水路現場写真(2009年9月7日受取)


9月特別報告


1) ガンベリQ区域(岩盤周りの貯水池)

 最も影響が恐れられたのは、同区貯水池の決壊である。降雨により、堤体の赤土が軟化する。また、土中の水分が飽和状態となり、浸潤線の上昇が起き、浸透水量が増す。堤体外側の下2段はすべて砂利で補強し、軟化した土の崩壊を防ぐと同時に、堤体内に貯留する水分を減らす仕組みになっている。
 天端(堤の最上段)は日本では雨水の堤体内浸入を防ぐため、アスファルト舗装を施すが、マルワリード用水路では砕石で代用している。局所的な短期の集注豪雨では問題がないが、恐れられたのは今回のような断続的で広範な降雨である。
今回の豪雨で、幸い、堤防は安定しており、崩壊は見られなかった。しかし、万全を期して貯水力を十分に取るべきである。今回は職員の機転で水量を落として切り抜けたものの、いつまたこのような豪雨が来るかわからない。秋に延期していた工事(堤防高を1.5mから2.0mに嵩上げ、池側斜面の補強遮水工事)は欠かせない。


2) ガンベリ沙漠横断水路(S区域)

 S1、S2区間(約800~1,300m地点)が脆弱である。今年5月3日の鉄砲水で平和丘ふもとに急流が下って民家を襲い、岩盤側からのものが300~500m地点の水路を砂で埋めた。今回はS区域上流に施した防水堤200m(用水路右岸)の背面を水路沿いに鉄砲水が下り、全ての雨水が平和丘貯水池になだれこんだ。貯水池は建設途中だったが、一挙に砂で埋まり、村落の方面に急流が流れた。蛇籠のねじれ変形を見ると、相当な流速である。
 秋~冬の工期に、貯水池を思い切って大きくとり、鉄砲水の流入する部分を強靭にすべきである。また、鉄砲水の推定流量は膨大、貯水が不可能で、池からS3水門に抜ける量は限界がある。平和丘貯水池に非常門を設けると共に、鉄砲水の下流側を遊水地とし、大規模な鉄砲水は土手を越えさせ、自然土石流路に流すべきである。


3)O 区間

 O貯水池はそこそこに機能したが、排水路左岸の土手が弱い。十分な補強改修が部分的に必要。


4) L区間

 トンネルを掘削した岩盤が崩落したが、このような事態を想定してのことなので、特別な処置をしない。L1サイフォンでは、大量の水を通過させることができず、一部が流路内に侵入した。谷はせまいので、植樹を積極的に行うが、住民との協議が必要。


5) その他

 当然とはいえ、今回の集注豪雨で明らかになったのは、第二期工事区間の安定まで、やはり数年間の観察と改修は欠かせないことである。用水路に開通はあっても完成はない。それでも、努力を続ければ年々安定することも事実で、今後最低3年間、大規模改修も含めて態勢を緩めるべきでないと考えられる。


Q2貯水池下段と浸透水。雨水の流れは増えているが、
浸透水量は増加が見られない



上の拡大図。民家が保護されているのがわかる



P区間。濁流が下ったが、自然岩盤の土手はやはり強靭である



P区間ふもと。S排水路が決壊して畑に流入。
しかし、湿地帯化していた窪地が埋まり、望ましい変化



M1の「土石流とりこみ口」。ほぼ期待通りの流入



切りとおしトンネルの崖崩落



L1区間。小さな谷であるが、20m幅のサイフォンがある。
上流からの流路変更が必要



K区間。ダラエヌールでも相当な降雨だったが、
このような小さな崖崩れだけで済んだ



    砂で埋まった平和ヶ丘貯水池(右)とS3水門(左)。 (9月3日)


    貯水池を越えてあふれ出した鉄砲水の跡。


防水堤(右)背面を迂回して水路が埋まる。ガンベリ沙漠横断水路800m地点。


     浸水した新農場。発芽しているのはトウモロコシ。



ガンベリ沙漠横断水路末端の土砂堆積。洪水が肥沃な土を運んでいるのが
分かる。向こうに見える緑は、ガズ(防砂林)の苗木。


★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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