受信日:2010年08月14日


「今後の対策と護岸工事」

 ナンガラハル州の犠牲者は数十名、大半がスピンガル山麓に発生した土石流、カブール河沿い低地の村落への浸水被害である。PMSの手がけた取水口付近では死者は少なかった。しかし、80年ぶりと云われる洪水は、計画された護岸工事や取水口改修の立案の上で、十分参考にでき、計画の大幅な見直しを可能にした。

 今後、気象の変動がますます激しくなることを予想し、完璧でなくとも、今回の出水に耐える程度の改修をすべきである。取水堰の安定なくして灌漑はあり得ない。河川氾濫はまた、農村社会の不安定要因ともなり得る。用水路内と異なり相当の物量投入を余儀なくされる大工事となっても、緊急に施工されるべきである。
 現地では日本のように豊富な種類の資機材がなく、資材と工法が自ずと限られるが、基礎的な原則を守れば丈夫なものはできる。以下を計画している(詳細別表)。

1)低水位の根固め護岸、基礎工を惜しまない。
2)川幅を狭めず、遊水地を多くとる。狭い場合は水制を両岸に設置、中心流を
  深くする。
3)脆弱な地盤での高水位護岸は石出し水制を活用し、洗掘部を河の中心へ
  押しやる。
4)巨石による捨石工が速やかで有効だが、流速に応じて幅を厚く、緩傾斜とする。
5)高水位の余裕高は、今回の洪水レベルの0.6m~1.0m以上とする。
6)取水部の大幅な見直しと改修。
  ●取水門間口の拡大で低水位に備える。
  ●以上の水門改修を前提に、堰高より堰幅を重視し、可能な限り越流高を
   低くする。

 工区と内容は以下の通り。
  マルワリード用水路取水部;流失した中洲の処置、水門間口の拡張、
   堰の改修
  カマ取水部・主要水路の保護・護岸
  カマ取水門IIの新設と堰の改修
  カマ主水路II(1,020m) のライニング、内部堤防設置、調節水門部の新設
  カマ取水門Iと主水路(380m)のかさ上げ工事(現在より1.2m高)
  カマ対岸(ベスード)村落保護のための護岸(約2,200m)

工期は2010年10月~2011年3月に主要工事を完了。(堤防工事は2011年9月まで)
ベスード取水堰I は冬の低水位期のみ姑息対策にとどめ、2011年10月に開始。


★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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