アフガンいのちの基金No.34
「 アフガニスタンの政情変化に伴うペシャワール会の活動」

PMS病院長 中村哲
2001年11月13日(火)

ご承知のように、去る11月13日にカブールが北部同盟によって占領され、アフガンの政情はますます混乱を加えています。会員の皆さまの中には、「今後のペシャワール会の活動はどうなるのか」と不安に思う節もあるので、私たちの今後の計画についてお知らせ申し上げます。
 先ず、いかなる権力交代、政情変化があっても、私たちの基本的方針はいささかも変わらぬことを言明致します。この18年間、さまざまな闘争や権力の変遷がありましたが、アフガンの人々に密着した活動には決定的な影響がなく、少しずつ拡大発展してきたいきさつがあります。今回の政変は、過去の動乱のひとコマですが、「いのちの基金」はこのような混乱期であればこそ、日本国民の良心を示す力として有効に活用して参ります。
 とはいえ、戦場に等しい状態で吾が職員を危険にさらすことを避けるため、多少の修正はやむを得ないと判断されます。当面、以下を実施いたします。

1.
カブール情勢は混沌として、先の見通しが立つまで今少しの時を要する。また、国民の三分の二を占める多数派民族、パシュトー系の人々が虐殺を恐れて東部へと移動している。大半はラグマン州やジャララバードに移動中である。カブールには食糧をはじめ、豊富な物資が各国政府や国連団体から入る可能性が強まったので、食糧配給の重点をこれら迫害から逃れてくる貧困な避難民に置く。現在ペシャワールで買付け・輸送を準備していた残り約3,500トンを、あわせて干ばつ地帯や爆撃被災民と共に、これに配給する。

2.
東部の干ばつ地帯でペシャワール(パキスタン領内)への難民を出さぬ努力に全力を投ずる。即ち、農業および飲料水源の確保事業。既設のPMS(ペシャワール会医療サービス)各診療所を拠点とする医療活動の充実。

3.
ペシャワール会=PMSは翼賛団体ではない。各国NGOや国連機関とは協力関係を保ちつつも、援助ラッシュには基本的に参加せず、より困窮する地域と人々に対し、長期的展望で有効な支援を続ける。ニーズは無限大であるが、「いのちの基金」は末永く日本国民の自発的な良心の力として実事業に投ぜられる。政治や宗教的立場を超え、真に良心的な復興・救済事業をアフガン住民、なかんずく軽視されやすい弱者を重視して進めてゆく。国民の募金者に実績を定期的に報告する。


具体策は、ここ数週の動きを見ながら決定し、第二次計画の実施に移る。


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