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トピックス2020.8.18

現地活動の報告―6月26日(PMS & PMS支援室 記)
皆様、お元気でお過ごしでしょうか。
アフガニスタンは断食のラマダン月が明けて、イードの祝いで5月23日から3日間祭日となりました。毎年支援室からPMSの各事業の責任者たちに電話で「イード、ムバーラク=イード、おめでとう」を伝えますが、今年はコロナウイルスの最中でしたので、「いつもなら親戚を訪問し互いに祝うが、今年は電話で挨拶をしただけで寂しく感じている」と皆が口を揃えて話しました。
イード祭日後は通常通りの勤務体制に戻る事を皆期待していましたが、政府から勤務時間は8時から午後13時との通達がありPMSも従っております。

PMSでは3月中頃に体調の悪い職員が2名いましたが、コロナウイルスに感染しておらず仕事に復帰しました。
イード祝日前にジャララバード市内への道路封鎖とバザールの規制が緩和された後からPMSの職員に体調不良を訴える者が出続けるようになりました。
6月12日までに合計19名が、発熱をはじめ風邪の症状や下痢などの症状で自宅療養をしております。マラリアと腸チフスの検査が陽性に出る人も多く、全員が抗マラリア薬と腸チフスの治療をしています。お陰様で重症化する職員はなく、快方に向かっているとの事。既に回復し仕事に復帰している職員もいます。熱が下がるとすぐに仕事に来るので、ジア先生が2週間は自宅で療養するように指示しています。

職員たちが一人、二人と体調不良になる事を知るにつれ不安がつのって行き、この状態のなかで私たちに何が出来るかと必死に考えました。結果、村上PMS総院長の指示のもと実行されたのは、PMS職員101名への食糧配給です。
コロナウイルス感染機会の多いなかダラエヌール診療所で休むことなく診療活動を続行し、農地復旧のため堰・用水路の建設作業や食糧生産や研究・村人への農業指導をも担っている農業事業を着々と進めています。まずはこのようなPMS職員たちが元気に働ける事が先決でした。幸い、ガンベリ農場では小麦の収穫が終わったばかりで、来年の種を残し配給。養蜂も集蜜作業が始まっていましたので小麦と一緒に配給されました。ジア先生から、蜂蜜は免疫力を高めるのでコロナウイルス感染を心配する職員や家族たちには有難い、主食の小麦粉の価格が上がりつつある中で心配がなくなった。それだけではなくこの食糧配給で職員全員がとても励まされたと連絡が来ました。
ジア先生の配慮で昨年12月に亡くなった中村先生付きのザイヌッラー運転手のご遺族と、2000年の井戸掘り事業から中村先生と共に働き、2001年10月の空爆下での食糧配給や用水路建設に尽力したタラフダールさんにも届けられました。(彼がいなければ空爆下の食糧配給は難しかった。風貌と声にも迫力があり人望の厚い彼の指導力を見込んで、中村先生はいつもタラフダールさんを用水路を堀進める先頭に配置していた)

現地事業では以下の作業が計画通りに進められています。
1. マルワリードⅠ用水路の上に渡されている洪水通過橋の拡幅工事(E区バルカンデイ村)
計画では15mを倍に拡幅する予定が、土地の確保が出来ず橋の両端を各1.5m広げ18mとなりました。

2. マルワリードⅡ(カチャラ堰)
●排水路4全長3,500mの整備 1,500mまで掘削が終わり柳の挿し木をする
●護岸工事―護岸は当初8,400mの予定が8,900mに延長。洪水期に入り石出し水制の補強や護岸高の嵩上
●新ベラ延長水路2,300mに6月4日着工-村人が自力で水を引いた新開地でスイカと小麦の収穫
●スイカ:市場で売れるほど大量にとれている

3. ガンベリ農場
●小麦の収穫:今年は長雨のためさび病が発生し昨年より収量が5,000kg少なかった
●蜂蜜:6月に入り集蜜開始
●田植え

4.ダラエヌール診療所
●ハフィズラ医師がコロナウイルスに感染し、1名の医者で診療続行
●マラリアの患者が時期的に増えている 1日に4~5名程

ガンベリ公園に建設中の中村先生の記念塔が先端まで見えて来ました。現在先生の顔写真を塔の中間部に掲げるための準備をしています。初めはどこからでも顔を見えるようにと4面に置く予定でしたが、ビームがあるため2面に掲げることになりました。6月中の完成を予定しています。
PMS支援室一同/2020年6月26日

▼マルワリードⅡ堰流域の地図。 護岸線4,0~4,6km、5,0~5,7km、6,5~7,2km区間は、特に洪水による浸食と溢水の被害が予測される。その為、護岸表法と水制のさらなる強化が行われている。

▼マルワリードⅡ堰流域、護岸線5.0km~5.7km地点。同地は対岸にC岩盤から続く他団体が作った高堤防があり、洪水時に浸食が起きていた箇所である。巨礫で石出し水制の補強を行う。2020年5月27日

▼同地点堤防表法。ディダール技師が、5月中旬からPMSで働き始めた若手のワヒドゥラー技師に護岸や水制工の説明を行っている。 2020年5月27日

▼護岸線終点8.9km地点。7.2km地点以降は護岸高を2.5mで造成していたが、8.5~8.9km区間の堤防高を1.3mとやや低く造成している。過度な増水の際には溢水させ、周辺耕地は遊水地として畑のみの利用とし、被害を最小限に抑える。2020年5月27日

▼排水路4(全長3,500m)の800m地点工事風景。調節池Ⅲ以降の排水が最終的に排水路4に集約され、護岸線8.9km地点でクナール河に戻る。現在1,500m地点まで工事が終了、工事先端は2,000m地点。2020年5月27日

▼新ベラ延長路造成風景。 PMSは主幹水路5.6km地点で既存用水路に接続していたが、ベラ村下流では耕作地がさらに拡大し、農民が自らビニールで水を導き、灌漑を行っていた。村人たちからの依頼があり、既存水路2.3kmの改修工事を6月4日に開始した。一時的な分水路を掘削し、灌漑は継続している。2020年6月7日

▼ベラ村下流域のスイカ収穫風景。護岸の造成と用水路整備により開墾が進み、元々荒蕪地であった同地で初となるスイカが大量に収穫された。この地域は1.5km付近と同様、遊水地として利用し、居住を禁止している。2020年6月10日

▼ベラ村の住人からスイカの差し入れがあり、水制の先端で涼みながら新鮮なスイカに舌鼓を打つ。2020年5月27日

▼マルワリード用水路E地区の洪水通過橋。現在の幅15mでは狭く、度々渓谷からの土石流が両脇の用水路に流れ込み、水路の修繕が必要であった。本来は30m以上に拡張する予定だったが、住民が家屋の立ち退きを拒み、両側1.5mずつの拡張となった。橋下流部の地面との接合部には洗掘防止のため巨礫を敷き詰める予定。2020年6月15日

▼同洪水通過橋側壁の造成。日中は35度を超える暑さの中、コロナウィルス対策のため、マスクを着用しながらの作業となっている。2020年6月15日

▼カマ第一取水門。水門の高さは水路床面より3.5m。増水期真っただ中で、水門上部までクナール河に浸かっている。2020年5月31日

▼カマ第二取水門下流側。隣にはカマ郡住民が自ら建設した中村医師の記念碑。何度も改修を重ね、PMS方式の「生きた模型」となったカマ堰を見守っている。2020年5月31日

▼ガンベリ農場入口に設置された門。アーチ部にはドクター・ナカムラ・メモリアルガーデンと刻まれる予定。2020年5月31日

▼ドクターサーブ・ナカムラ記念塔の現在。外観がはっきりとわかるようになった。中村医師の写真がはめ込まれる予定。今月の完成を目指している。2020年6月10日

▼ガンベリ農場、苗床作りの現在。間近に迫った田植えに向け、苗は青々と波打っている。2020年5月31日

▼牛舎の様子。2014年に子牛3頭、乳牛2頭から開始された畜産は47頭に増えた。毎日100kgの原乳をもたらしてくれる。2020年5月31日

▼養蜂事業では待ちに待った採蜜が行われた。ガンベリでは1年を通し柑橘、ユーカリ、ビエラと順に開花し、今回は主に柑橘類の花から集められている。2020年6月2日

▼蜜蓋を取り除いた後、遠心分離機にかけ採蜜。2020年6月2日

▼ガンベリ農場で行われた麦刈りの様子。2020年6月2日

▼収穫した小麦約58,600kgのうち、約5,700kgは来年の種子として保持する。2020年6月2日

▼新型コロナウィルスの影響で現地の物価が高騰しており、今回収穫した小麦と蜂蜜はPMS職員へ配給された。2020年6月10日