アフガンいのちの基金No.69 「いのちの基金/第二期計画 原案」 「緑の大地」計画 PMS院長 中村 哲 |
2001年12月27日 |
カブールへの食料配給は現在、続々とWFP(世界食糧計画)を先頭に各国NGOが殺到する中で、一つの山場を越した。わがPMS職員が空爆下を決死の思いで1400トンの小麦を配給した。日本国民の良心を体現するその意義は、限りなく大きかったといえる。事実、その後多くの団体が我々の後に続いた。PMSは特に十分な地域住民との協力によって、空爆と餓死に直面する最も貧困な層、十数万人を当面の危機から救ったのである。寄せられた基金は既に5億円に迫る。来春を以て「アフガンいのちの基金」は一旦区切りとするが、PMS=ペシャワール会は、更にこの善意の基金をアフガン農村の復興へと振り向け、旱魃にあえぐ農民たちの自給自足を促す予定である。 今後、ペシャワールの蓄積分3000トンは東部へ逃れたカブールからの避難民、旱魃と空爆でジャララバード周辺農村へ避難した人々へと届けられる。なお、サルシャヒ難民キャンプは無視された住民たち約600家族がいると伝えられるので、食料を主とする越冬のための援助を行う。断食月明けのイード後に直ちに配給を完了する。厳冬下でジャララバード方面に下りてくる人々はなお続くとみられる。東部の安定はパキスタンへの大量国外難民を避ける上で重要な意義をもつ。水源確保計画は現在の規模を年内は続け、大きな展開を避ける。本格的な第二期計画は1月と2月に実地調査を十分行って詳細を決定、組織再編成を行った後に長期展望で実施する。本格化するのは2002年春と見られる。編成は以下のように改組する。 |
名称 | 期間 | 総予算 |
1.PMS水源確保計画 | 2002年1月から3年間(再編) | 約2.7億円 |
2.PMS食料配給計画 | 2001年12月から2002年3月 | 約1.2億円 |
3.PMS医療計画 | 2002年1月から5年間 (診療所の一部は継続) |
約1.5億円 |
4.農業研究・教育部 | 2002年3月から5年間 | 約0.6億円 |
活動地域はニングラハル州、ラグマン州、クナール州などの東部に限定、ダラエ・ヌール渓谷のみは「特別モデル地域」とし、PMS基地病院直轄で総合的な支援を優先的に行う。ジャララバード事務所は、PMS統合支部として、医療、食料配給、水源確保計画を総合管理する。カブールPMS事務所は行政との接触のために残す。主要人事は日本人を含み、ペシャワールから直接派遣。活動の合法性は、アフガン政府との直接交渉、地域のジルガ(長老会)との協力で行い、あくまで現地のニーズを重視して、国連や外国諸団体と競合しない。彼らの出来ない地域を優先する。予算は総額約6億円(食糧計画は既に支出)。ただし、「予算消化」の事業はしない。ニーズは無限大に近いから、やれる所を確実に事業遂行する。実現すれば、約100万人の農村地域の自給自足を可能にすることができる見込み。
■医療活動 |
1. | PMS病院内に移動診療部を設置、アフガン山村部とくに旱魃地帯の診療を主力とする。 |
2. | PMS臨時診療所を新たにラグマン州、ニングラハル州のソルフロッド郡とカマ地域に置き、フィールドワークの拠点とする。クナール州については、既設の診療所を拠点として行う。輸送部を強化して、ペシャワールに近い地区ではPMS病院との連絡を密にし、重症患者のケアを行う。ラグマン州の患者はカブールの他組織の病院に移送する。 |
3. | 将来パキスタン側の自治区が安定すれば、北西辺境州政府と協力して、バジョウルとモハマンド管区でのフィールドワークを開始する。 |
4. | 以上は、PMS基地病院の臨床訓練・輸送・事務機能の強化が前提である。このため、 1)日本から更に積極的に長期医療ワーカー受け入れ開始。 2)医師・看護士・検査の増員と再訓練徹底。 3)強力な輸送体勢の確立。 4)事務・連絡機能の強化。 |
5. | カブール臨時診療所(5ヶ所)は年度内は継続。他団体が押し寄せれば、ダシュテ・バルチー診療所などスラム地区のみ残して閉鎖。ラグマン州、ニングラハル州など東部へ移転。 |
■水源確保計画 (Water Supply Project) |
地域 | 飲料水源 | 潅漑用水源 | |
1、 | ニングラハル州 | ||
ダラエ・ヌール渓谷 | 100 | 50 | |
ソルフロッド郡 | 350 | 20 | |
ロダト郡 | 250 | 20 | |
アチン郡 | 300 | 20 | |
チャプラハル郡 | 100 | ||
カイバル峠(トルハム国境) | 2 | ||
2、 | ラグマン州 | 600 | |
3、 | クナール州 | 200 | |
4、 | その他 | 200 | 40 |
以上で飲料水源2002カ所、今回は潅漑用水源を特に重視、150カ所を目指す。灌漑水源はカレーズ、ジューイ(高地から引く小川)、河川沿いの灌漑井戸などを手がけ、井戸掘りとは別に組織する。但し、実施する地域、数、期間は、実情を見て修正があり得る。 ■食料配給計画 1.配給の主力を、ジャララバード周辺域(サルシャヒ難民キャンプなど)、ラグマン州に注ぐ。 2.食料配給は独立したPMS下部組織によって実施。 3.2002年2月までに約3000トン配給を以て終了。以上は既に買付け済み。 ■農業研究・教育部 水質検査、乾燥に強い野菜穀物品種の改良、種籾の配給、現地に適した農業用水路の研究、農村に適する若者の教育と訓練、農村部の学校や地域の教育施設の支援などを一部の地域で行う。 ■その他 |
1. | 事業進捗の詳細はホームページや会報などを以て、ペシャワール会事務局を通して募金者へ知らせる。 |
2. | 経費節減のため、大量の車両管理をPMSで一括管理する。 |
3. | 医療計画については既存の活動と重なる部分が多いので、新たに本計画で必要となる薬品の購入、車両の準備、人員補充、各地域の診療基地の整備など、経常費外の支出を「いのちの基金」から充てる。 |