2004年度の医療事業報告 及び2005年度の計画 ペシャワール会現地代表・PMS(ペシャワール会医療サービス)総院長 中村哲 |
ペシャワール会報84号より (2005年06月29日) |
2004年度は、ダラエピーチ診療所(沖縄ピース・クリニック)、ワマ(ヌーリスタン)診療所の2つを失った。
その顛末は会報83号に紹介したので繰り返さない。
これが軍事活動=復興支援の結末かと、病院職員一同が悲しみ、寒々とした気分にならざるを得なかった。
だが、住民の陳情に応えて、「一時撤退」の姿勢を崩していない。
長期的には、住民に必要とされる限り、戻るつもりである。 パキスタンのラシュト診療所、アフガニスタン・ダラエヌール診療所はこれまで通り。 特に唯一残されたアフガン側の診療所では、地域全体をPMS管轄とし、より質の高い診療充実を目指している。 ペシャワール基地病院は、数少ないアフガン難民の診療施設として、逆に重要性を増している。 殆どの医療団体と医師層がカブールに移ったにもかかわらず、貧困な難民層は依然としてペシャワールにも多数存在する。 また、ハンセン病の合併症をまともに診療できる施設が皆無の中、他病院と競合せぬよう、皮膚・神経疾患を重点的に診られるよう配慮している。 年度実績は下記表の通り。 |
国名 | パキスタン | アフガニスタン | ||||
地域名 | ペシャワール市内 | チトラール地域 | ニングラハル州 | クナール州 | ヌーリスタン地域 | |
病院・診療所名 | PMS病院 | ラシュト診療所 |
ダラエ・ヌール 診療所 |
ダラエ・ピーチ 診療所 |
ワマ 診療所 |
総数 |
外来総数 | 39,675 | 4,754 | 43,747 | 31,519 | 10,228 | 129,923 |
【外来の内訳】 一般外来 |
38,662 | 4,745 | 40,765 | 29,596 | 9,877 | - |
らい | 75 | 2 | 1 | 6 | 0 | - |
てんかん | 699 | 1 | 261 | 90 | 10 | - |
結核 | 63 | 0 | 17 | 2 | 0 | - |
マラリア | 176 | 6 | 2,703 | 1,825 | 341 | - |
入院総数 | 1,291 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1,291 |
【入院患者の内訳】 らい |
169 | - | - | - | - | - |
らい以外 | 1,122 | - | - | - | - | - |
外傷治療総数 | 4,239 | 157 | 773 | 1,591 | 1,530 | 8,290 |
手術実施数 | 33 | - | - | - | - | - |
検査総数 | 24,568 | 2 | 7,282 | 7,291 | 355 | 49,733 |
【検査内訳】 血液一般 |
2,926 | - | 1,032 | 909 | 30 | - |
尿 | 2,865 | - | 1,215 | 1,343 | 65 | - |
便 | 1,904 | 1,125 | 1,478 | 112 | - | |
抗酸性桿菌 | 293 | - | 0 | 76 | 0 | - |
マラリア・リーシュマニア | 1,785 | 1 | 3,231 | 2,828 | 148 | - |
その他 | 14,795 | 1 | 679 | 657 | 0 | - |
リハビリテーション実施数 | 7,045 | - | - | - | - | - |
サンダル・ワークショップ実施数 | 117 | - | - | - | - | - |
検査総数 | 24,568 |
【検査内訳】 血液 | 2,926 |
尿 | 2,865 |
便 | 1,904 |
らい菌塗沫検査 | 113 |
他の抗酸菌検査 | 293 |
マラリア血液フィルム | 1,696 |
リーシュマニア | 89 |
生化学 | 3,012 |
レントゲン | 3,895 |
心電図 | 768 |
超音波断層写真 | 768 |
心エコー | 214 |
病理 | 0 |
細菌 | 0 |
体液(脳脊髄液・腹水等) | 24 |
その他 | 2,052 |
内視鏡その他 | 542 |
■2005年度の事業計画 ペシャワール基地病院はハンセン病および類似疾患、皮膚―神経疾患に重点を置いて改善し、診療の量よりも質を高める方針をとる。アフガン内のダラエヌール診療所は、渓谷全体の人口をより充実して診療し、モデル・ケースとなるよう集中する。医師数は激減したが(8名)、活動地域の縮小があり、十分可能である。 |