受信日:2011年6月27日-(1)


事務局のみなさん、

お疲れさまです。
6月17日に到着してから、長かった留守の後片づけに追われています。何から伝えていいのか分かりませんが、いろいろとありました。中でも面食らうのは天変地異、川の方ばかり気にしていたら、今度は猛烈な砂嵐です。5月初旬から毎日ガンベリ沙漠で吹き荒れ、5週間続きました。このため、開墾地が一部を除いて砂に埋まり、ひどいところでは砂丘ができました。ヤワな所ではないようです。

 職員・作業員一同、埋まった用水路と分水路を4回浚渫、しかし小生の到着寸前に再び埋まり、開墾地は荒野に戻っています。今年は水稲栽培を中止させ、砂防林と排水路の造成を急がせることにしました。現在ガンベリ沙漠では5回目の用水路浚渫が行われ、主水路末端約2㎞、分水路計6㎞が6月23日までに開通しました。

河川周りの工事は、予定通り進められており、昨年度からひきつづき、

1)ベスード護岸;天端の造成中。増水期の流れを観察し、必要なら1~2㎞の延長を視野に入れる。
2)ベスード(Ⅰ)取水口;初秋までに交通路を確保し、設計の最終見直しを図って準備。石材輸送を開始して貯石場に置く。9月下旬から主幹水路造成開始。10月の稲刈りに合わせて水を落とし、一挙にコンクリート構造物(取水門・調節門)の基礎工事開始-----という手だで進めてています。

 カマ取水口は夏の濁流にびくともせず、洪水を防ぎながら必要量を送り続けています。夏の送水量一日100万トン、堂々たるものです。カマ7000ヘクタールはことごとく水田と化しました。これまでの作業地を併せると、ちょうど筑後平野の穀倉地帯を回復したことになります。予想通り、多くの人が「見学」に来ています。これは吾々の技術的な金字塔ですが、河川沿いのあちこちの取水口で真似られると良いと思っています。おそらくアフガン行政筋、請負会社らは内心快く思っているとは限らず、PMSが公に評価を受けることはないでしょう。私たちの仕事で懐が潤わないからです。

しかし、地方行政の中には強力な支持者も少なからず、彼らとの良心的な結びつきで妨害をはねかえして行こうと考えています。

 到着して一週間、秋の工事に向けて、ガンベリ開拓に向けて、新たな火ぶたが切られました。摂氏50℃の熱風を圧して努力が続けられます。
 皆さんもどうぞお元気で。


平成23年6月25日


夏のカマ第一取水堰、三年目の夏。中洲上流側約300mが堰と一体化し、越流幅は計550m以上、半円形で第二堰へ注ぐ。

現在クナール河水量はピークで、推定1800~2500立方メーター/秒が下る(1立方メーター≒1トン)。真冬の低水位との差は、第一取水口で70~80㎝程度。

昨年より夏冬の水位が少ないのは、川幅全体の拡張、第一堰の延長、河道分割で堰きあがりを抑えているからだ。この区間で、両岸堤防の高さは水面から4~5m、昨年並みの大洪水なら堰による溢水は考えにくい。
(2011年6月25日)



カマ第二取水門。取水量は実測値で12立方メーター/秒、一日105万トンに相当する。これは用水路全流域の水稲栽培に十分な量。
(2011年6月18日)




渦を巻いて流れる第二取水堰の濁流。堰は左岸へ湾曲した河岸の末端にあり、遠心力で取水口側が激しく堰きあがる。流速3~3.5mの急流、転落すれば先ず助からない。そのため取水口側に、巨礫をこれでもか、これでもかと敷いてある。堰の長さ120m、幅は約25m。
(2011年6月18日)




水量調節の講習会。6月16日に集中豪雨が襲った夜、第一取水口で門番が寝ていて、過剰送水になった。カマ郡自治会は水門番を更迭、交代制で3名常駐を決めた。堰板方式の効用は皆の認めるところとなり、こうして少しずつ新方式になじんでゆく。講習は煩わしいが、物見高い連中が多いので、結構にぎやかで楽しい。
(2011年6月18日)




沈砂池(調節池)排水門の全開試験。送水門より池側60㎝低く、急傾斜で排水する。毎秒十数トンの排水は圧巻。「自動浚渫」のしくみが、やっと理解されてきた。
(2011年6月18日)



★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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