受信日:2010年04月30日



事務局のみなさん、

最近の写真が送られてきましたので、お伝えいたします。小生の留守中も秩序整然と仕事が進められ、嬉しい限りです。現在の主な仕事は、以下の通り。

1)ガンベリ沙漠の開拓
  PMS農場予定地(200ヘクタール)の排水路造成
  灌漑網の造成
  農地の造成(丘地を均して灌水、水を張って粘性土を浮き上がらせる)

2)沙漠横断水路に植樹。第二期工事区間全体の植樹の水やり(約20万本)。

3)湿地帯処理
  排水路延長・拡大
  大中水路の架橋

4)現在の開拓地(約24ヘクタール)で試験栽培
 現在の作付けは、①水稲、②トウモロコシ、③スイカ、④その他豆類、野菜など
 果樹園は場所を選定。秋までに種類を決定して植樹。(年内約10ヘクタール予定)

5)用水路の補強、分水路造成、蛇籠やRCCパイプの生産

6)カマ用水路灌漑地(沙漠化地帯)の灌水

7)マドラサ寮の建設


以上のように、用水路建設と農業とは分かちがたく、事実上、灌漑=農業事業として一体化したと思ってよいと思います。開墾地が広がるにつれ、当然農作業の比重が増してきます。
なお、非常な財政負担になっていたレンタル重機は、現在以下のように削減されました。

種類 3月31日以前 4月1日以降
ダンプカー 25~30台 4台
掘削機 4台 1台
ローダー 3台 1台
掘岩重機 1台
水タンカー 3台 2台

 現場では、手作業を専らとし、採石も作業員が行います。人数は雇用維持と自衛を考え、550~600名を保っています。護衛警官も実は銃を持った近隣農民で、「作業員」そのものと変わりありません。いざという場合は、軍閥・外国軍・盗賊に対する強力な圧力となります。日本で聞けば奇異に思われましょうが、これが兵農未分化のアフガン農村の普通の姿です。この無政府状態の中で、アフガン人職員・作業員の安全確保には細心の注意を払うべきだと考えております。



花をつけたスイカ。播種後3週間。収穫は5月末~6月中旬。約3ヘクタールに、日本種、アフガン種、韓国種、中国種、パキスタン種を植え、収穫量と味を調査する。
予想収穫量2~3万個、職員・作業員700名に分配し、アンケート調査する。
今年の夏は水の代わりに毎日スイカを食べさせられることになる。



トウモロコシ作付け。第一農場で約4~5ヘクタール。播種後12日。収穫は9月。



水稲。苗代の田圃。今年は欲張らず、約4ヘクタールに田植えして収穫量を調べる。アフガン人に好まれる長粒米を植える。種モミは全てシギ・シェイワ村から購入。ダラエヌールとは気候が異なるので、先ずは無難な近隣農村のもので様子を見る。今後、徐々に水稲栽培を増加、最終的に150ヘクタールの水田を
数年後に確保して自給をめざす。現地農民に継続できない栽培法をとらない。



第一農場の排水路の建設。第一農場は広大。長辺が1.3㎞ある。傾斜が7mで、相当な急流となり、田の畔が壊れると土が流失する。周到な灌漑網と排水路は
欠かせない。排水路は激しい流速を想定し、頑丈な造作を行う。
現在約600mが仕上がっている。左第一農場。



昨年秋、洪水で苦杯をなめた区域。蛇籠をさらに高くし、土砂流入を防ぎ、水をとりこむ設計。右に平和丘。右手が洪水路上流側に相当する。
現在、12列で防水林を造成中。



上記蛇籠壁の背面。2週間で300mを並べる驚異的な作業記録。



採石は重機を頼らず、手作業で岩を砕き、トラクターに積み込む。主に蛇籠に
使用する。巨石でなければ、こちらの方が能率が良いのだ。



活着した桑の並木。州の灌漑局が3,000本を寄贈し、Q2大池の土手に植樹。池周りは植樹を完了。植樹班の主力は、ガンベリ沙漠横断水路にまもなくとりかかる。
ちなみに、Q2貯水池の円周は1,200m、Q3が820m、Q4が1,100m、しかも3~6段の堤防外壁も植えたから、用水路中、ずばぬけて植樹数が多い地区となった。



マドラサ寮の床面造成。地下1mに地中梁があるが見えない。
これも相当な作業の速さ。労働力の質が上がり、意欲も旺盛なのだ。



増水期のカマ第一取水口。改修で越流の長さ260mに伸ばし、
対岸への影響を配慮。



カマ第二取水堰。この方は今年の秋、第三次改修を予定。



カマ郡は、2つの取水口建設で畑地が急速に広がっている。同地域は7つの分水路があり、上流の2本は夏も水が来ず、冬は全ての地域が渇水で麦の収穫が困難に陥っていた。写真は最も高い位置にある分水路。名を「ウチュ・ラクテイ水路
(涸れ川分水路)」というが、今や途切れない流れとなった。これにより、
カマ郡7,000ヘクタール全域が隈なく潤され、更に耕地を広げている。


★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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