水路現場写真(2009年5月1日受取)


用水路の経年変化①

ダラエヌール渓谷横断路(J・K区間)
 K・K区間は約3.0 km、アフガニスタンでも屈指の土石流の谷・ダラエヌール渓谷下流、ブディアライ村を通過する。本格的な着工は2006年3月であった。崖地ぞいのF・G区間と並ぶ難関で、覚悟はしていたが相当な労力を強いた。同地は、2000年7月にPMSとしては最初の水源確保事業が始まった処で、同村の住民以下、日本人ワーカーたちや周辺地域の農民が死力を尽くして建設に当たった。マルワリード用水路としては記録的に長いサイフォン(120m;2か所、30m;3か所、計330m)を建設し、開水路2,700mは堅牢な2段の蛇篭で両岸を造成した。

 工事は1年かかり、この間土石流に見舞われること4回、浚渫と再工事に泣かされた。土地収用でも争いが絶えず、新興軍閥やその係累とも構想しながら、翌2007年3月竣工、第一期工事を飾る幕切れとなった。


着工直後のルート全貌をJ貯水池(写真手前の岩盤直下)から望む。
(2006年3月15日)

 スタート地点の第一サイフォン(30m)は、シギ村とブディアライ下流域への分水量を調節する大切な役割がある。現在、この地点から分水されて潤う地域は800ヘクタールを超える。


2006年3月15日
掘削を開始した直後のK区域始点。10㎞地点。この2年後が、下写真。


2009年4月26日
約2年後の同地点。蛇篭工と柳枝工。

水路幅6m、高さ2.5m以上、両岸に柳枝工と蛇篭工を施し、水路の底は薄いソイル・メントの上に砂利の層を敷いている。極めて強靭で、激しい土石流に何度も襲われたが、構造自身はびくともしなかった。


柳枝工と蛇篭工の水路。同地点 正面の奥が第2サイフォン。
2009年4月26日。

アフガニスタンは陽射しが強い。しかしその分だけ、水さえあれば植物の成長が驚くほど速い。同地点では、2年の間にヤナギの挿木が、2~3mに成長した。浚渫時に見ると、ヤナギの根っこが蛇篭の隅々から張り出し、水路底を絨毯のように覆っている。
 度重なる洪水・土石流の急襲に耐え、用水路は毎秒2.5トン、1日30万トンの水を送り続けてきた。水辺には多種多様な植物と小動物が生息し、まるで昔からあったかのように、土地になじんでいる。水の恵みを実感する光景である。

★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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