カ月は、路上の戦闘で二日通れなかっただけで、現場に皆勤です。おかげで「カシコート」は確かな見通しがついた上、マルワリード用水路流域をも安定させました。

シギ取水口の消滅はさすがに予測できませんでしたが、連続堰の完成が確実となった現在、流量を増してマルワリード経由で送水、シギ全域を安定灌漑できるように計画が進められています。カマ第一・第二取水堰は完全復旧です。

揚水水車は長い懸案でしたが、朝倉の土地改良区の協力を得てコピーを作成、第2号機を予定通りカンレイ村に設置できました。

「めでたし、めでたし」と言いたいところですが、まだまだ先があります。東部の治安は秋になって坂を転げるように悪化、ジャララバード周辺だけで、毎日数十名の犠牲が出ています。犠牲者は殆どが罪のない人々です。

ジャララバードは、市内に失業者があふれ、物騒になってきました。そして、失業者の大半がスピンガル山麓の農村地帯から、干ばつで叩き出されてきた人々であることを、くり返し、くり返し、強調したいと思います。裕福な市民たちは大半がカブールに居を構え、餓えた人々の群が市中にたむろする。高級乗用車と豪邸が増える分だけ、犠牲者が増えてゆく。情報の密室で行われるこの蛮行を、人々は決して忘れないでしょう。死人に口なしと言います。口を失わぬよう、当分PMSは、河川工事以外の仕事のペースを落とし、用心を重ねながら、そろりそろりと参ります。

週報はしばらく休刊ですが、仕事は続いています。人々にとっては、本当に死活問題だからです。多くの犠牲者の冥福を祈り、今年ばかりは、新年のあいさつを控えさせていただきます。一年間、多大の御協力、本当にありがとうございました。お陰でどれだけの人が文字通り、生きる希望を得たか分かりません。

良いお年をお迎えください。

平成25年12月23日 記

河道②,③,④,⑤を左岸側から見る。河道①は、河道②と合して岩盤沿いを深く進み、中途で分かれる。
2013年12月23日

河道①,②を対岸下流から望む。①は5本の土砂吐きを持ち、河道①・②全体で河の約65~70%が通過する主流である。積年の願いであった「対岸処置」が進んでいる。河道②の左岸はかつて大きな中州があったが流失、堰先端の籠がかろうじて崩壊を防いでいた。今回は巨石で石畳を張り、頑強。
2013年12月23日

河道②左岸の作業地点。流失寸前だった砂利と籠を完全に巨礫と置換する。超大型の石を千鳥に埋め、その隙間にやや小ぶりの巨礫を詰める。幅500mの堰は、これで完全に石張りとなり、その面積は2万5千平米(約7600坪)、時間がかかるはずだ。こいつは流されない。石の上にも10年、ただ虚脱。
2013年12月23日

河道④の架橋部上流端。完全に復旧して更に頑丈になった。膨大な水面下の巨礫の山やコンクリート内の鉄筋は外から見えないが、岩盤そのものに近い。
2013年12月23日

拡大された河道⑥。左岸は堤防壁で浅い流れ。更に広げて、河道右岸も捨石工で低い護岸を施す。洪水下でも激流にならず、柳が根を張っている。
2013年12月23日

カシコート主幹水路(約1.7㎞)の蛇籠工は、上段約50mを残すのみとなった。これに柳枝工を加えて完成する。
2013年12月22日

調節池(沈砂池)の送水門から約50m地点
2013年12月23日

上の写真の水路下流から二つのサイフォンをくぐって既存水路へ連結される。サイフォン1は約5m、排水路をくぐる。
2013年12月23日

サイフォン2は、洪水路をくぐらせる。長さ約20メートル。その直後から既存水路に連結。
2013年12月23日

揚水水車2号機。設置を終え、送水路を建設中。
2013年12月23日

製作者は、ジア医師とザイヌッラー機械工。モノづくりが好きな職人で、呑み込みが早く、仕事一途の稀な性格。写真を見て寸法を尋くだけで納得、改善を重ねて丈夫なものを作った。このような人は現地で稀だが、わがPMSの中に少なからずいる。
2013年12月22日

水受けの基本原則も受け継がれ、水路床面から3.6mの高さまで水を揚げる。これが数十家族の生活を支える。ポンプのガソリン代が要らず、維持が楽なことは、現地農民にとって最大の魅力。
2013年12月23日

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