受信日:2011年6月27日-(2)


事務局のみなさん、

最も心配したベスード護岸です。
ベスード郡中心部は守られました。
次回は、ガンベリ沙漠です。


カマ取水口対岸、ベスード郡側の護岸の夏の様子です。
5月下旬から水位がぐんぐん上がり始め、現在がピークです。しかし、去年は7月下旬に大洪水となったので、油断はできません。工事に携わった者としては、夏季の増水期の状態で結果の判断を下されます。緊張しながら河とのにらめっこが続きます。

工事始点から1700mまでの連続堤防の方は、まだ予測ができますが、問題はそれ以降の不連続堤防の効果です。しばらく観察を続け、必要なら改修せねばなりません。最大の関心事はベスード郡へ下る進入路の行方でしたが、何とか閉塞が成功し、胸をなでおろしています。


平成23年6月25日


(資料-1)

ベスード護岸地図



(資料-2)

対岸護岸1700m地点までの連続堤防




連続堤防。二段の捨石工。両段ともに巨礫で厚く掩蔽してあり、下段は緩やかな斜面で根固めと連続している。天端から水面までの高さは約4.5m。下段にはヤナギ、上段法尻にはユーカリが植えられている。根固めは見えないが、巨礫が緩やかに連続して水中にある。
2011年6月18日



同護岸を対岸から見る。下段が昨年の大洪水レベルより0.5m高い位置に設計している。天端工事の石材輸送は続けられている。
2011年6月18日



1700m地点から見る夏のかすみ堤。主流回復工事が大いに効果を発揮、中心河道はすばらしい流速で下流へ直進する。かすみ堤とは、特別なものではなく、巨礫の列を不連続に並べただけで、水を完全に封じず、こぼれ水を分流に送るもの。昨夏発生したベスード側の主流化は完全に防がれた。先に述べた四川省の都江堰でも、高い主流の浚渫を欠かさずに2000年以上続けたというから驚き。
2011年6月18日




2000m地点。ベスード側分流の水量が著しく減り、水制間に土砂が堆積しているのが分かる。
2011年6月18日




干上がった洪水進入路。ベスード郡全体が盆地状の地形で、クナール河はその西側の高い位置を流れる。ここが突破されると、盆地に水が溢れるという恐ろしい場所。実はこの場所の増水期の状態が、最大の心配の種だった。かすみ堤も水制も河道中心掘削も、全てこのために工夫されたのだ。悪夢は去ったが、人々は知らぬが仏。土地の値段が上がったと、無邪気に喜ぶ。ただし、転売で儲けるのではなく、農地として手放さないという意思表示。
2011年6月18日



★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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