事務局のみなさん、
湿地帯の変化が圧巻ですが、次回写真を送ります。
ガンベリ沙漠は酷暑です。乾いた熱風は、まるでドライヤーの風を浴びているようですが、新農場では粛々と開墾が進められています。「ガンベリ沙漠に水田出現」とは、東部アフガンで信ぜられぬ奇跡らしく、ときどき見物人が来ます。
1.水稲栽培増加とその対策
今年は日本の「稲作普及計画」もあずかって、水路沿いの至る所に水稲が栽培されています。しかし、水稲は小麦の約5倍の水量が必要です。このため、マルワリード用水路は限界まで送水中です。現在、送水量;毎秒5.2トン(1日48万トン)まで上げて様子を見ています。処理した湿地帯は実に約500ヘクタール以上、この新開地も水源をマルワリード用水路に頼るため、夏季の送水量は過去最大になりました。でも、水稲栽培はやはりコントロールが必要です。このために発生するのが1)下流側村落の水不足、2)湿害の発生、3)作付農地の疲弊です。1)と2)については、湿地帯は完全に処理され、少なくともわが用水路流域ではあり得ません。3)については、現地ではコメを毎年植えず、次の年はトウモロコシを植えて土地を休ませます。今年はラッシュになりましたが、農民たちは徐々にバランスを作ってゆくと思います。
2.ジャララバード事務所(PMS本部)
杉山、村井の両君が来て、長い懸案であった会計監査システム導入に尽力しています。案ずるよりは産むがやすし、アフガン政府側の要求が思ったより簡略化されたもので、何とか出来そうだと村井くんが喜んでいました。事務所の秩序は、ジア先生の尽力により驚くほど改善、綱紀粛正が成りました。現場はさらに締り、灌漑については最強の実戦部隊です。
3.カマ用水路
最大の懸案だったカマ取水堰、ベスード取水堰の方も、外国軍の買収工作と戦いながら、本工事ができる見通しが出てきました。3つの堰が完成しますと、計約9千ヘクタールの農地が確保され、計約40万人が安定した生活を送ることができます。堰はPMSの手でとりあえず送水できているものの、これまでの経緯を見ると仮工事に近く、毎年改修してきたのが実態で、シェイワ堰、マルワリード堰と同様、半永久的に使える強固なものを建設いたします。援助の良否は決して量ではありませんが、やはりこれほどの人々が安心して暮らせるのは大きな事だと思います。水を制する者は国を制する。今やPMSに非協力的な勢力は、アフガン農民の間にはありません。
カマは調査すればするほど、余りの放置された状態に絶句。粗雑なやっつけ仕事が多く、真剣なら、外国の軍や援助屋に任せられないと思いました。主な調査は完了、立案と交渉の段階に入りました。今秋に計画が始動いたします。PMSの戦線がどこまで拡大するのか不安になる方も居られましょうが、日本の良心にかけて、ここはひと頑張り。軍事活動以上に活発にやります。















★Dr.T.Nakamura★ 中村 哲
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種籾を生産、来年度は何とか30町歩までもってゆく。主にアフガン種。
日本種は九州の旭竜で、進藤ワーカが実験済み。収量が多いのが人気で、ダラエヌールでは広がりつつあった。脱穀で苦労するのが難点で、生産量が増せば、
太陽光発電で脱穀機を導入予定。ダラエヌール旧試験農場付近は水不足で
農地が壊滅に近いそうだ。ラマザーン(断食のこと)までに
4戸の住居を完成、旧農業職員らが24時間態勢で見張る。
ガンベリ沙漠。2010年7月8日。