2004年度の水利事業報告
及び2005年度の計画

ペシャワール会現地代表・PMS(ペシャワール会医療サービス)総院長
中村哲
ペシャワール会報84号より
(2005年06月29日)

飲料水源確保事業

トルハムに建設中の給水塔
(2005年6月25日撮影)

飲料水源(井戸)事業

2005年3月末現在、作業地、利用可能な水源数は表4のとおり。しかし、この中にはトルハム国境のように、大きな給水塔を備えて数本で地域全体(約5千名以上)をまかなうものから、僅か数家族しか使えぬものまで、様々である。さらに、ダラエヌール・ブディアライ村のように人口の少ないところに密集したり、アチン郡のようにまばらに散在するなど、地域によってまちまちである。
 2004年度はこの状態をいったん解消、数は少いが恩恵が多くの人々に及ぶよう、態勢立て直しの努力が開始された。

用水路(真珠川)事業

2003年度以来、最大の力を注いできた本事業は、着工から2年、04年度末になって、やっと本格的な展望が開けた。04年4月に始まった沈砂池(取水口から1.6km)造成は、1年がかりで完成、これによって夏の濁流を清水に変え、浚渫の手間がかからぬ質の良い水を送れるようになった。


用水路(護岸のための柳も育っています)
(アフガニスタン 2005年7月9日撮影)

両端に挿し木したコリヤナギの成長は予想以上で、時期の良かったものは、1年で4m以上成長、取水口から沈砂池まで緑のベルトが続いている。現在約6km地点まで、水路沿いに更に6万本が挿し木されて緑を伸ばそうとしている。

また、現地の専門家をして「奇跡」と呼ばしめた高い岩崖周り(取水口から4〜5km地点)の水路は、周囲1.1kmの長さにわたって、高さ17m、幅40m以上を埋め立てて頂点を掘削、蛇篭(ふとん篭)を両岸の骨格とし、PMS独自で開発した軽量セメント(現地の一般的な土である「ハウル」に2%前後のセメントを混ぜたもの)を岩石の隙間に流し込み、成功したものである。一般に盛土上のセメント構造の水路は、ヒビが入ると隙間から漏水、泥土が流出して大きな決壊につながるが、使用した「軽量セメント」は、表面は一見モルタルに似ているが、土の性質を残しているので、小さな漏水があれば膨張した粘土塊となって隙間を詰める。1ヶ月間水を流し続けて観察、殆ど漏水しないことを確認し、2005年5月20日、公式に「クズクナール地域480ヘクタール灌漑」をニングラハル州政府に報告した。

水路の梗概は7頁の報告書の通り。流量は予想をはるかに上回り、最大可能流量が毎秒8トン以上、その10パーセント以下の分水量で、小麦やトウモロコシなら500ヘクタールを灌漑できることが実証された。損失水量を考えても、確実に数千ヘクタールの旱魃地帯を灌漑し得る。工事の速度は、一挙に加速された。2005年6月9日現在、工事の最先端は10.4km地点まで一気に伸び、7km地点までの通水を確認している。


井戸・灌漑事業

井戸事業

上半期は完成井戸の住民への譲渡=自主管理を徹底して進め、下半期から公共性の高いもの(数少なく且つ受益者の多いもの)を着実に積み上げてゆく。住民が独力で出来るものは手をつけない。

灌漑事業

マルワリード(真珠)用水路の10km地点までの年内完成。ブディアライ村の暴れ川の治水。最終地点までの用地収用を確実に進める。

表4.水源確保事業の現状
  飲料井戸 灌漑井戸 カレーズ
ダラエヌール 400(337) 11(9) 38(38) 449(384)
ソルフロット郡 538(447)     538(447)
ロダト郡 256(225)     256(225)
カイバル峠 4(2)     4(2)
アチン郡 171(171)     171(171)
スタッフ用 20(17)     20(17)
その他 15(11)      
1,404(1,210) 11(9) 38(38) 1,453(1,257)


職員(2005年07月現在)

臨時雇用職員(水利関係):134名
作業員:約650名



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