事務局のみなさん、
お疲れさまです。
現地は8月1日にラマザン(断食月)に入りました。
ベスード郡第一取水口工事は、8月3日に準備工事を一段落させ、9月中旬の渇水期入りまで休戦です。資機材の搬入が自由自在となり、現在、巨礫の輸送を続けています。
現在、焦点の一つとなっているガンベリ沙漠開拓は、6月に報告したように、
1 ) 防風防砂林の拡大、2 ) 給水・排水路の整備、以上と重なりますが、3 ) 遊水地を含む主幹用水路(S区域=沙漠横断路後半1.5㎞、T区域=砂漠縦断路1.3㎞)の保護が、大きな課題となっています。今回の砂嵐被害は、砂の堆積そのものより、主幹水路と主要分水路の閉塞で水が通らなかったことが主な作物被害の原因です。
それでも、長い目で見れば、確実に成果が上がっています。洪水・湿害対策を兼ねた主幹排水路(三か所、計十数㎞)の建設を終えました。懸案の防砂林灌水は、二基目の給水塔建設にとりかかり、ちょうど植樹が活発になる二ヶ月後には完成します。
こうした成果を背景に、シギ村落群の人口増加と農地増加のため、現在大変動が同地に起きています。シギ村はシェイワ郡の一部ですが、パシュトゥ族で占められ、シェイワに多いパシャイ民族と一線を画しています。人口は推定4~5万人、約1500~2000ヘクタールの農地があります。しかし、これまで水不足で、灌水の順番を待っているうちに作付け時期を逃す農家が多かったのです。ガンベリ沙漠開拓に伴うPMSのマルワリード用水路末端・T区域の整備によって、既存給水路の他に新たに二か所で給水ルートが開けました。水争いが解消するだけでなく、二毛作が可能となります。二年前から農家間で話し合いが粘り強く進み、半年前から住民たちは一斉に家屋の移動を始めました。一般にアフガン農村では、水が来ると宅地より農地が優先されます。水利用できる土地は農地にし、宅地は高いところに置かれます。
そこで、ガンベリ沙漠南西部にある無人の丘陵地帯は、住宅群が忽然と姿を現しました。農家の大移動です。7月30日、31日に長老会メンバーが集い、PMSと話合いが持たれました。問題は、マルワリード用水路T区域からの送水路です。現在、水路末端は余水を自然洪水路に落とし、クナール河に戻すルートになっています。ところが、自然地形では偶に襲う激しい洪水で、取水路を引くと同時に災害も受けてしまいます。洪水路の横断水路が引けないかという相談でした。
技術的には百数十mのサイフォンで可能ですが、折から集中豪雨の季節、「時期を選んで適切な方法で行う。心配なきよう」と、約しました。元来、このような目的で用水路建設事業が進められてきたのですから、断る理由はありません。10月に着工致します。「他のNGOやアフガン政府に任せればよいではないか」と考えられましょうが、もはやアフガン東部にはこのような工事を行う団体がありません。仮に善意の支援が寄せられても、やっつけ工事で終り、業者と現地役人の山分けで大半のカネが消えてしまう。住民たちは、その事情を熟知しているのです。
今秋は、自然河川を直接相手にする工事は昨年より少なくなりましたが、灌漑事業は依然として手が抜けません。財政の苦しい折、大変恐縮ですが、文字通り支援の手が届かぬ今の現地事情を考慮し、よろしく御協力願います。米軍撤退に伴う事件ばかりが伝えられますが、私たちにとり、やはり最大の危急事は、餓えた人を減らすことです。日本で詳しい事情を説明いたします。
平成23年8月2日
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2011年7月31日