2004年度の水利事業報告 及び2005年度の計画 ペシャワール会現地代表・PMS(ペシャワール会医療サービス)総院長 中村哲 |
ペシャワール会報84号より (2005年06月29日) |
■飲料水源確保事業
飲料水源(井戸)事業 2005年3月末現在、作業地、利用可能な水源数は表4のとおり。しかし、この中にはトルハム国境のように、大きな給水塔を備えて数本で地域全体(約5千名以上)をまかなうものから、僅か数家族しか使えぬものまで、様々である。さらに、ダラエヌール・ブディアライ村のように人口の少ないところに密集したり、アチン郡のようにまばらに散在するなど、地域によってまちまちである。 2004年度はこの状態をいったん解消、数は少いが恩恵が多くの人々に及ぶよう、態勢立て直しの努力が開始された。 用水路(真珠川)事業 2003年度以来、最大の力を注いできた本事業は、着工から2年、04年度末になって、やっと本格的な展望が開けた。04年4月に始まった沈砂池(取水口から1.6km)造成は、1年がかりで完成、これによって夏の濁流を清水に変え、浚渫の手間がかからぬ質の良い水を送れるようになった。 |
両端に挿し木したコリヤナギの成長は予想以上で、時期の良かったものは、1年で4m以上成長、取水口から沈砂池まで緑のベルトが続いている。現在約6km地点まで、水路沿いに更に6万本が挿し木されて緑を伸ばそうとしている。 また、現地の専門家をして「奇跡」と呼ばしめた高い岩崖周り(取水口から4〜5km地点)の水路は、周囲1.1kmの長さにわたって、高さ17m、幅40m以上を埋め立てて頂点を掘削、蛇篭(ふとん篭)を両岸の骨格とし、PMS独自で開発した軽量セメント(現地の一般的な土である「ハウル」に2%前後のセメントを混ぜたもの)を岩石の隙間に流し込み、成功したものである。一般に盛土上のセメント構造の水路は、ヒビが入ると隙間から漏水、泥土が流出して大きな決壊につながるが、使用した「軽量セメント」は、表面は一見モルタルに似ているが、土の性質を残しているので、小さな漏水があれば膨張した粘土塊となって隙間を詰める。1ヶ月間水を流し続けて観察、殆ど漏水しないことを確認し、2005年5月20日、公式に「クズクナール地域480ヘクタール灌漑」をニングラハル州政府に報告した。 水路の梗概は7頁の報告書の通り。流量は予想をはるかに上回り、最大可能流量が毎秒8トン以上、その10パーセント以下の分水量で、小麦やトウモロコシなら500ヘクタールを灌漑できることが実証された。損失水量を考えても、確実に数千ヘクタールの旱魃地帯を灌漑し得る。工事の速度は、一挙に加速された。2005年6月9日現在、工事の最先端は10.4km地点まで一気に伸び、7km地点までの通水を確認している。 ■井戸・灌漑事業 井戸事業 上半期は完成井戸の住民への譲渡=自主管理を徹底して進め、下半期から公共性の高いもの(数少なく且つ受益者の多いもの)を着実に積み上げてゆく。住民が独力で出来るものは手をつけない。 灌漑事業 マルワリード(真珠)用水路の10km地点までの年内完成。ブディアライ村の暴れ川の治水。最終地点までの用地収用を確実に進める。 |
飲料井戸 | 灌漑井戸 | カレーズ | 計 | |
ダラエヌール | 400(337) | 11(9) | 38(38) | 449(384) |
ソルフロット郡 | 538(447) | 538(447) | ||
ロダト郡 | 256(225) | 256(225) | ||
カイバル峠 | 4(2) | 4(2) | ||
アチン郡 | 171(171) | 171(171) | ||
スタッフ用 | 20(17) | 20(17) | ||
その他 | 15(11) | |||
計 | 1,404(1,210) | 11(9) | 38(38) | 1,453(1,257) |
■職員(2005年07月現在) 臨時雇用職員(水利関係):134名 作業員:約650名 |