水路現場写真(2009年7月2日受取)



   これが今月最後の報告になります。
先にガンベリ沙漠で50℃の気温と伝えましたが、1日おくれで突然、猛烈な河川の増水が起こりました。最後の雪解けです。スピンガル山脈、ケシュマンド山脈共に、雪が完全に消えました。

 熱波で作業員が弱り、レンタルのダンプカーが次々と北部に逃げ出し、工事の速さが鈍ってきました。それでも職員や作業員650名の士気は衰えていません。ここは我慢して踏みとどまり、何とかトドメを刺したいと思います。今放棄しては、再開のめどは立たないでしょう。よろしくご協力のほどをお願いします。
 さて、権力者の悪戯はその後も続き、今度は「湿地帯保護条約」を持ち出し、私たちの用水路事業の大事な仕上げである浸透水処理をとやかく言ってきました。私たちが進めている「湿害処理」が自然破壊なのだそうです。灌漑局の局長が直接来て湿地帯処理の中止を嘆願しました。一応彼の顔を立て、一時作業を休止していたところ、今度は郡長の方から再開を要求されました。シギ村の住民から山のような嘆願書が寄せられたのだそうです。

 もともと、私たちが対処していた湿原は、自然のものではなく、シェイワ用水路からの過剰供給によって発生したものです。
 湿地帯といえば、ガンベリ沙漠の岩盤沿い水路の足元が湿原と化し、ひと月と経たないのに草地となりました。植物たちも柔ではありません。忽然と現れた「沙漠の中の湿原」です。この草と水を求めて動物たちが集まります。
 湿原にはカエルが来て、早くもオタマジャクシが泳いでいました。

 洪水は取水堰の頑丈さと、正しい設計が試される機会です。PMSの作った斜め堰を全て点検しましたが、激しい洪水に耐えうることを確認、胸をなでおろしました。

 もうしばらくですが、みなさんお元気で。

6月30日。


ガンベリQ2貯水池の漏水で突然できた草地。水も飲めるし、
食べる草もある。それに涼しい。
モー、牛たちにはたまらない天国なのです。6月30日。


カマの堰を襲うクナール河の洪水。堰はびくともせず、
対岸の異常高水位はない。6月29日。


同カマ取水口水門。冬の水位から1.4m高いが、
殆んど影響がなかった。6月29日。


マルワリード用水路取水口と堰。斜め堰の直前で、
劇的に水位が低下している。川幅の拡大効果。
この水がガンベリまで到着したかと思えば
感慨ひとしお。6月30日。

★Dr.T.Nakamura★
中村 哲
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