アフガンいのちの基金No.72
「ジャララバードにやっと戻ります」

PMS病院長 中村哲
2002年01月07日(月)
参考記事『ニューヨークタイムズ紙』を読む>>>
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現在の進行状況をお知らせします。

1.1月8日に井戸掘りグループ(蓮岡ら日本人)はジャララバードに復帰予定。組織の建て直し後、さらに拡大し、予定通り今後3年間で2002ヶ所の飲料水確保(井戸)を目指す。3月まで現在の態勢を続行。

2.食糧配給部はジア医師、シャラフ医師の指揮下に周到な調査と準備の後、食糧配給をすでに開始。1月8日、280トン(コンボイで10台分)がトルハムを通過、ニングラハル州から東部に逃れてきた国内避難民、旱魃で飢餓状態に瀕する家族に配給される。これは、今年の初荷となる。2月末までに小麦粉約3000トン、食用油15万リットルが予定されている。これを以て、緊急食糧配給計画はいったん終了、第二期計画に切り替える。

3.「PMSジャララバード統合事務所」は1月8日から準備を開始、約1-2ヶ月をかける農村復興計画の調査と平行して整備される見通し。藤井氏が第二期計画「緑の大地」の会計担当で現地入りする。今後、統合支部を通して水源確保計画(井戸)、農業計画、灌漑計画などの進行が報告される。ジア医師をリーダーとして目黒らもこの事務所準備に関わる。

4.医療計画は、中村のジャララバード滞在中に、活動地を選定、カブールの現5ヶ所の診療所を東部に移転(4月)、既存のPMS診療所と共にフィールドワークの基地として機能、かなり広い範囲をカバーする。

5.農業指導グループ(日本から)の到着を待って、農村の復興(農業研究・教育、灌漑設備工事による増産、自給自足態勢確立)を具体化する。「緑の大地」計画でこれが最大規模のものとなるが、急がない。4月から本格化させる予定。それまでに統合事務所が下準備をしておく。

6.ペシャワールのPMS病院の機能強化なしに以上は進まないので、同時平行で進める。


以上、メディアでは政治権力の動向が話題になりやすいが、農村社会の基礎構造はほとんど変化がないので、計画に大きな変更はありません。
但し、カブール市内については政府や国連レベルで援助ラッシュが始まったので、私たちの出番は去ったと判断しています。

なお、ジャララバード初め地方都市は百鬼夜行。無秩序がアフガニスタン全土を覆っている。NBCニューズ、CNNら西側の主要メディアさえも呆れて退散、正直に旧タリバン政権の秩序を賞賛する状態。しかし、安定に向けて水面下で、地元民自らの手で確実に何かが進行中。PMSもこの「何か」に沿って協力、平和な農村生活の奪回を目指します。詳細はまた、東部の調査を済ませて、ジャララバードから帰った後、報告いたします。


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※参考記事:1月6日付け、ニューヨーク・タイムズ紙より

タリバンから開放されたアフガンの都市、盗賊の支配に戻る 
〔ジャララバード発 1月5日〕
 

サングラスをかけ髭を生やした仲買人がアフガン兵と門で会った後、州の治安警備詰所に招き入れられた。と、しばらくして男はビデオテープ2本、アルバニアのパスポート、モロッコの身分証明書と9枚のCDが入ったかばんを持って出て来た。

男が言うには、ビデオテープが1,600ドル、パスポートと身分証明書が各400ドル、CDが一枚400ドルだという。近くのトラボラのアルカイーダの洞窟から持って来たもので、地元諜報長官から買ったのだという。売り手の長官は当分身を隠しておかなければならないとも。

「今日これを全部買ってくれれば、今度はもっと価値のあるパスポートを持って来るぞ。」と、ジャララバードの上級司令官ハッジ・ハザラット・アリの元で働く外科医、自称ドクター・カムランは言う。「サウジ・アラビア出身のムジャヒディンのパスポート2つだ。それがあんたのものになるぞ。」

だれも買わないと分かると、彼はもう一度詰所に戻り、空手で出て来た。共謀者の微笑みを浮かべて「明日、買ってくれるかな?」という。

これが今のジャララバード。ちんぴらと盗人の町。

インドとアフガニスタンを結ぶグランドトランクロードが通る町ジャララバードは数世紀に渡って密輸業者の巣窟だった。しかしここ数年はタリバンの厳格なイスラム法と公開処刑の導入で犯罪が減っていた。

そのタリバンが去った今、ジャララバードとその周辺のニングラハル州は、再び武将やゲリラの支配下に落ち、一挙に全てが腐敗した町に転じてしまった。

ゲリラたちは外部者を威嚇・脅迫し、援助物資輸送団から食糧を奪い、米特殊部隊に協力して情報収集していると言いつつ、一方で同じ収集資料を街角で売っている。新たに任命されたジャララバード市長アブドゥル・ガッファール氏は「誰もがどこでもアルカイーダの物品を売ろうとしている。本物もあれば偽物もある。全く恥ずかしい限りだ。」と言う。

米特殊部隊は引き続き東部評議会(シューラ)と協力しているが、ゲリラに金を払って協力を得ているのかどうかは明らかでない。(後略)


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