受信日:2011年10月6日


事務局のみなさん、

お疲れさまです。
会報発送を前にご多忙だと思います。
現地は、いつものことながら、いろいろと事が起きてまいります。
秋の集中豪雨など、アフガン人でさえ想定外。
疲れを覚えないではありませんが、ここは真剣の世界。よろしくご協力願います。


ケシュマンド山系に記録的集中豪雨

ジャリババ渓谷からの洪水・土石流が用水路を破壊
緊急復旧工事を開始。ベスード取水口は安全位置を確認。

作業経過の写真、第二報を送ろうとした矢先、ゲリラ集中豪雨がケシュマンド山麓一帯を襲いました。最後の夏季モンスーンですが、この時期は異例です。10月に入っても日中の気温35℃以上、蒸し暑い日が続いていました。

降雨は高地を中心に10月4日夜半に始まり、洪水路の氾濫が4日夜から翌5日早朝にかけて始まりました。ダラエヌール、ラグマン共に激しく、マルワリード用水路沿いも、至る所で危険にさらされました。ジャリババ渓谷のものが最大級、取水口から500m地点が派手に破壊され、用水路は途絶えています。

 同地点の洪水通過路は、拡張が痛感されていて、2006年、2008年、2010年と、大量の土砂が流れ込み、沈砂池が埋まっていたのです。昨年、本格改修を予定、洪水通過路の幅15mを40m以上にする予定でありました。復旧工事はすでに始まっていますが、シェイワ堰河道回復などを一時中断、10月8日から機械力を集中し、最後の改修のつもりでやります。この時期を逃すと、麦まき時期となり、工事ができないでしょう。

 工事中のベスード第一取水口も一部冠水しました。しかし、岩盤背後の防御位置と構造物の高さが適切であることが分かり、返って正しい設計が確認されました。

工事に相当な影響を避けられませんが、いつもの話。何とかやります。人も自然もずいぶんと穏やかではなく、うまい話はありません。ベスードからジャリババまで45㎞、作業地の分散を避けたつもりでしたが、全て「想定外」。自然相手に短気は損気。かなり忍耐力が要ります。だが相当な物量も要るので、よろしくご協力願います。

 詳しくは、また追って連絡いたします。
 (ベスード護岸では驚くべき結果が観察されました。自然観察は面白いですけれども、用事が増える泥沼の話、疲れるので次回まとめてお知らせします。)

平成23年10月6日


マルワリード堰から約500m地点。過去4~5回にわたり冠水したが、用水路が破壊されたのは初めて。クワの木はなぎ倒されたのに、ヤナギは折れていない。洪水は路面から約3~4mの高さで襲いかかり、洪水通過路下流側の弱い部分を約40mにわたって破壊。
2011年10月5日午前11:00



崩壊した対岸。鉄砲水は、クナール河を横切り、何と対岸カシコートに吹きつける。驚くべき水の勢い。
2011年10月5日午前11:00



流入した泥土は、1600m先にあるD沈砂池に貯まる。PMS方式の浚渫用スライド門があるが、もう限界にきている。沈殿した泥土のほとんどは、ジャリババ土石流路から用水路内に入ったものだ。ここも、今冬に浚渫路の改修が予定されていた。
2011年10月5日



工事中のベスード第一取水門先を襲う洪水。基礎工事の最中だった。
2011年10月5日午前9:30頃(村井撮影)



同現場、午前8:00頃の状態。この時までのんびりと取水門の基礎工事を行っていた。洪水は突然やってきて、30分ほど続いた。岩盤に刻印されたレベルは正しく、水門工事現場を除くと、冠水を免れた。もし現場全体のかさ上げをしてなかったら、工期がかなり遅れていたはず。


★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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