水路現場写真(2009年12月11日受取)


事務局のみなさん、無事に着きました。
 さっそく、その後の進行をお知らせします。

 12月7日に日本を発ち、8日朝ジャララバードに着き、その日から現場に出ました。やはり小生は、どうしょうもなく現場人間・働き虫で、口よりも手が先に出る。もうこの歳でバカは死ななきゃ治らないのです。作業の場にいる限り安心します。さて、さっそく仕事の話です。


1 ) 用水路で最大の難工事となったQ岩盤周り1,100mの攻防は終盤にさしかかりました。ガンベリ沙漠の地図を見て下さい。次回詳しく述べますが、ガンベリ沙漠の東側を這うこの作業区は、険しい岩肌が連続し、時たま襲う集中豪雨で並みの水路なら一発で崩壊、流失してしまいます。
 このため、同区は数珠のように連続する溜池で作られています。沙漠が無人の荒野であるのは、単に乾いているからではありません。激しい洪水で民家や畑が襲われ、人が住めないのです。「洪水との同居」がここでも宿題でした。
 元ワーカーの進藤・松永くんが関わって2年、測量を繰り返し、設計を大幅に変え、やっと完成を前にしました。今年8月の「開通宣言」は試験通水と言った方が正しく、多くの仕上げ作業が残っていました。その中で一番大きいのが、この岩盤周り工事です。浸透水処理が大きな懸案だったのです。
 中でも「Q2貯水池」は難攻不落、堤の長さ350m、外周1.4km、自然地面から15mの高さにあります。さしずめ、大濠公園が山の中腹に持ち上げられたと想像してもらえば間違いありません。しかも、池の底は分厚い砂質層で、4万立米を赤土で置き換え、漏水を最小限にしました。この工事に9割方の精力を費やしました。当方の見通しも甘く、財政を食いつぶし、一時は途方に暮れていましたが、みなさんの努力の賜物です。稲刈り時期を待って4度目の改修を断行、何とか、ここまで漕ぎつけました。

2 ) お陰で、2週間後には途切れない流れが沙漠を横断するのが確実になりました。ちょうど麦の播種時期です。肝腎の農地開拓は第二農場を整備完了、第一農場にとりかかり、この冬約150ヘクタールが作付けできます。養蜂・養魚計画も日程に上りました。沙漠で養魚計画とは思っていませんでした。

3 ) 案外手をやいたのは、湿害の処理です。これも3月から工事を始め、主幹排水路を整備、現在村の隅々まで排水路をめぐらせています。これは柳川市の水路網がモデルになっています。湿害は、実は数十年前からのもので、PMSの仕事で回復した土地が何と450ヘクタール以上、約350家族(4000名)が戻っています。

4 ) 植林は、岩盤周りを除けば、順調に進んでいます。ダークホースは何といっても「ガズ」と「ビエラ」の木でした。いずれも土着種で、旱魃にもびくともしなかったのです。現在、植樹に最適の季節です。さらに計10万本が植えられます。

5 ) マドラサは1ヶ月以内に完成、2月に譲渡式、正式に地元に引き渡されます。

6 ) カマ取水堰は岩盤周りの工事が終わり次第、最終的な改修にとりかかり、これも今冬に仕上げます。ひと夏を経て大きな決壊はなく、今でも取水量は減っていません。
いずれもが小さくない仕事で、しかも同時進行で多岐にわたりますから、思ったより忙しいです。週間報告で逐次詳細を述べます。



Q2大池の工事。10月から4度目の改修工事。今回は「最終工事」と明言、1.4km全周に緩傾斜でブランケットを敷設、全体を平皿状にし、底部の砂質層を2~3m粘性シルトで埋めた。中心水深6.5m、さらに砂利で表面を覆う(リップラップ工)。
水が溜っているのは過って上流のP池の土嚢が崩れて流れ込んだもの。
10日間経つが水が減らない。漏水量が激減するのは確実だ。(12月8日)


池の現場に関わった職員たち。運転手、元校長、農民、元国境職員らで、
プロではないが、粘り強い。
左から モクタール / アジズ・ラフマン / ハジ・ムニール / ナイーム / パチャ・グル


送水を待つP貯水池。右手が切り通し水路。これも造成に1年半をかけた。
12月9日


Q2貯水池堤防。分厚い粘土層(ブランケット工)を更に砂利で覆う。満水になると粘土層は軟らかくなり、溶け出して滑り落ちるので、できるだけ緩斜面にして締め固めを十分にし表面を小石・砂で覆う。リップラップ工という。12月9日



完成直前の参道とモスク正面。進む内装。12月8日


ガンベリ沙漠の防砂林。熱風、砂嵐、鉄砲水に耐え、すっかり根付いた。
驚くべき生命力。12月9日


植樹責任者のアジュマル君。初めは怠け者で有名だったが、今や厳しい監督者。見違えるように責任感が強くなった。
ニキビもとれて、すっかり大人だ。人は変わる。12月9日、平和丘。


マルワリード用水路末端の自然土石流路に植えられたガズ。約2㎞に及ぶ。
確実に成長している。12月9日


★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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