事務局のみなさん、(1月14日報告の続き)
アフガニスタンも寒波に見舞われ、夜は零下に気温が下がります。新年は不吉な兆候と共に明けました。外国軍増派ではありません。降雪・降雨のない冬です。普段なら山々が真っ白に覆われ、夏の恵みを期待することができます。冬の厳しさの分だけ、春の雪解け水が里を潤します。しかし、今年はこの10年でも、最も異常です。
冬の河の水位は、低いとはいえど、12月下旬から一定になり、春まで続きます。アフガンは今が雨季で、河の上流が氷結しても、小雨が断続的に降り、河川の水位が保たれます。しかし、山々は申し訳程度に白い稜線が見えるだけで、しかも極端な少雨です。クナール河、カブール河は私たちが観察を始めて10年間のうち、最も低水位を記録しました。既にスピンガル方面は農地が壊滅状態でしたが、ダラエヌールも、アムラ村・ブディアライ村・ソリジ村は沙漠化が目前です。地下水位も下降を続け、多くの井戸が枯れました。 多くの地域が絶望的な状態となっています。おそらく凍死や餓死者が絶えないことでしょう。
政情もさることながら、この水欠乏が容易に人々を追い詰め、今や破局が目前に迫ったと感じています。一種の「終末感情」が人々の間に忍び込んでいます。このような事情での水の仕事です。最期の吶喊にも似た心境にならざるを得ません。せめてニングラハル州北部だけでも、死守いたします。カマ、シェイワ、ベスードの3郡は守ります。
最も取水が困難で、かつ農地が最大のカマ取水堰は、工事が大詰めを迎えています。あと1カ月で仕上げたいと思います。
みなさんの御協力、ただ感謝です。



★Dr.T.Nakamura★ 中村 哲
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水門の改修。錆びたスライド門を取り外し、堰板方式に変えている所。1月13日