9月特別報告
1) ガンベリQ区域(岩盤周りの貯水池)
最も影響が恐れられたのは、同区貯水池の決壊である。降雨により、堤体の赤土が軟化する。また、土中の水分が飽和状態となり、浸潤線の上昇が起き、浸透水量が増す。堤体外側の下2段はすべて砂利で補強し、軟化した土の崩壊を防ぐと同時に、堤体内に貯留する水分を減らす仕組みになっている。
天端(堤の最上段)は日本では雨水の堤体内浸入を防ぐため、アスファルト舗装を施すが、マルワリード用水路では砕石で代用している。局所的な短期の集注豪雨では問題がないが、恐れられたのは今回のような断続的で広範な降雨である。
今回の豪雨で、幸い、堤防は安定しており、崩壊は見られなかった。しかし、万全を期して貯水力を十分に取るべきである。今回は職員の機転で水量を落として切り抜けたものの、いつまたこのような豪雨が来るかわからない。秋に延期していた工事(堤防高を1.5mから2.0mに嵩上げ、池側斜面の補強遮水工事)は欠かせない。
2) ガンベリ沙漠横断水路(S区域)
S1、S2区間(約800~1,300m地点)が脆弱である。今年5月3日の鉄砲水で平和丘ふもとに急流が下って民家を襲い、岩盤側からのものが300~500m地点の水路を砂で埋めた。今回はS区域上流に施した防水堤200m(用水路右岸)の背面を水路沿いに鉄砲水が下り、全ての雨水が平和丘貯水池になだれこんだ。貯水池は建設途中だったが、一挙に砂で埋まり、村落の方面に急流が流れた。蛇籠のねじれ変形を見ると、相当な流速である。
秋~冬の工期に、貯水池を思い切って大きくとり、鉄砲水の流入する部分を強靭にすべきである。また、鉄砲水の推定流量は膨大、貯水が不可能で、池からS3水門に抜ける量は限界がある。平和丘貯水池に非常門を設けると共に、鉄砲水の下流側を遊水地とし、大規模な鉄砲水は土手を越えさせ、自然土石流路に流すべきである。
3)O 区間
O貯水池はそこそこに機能したが、排水路左岸の土手が弱い。十分な補強改修が部分的に必要。
4) L区間
トンネルを掘削した岩盤が崩落したが、このような事態を想定してのことなので、特別な処置をしない。L1サイフォンでは、大量の水を通過させることができず、一部が流路内に侵入した。谷はせまいので、植樹を積極的に行うが、住民との協議が必要。
5) その他
当然とはいえ、今回の集注豪雨で明らかになったのは、第二期工事区間の安定まで、やはり数年間の観察と改修は欠かせないことである。用水路に開通はあっても完成はない。それでも、努力を続ければ年々安定することも事実で、今後最低3年間、大規模改修も含めて態勢を緩めるべきでないと考えられる。













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浸透水量は増加が見られない