1 ) 用水路で最大の難工事となったQ岩盤周り1,100mの攻防は終盤にさしかかりました。ガンベリ沙漠の地図を見て下さい。次回詳しく述べますが、ガンベリ沙漠の東側を這うこの作業区は、険しい岩肌が連続し、時たま襲う集中豪雨で並みの水路なら一発で崩壊、流失してしまいます。
このため、同区は数珠のように連続する溜池で作られています。沙漠が無人の荒野であるのは、単に乾いているからではありません。激しい洪水で民家や畑が襲われ、人が住めないのです。「洪水との同居」がここでも宿題でした。
元ワーカーの進藤・松永くんが関わって2年、測量を繰り返し、設計を大幅に変え、やっと完成を前にしました。今年8月の「開通宣言」は試験通水と言った方が正しく、多くの仕上げ作業が残っていました。その中で一番大きいのが、この岩盤周り工事です。浸透水処理が大きな懸案だったのです。
中でも「Q2貯水池」は難攻不落、堤の長さ350m、外周1.4km、自然地面から15mの高さにあります。さしずめ、大濠公園が山の中腹に持ち上げられたと想像してもらえば間違いありません。しかも、池の底は分厚い砂質層で、4万立米を赤土で置き換え、漏水を最小限にしました。この工事に9割方の精力を費やしました。当方の見通しも甘く、財政を食いつぶし、一時は途方に暮れていましたが、みなさんの努力の賜物です。稲刈り時期を待って4度目の改修を断行、何とか、ここまで漕ぎつけました。
2 ) お陰で、2週間後には途切れない流れが沙漠を横断するのが確実になりました。ちょうど麦の播種時期です。肝腎の農地開拓は第二農場を整備完了、第一農場にとりかかり、この冬約150ヘクタールが作付けできます。養蜂・養魚計画も日程に上りました。沙漠で養魚計画とは思っていませんでした。
3 ) 案外手をやいたのは、湿害の処理です。これも3月から工事を始め、主幹排水路を整備、現在村の隅々まで排水路をめぐらせています。これは柳川市の水路網がモデルになっています。湿害は、実は数十年前からのもので、PMSの仕事で回復した土地が何と450ヘクタール以上、約350家族(4000名)が戻っています。
4 ) 植林は、岩盤周りを除けば、順調に進んでいます。ダークホースは何といっても「ガズ」と「ビエラ」の木でした。いずれも土着種で、旱魃にもびくともしなかったのです。現在、植樹に最適の季節です。さらに計10万本が植えられます。
5 ) マドラサは1ヶ月以内に完成、2月に譲渡式、正式に地元に引き渡されます。
6 ) カマ取水堰は岩盤周りの工事が終わり次第、最終的な改修にとりかかり、これも今冬に仕上げます。ひと夏を経て大きな決壊はなく、今でも取水量は減っていません。
いずれもが小さくない仕事で、しかも同時進行で多岐にわたりますから、思ったより忙しいです。週間報告で逐次詳細を述べます。









★Dr.T.Nakamura★ 中村 哲
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水が溜っているのは過って上流のP池の土嚢が崩れて流れ込んだもの。
10日間経つが水が減らない。漏水量が激減するのは確実だ。(12月8日)