Top» 事務局からのお知らせ» 掲載日:2025.9.3
アフガニスタン東部での地震被害と
PMS/ ペシャワール会の連携
PMS総院長/ペシャワール会長 村上優
アフガニスタン現地時間8月31日23:50頃(日本時間9月1日4:20)にクナール州を中心に、マグニチュード6.0の地震がありました。当初死者800名と報道がありました。その後、死者は1400名に増え、山岳地域の交通が遮断されて情報が閉ざされているため、時間とともに被害者は増えるのではないかと危惧されます。阪神淡路大震災、熊本地震と同様の直下型地震で被害地域は集中しています。
アフガニスタン全土はユーラシアプレートとインドプレートが衝突してできたヒマラヤ山脈・カラコルム山脈・ヒンズークッシュ山脈の連なりの西にあり、地震の多発地帯で、地理的な条件は日本と共通しています。特にパキスタン北部やアフガニスタンは度々大きな地震が起こっており、最近では2023年のヘラートでの地震が記憶に新しく、1千名以上が亡くなっています。中村哲医師が活動を始めてからの40年に限っても、地震は幾度もありました。この地域の家々は簡単な石積みや日干し煉瓦で建てられており、耐震という点では大変脆弱で、大きな人的被害が生じます。
米国地質調査所(USGS)の発表では今回の震源はナンガルハル州ジャララバードの東北東27㎞で、PMS(平和医療団・日本)の作業地と重なります。PMSが大河川クナール河での作業候補地として、以前取水口や堰の調査に入ったクナール州のヌールガル郡辺りで、今回の最大の被害が起きています。この地域は直前に大雨が降り、地盤が緩んでいたことも被害拡大に関与している可能性があります。
今回の地震でジャララバードに居住するPMSスタッフに直接の被害はありませんでした。また、第10次訪問団としてジャララバードに入っている藤田PMS支援室長ほか3名の日本人も深夜に強い揺れを体験しましたが、全員無事でした。いち早くPMSのエンジニアがマルワリード用水路などの取水門、堰、用水路を視認した結果、現時点での被害はないとのことでした。ただ堰の石積みに緩みや歪みがあれば水圧により損壊する可能性は否定できず、これから先の観察が必須です。
地震直後に藤田PMS支援室長から次のような報告がありました。「事務所のあるジャララバード市内での大きな被害は聞いておりませんが、震源地のクナール州に隣接するPMSのダラエヌール診療所では、周辺の日干し煉瓦造りの家屋の倒壊でかなりの怪我人がでて、夜通し治療に追われていた」。
夜が明けてPMS副院長のジア医師が事務所に戻り、藤田支援室長に、PMSが支援できることがあれば支援したい旨、PMS職員の総意として伝えました。9月2日早々に報告を受け、村上からは「PMSの方針を全面的に同意して支援する、PMSの皆さんと私たちは共に在ります」と伝えました。
2日早朝、ジア医師一行は被災地に向け、被害状況の把握に出発しました。交通路が遮断されているクナール州ヌールガル郡マザールダラの調査は、時間がかかるため泊まりになるかもしれないとのことです。PMSとしては、本来の業務をさて置いて、まずは人命救助のために集中して協力していきます。
現時点では、まずは倒壊した家屋等の下での人命救助を最優先、時間との戦いです。日本から遠いアフガニスタンですが、命に手を差し伸べる務めに励みたいと思います。支援者の皆様、アフガニスタンの被災者が無事であるようお祈りください。
PMSが把握している地震被災の状況と対策案(9月1日、19時現在 藤田室長報告)
被災地域
① クナール州 ヌールガル郡マザールダラ村とソウケイ郡ディワガル村
2カ村の家屋ほぼ倒壊、882人死亡、負傷者2900人、本日も余震が続いている。マザールダラ村は交通路が完全に塞がれ、空路でのみ救助活動可能、ディワガル村は4輪駆動車でなければアプローチが不可である。両村はヘリでの救助が実施され、クナール州の他地域、ナンガラハル州へ負傷者が搬送された。ナンガラハル州知事、保健局長他が医療チームとともに即クナール州へ向かい救助活動の手助けをした。また、ナンガラハル州から公立病院、個人病院やクリニックからも多くの救急車が被災地へ向かったが、車両のアプローチは難しい状況。
② ナンガラハル州 ダラエヌール郡スータン村及びワイガル地方
2地域の家屋ほぼ倒壊、12人死亡、負傷者250人。ダラエヌール診療所からの報告では、余震が続き午前9時は強い揺れだった。最後の余震は正午であった(ジャララバードでも同様に揺れた)。救急車が被災地へ向かい救助活動がなされた。PMSのダラエヌール診療所へも立ち寄り、状況が伝えられた。
③ ラグマン州
15名死亡、負傷者150人
④ ヌーリスタン州
負傷者15名
PMSとして;
以上の状況から、PMSは3チームで、被災地のクナール州2カ村、ダラエヌールの2地域を視察し、そのうえで以下の支援が必要とされているかどうかを判断。
① 重機(バックホー、ブルドーザー、大型トラック)の優秀なオペレーターが揃っているので、必要であれば交通路の整備に直ぐにでも協力できる
② 被災地での負傷者の治療又は薬品、医療物資
③ 生存者が収容された避難所での不足物資の支援(食糧、衣料、生活用品など)