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2007年度の水利事業報告
及び2008年度の計画

ペシャワール会現地代表・PMS(ペシャワール会医療サービス)総院長
中村 哲
ペシャワール会報96号より(2008年06月25日発行)



■用水路建設
2003年3月に着工した全長13キロメートルの用水路は、2007年4月、4年の歳月をかけて第一期工事を完了した。 第二期は6,8から8,5キロメートルに延長され、直ちに工事が始まった。
既に無政府状態で治安当局からしばしば警告があり、08年に日本人ワーカーを退去させざるを得ない事態を想定、「いのちの基金」全てをはたいても敢行すべく、これまでにない大掛かりな工事が急ピッチで進められた。 しかし、第二期工事ルートも予想以上の難所が多く、切り通しトンネル、3つの貯水池造成、土石流の渓谷通過、大がかりな岩盤巻き上げ工事など、多大な努力が払われた。

予定した年度内完成は実現できなかったが、08年5月現在、5,8(総延長18,8)キロメートル地点までを完成、潅水が始まった。
工事先端は予定の21,5キロメートル、最終目的地の「ガンベーリー沙漠」に達した。

08年秋までに完成することは確実になった。この結果、広大な面積(約1,500町歩)がマルワリード用水路(Japan Canal)の直接灌漑に浴し、数ヵ月後に沙漠に潅水が始まると計3,000町歩が耕作地となる(下記の第二期工事概念図参照)。

2007年秋から冬にかけて、東部アフガニスタンは異常な川の低水位、少雨に襲われた。 東部一帯はコメとトウモロコシの収穫が壊滅に近かった。ジャララバード北部の最大の農村、シェイワ郡とベスード郡を潤す用水路の取水も困難となり、一時は危機的な状況であった。 シェイワでは自然河道の回復と堅牢な取水堰の建設が行われ、ベスードでは大掛かりな堰上げ工事が行われた。
この結果、他地域で飢饉が進行する中、両者で計4,500町歩がかろうじて救われ、平年より25パーセント増の小麦収量を得た。

■井戸事業
2007年4月に飲料水源は1,550ヶ所を超えた。しかし、水路沿いを除けば、地下水位の下降は依然として続いており、楽観はできない。 新たな試みはマルワリード用水路からの汲み上げポンプなど、地表水の有効利用に希望をつないで仕事が進められた。

▼第二期工事概念図